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八章:決着 アダム視点
61.客人
母上と父上から連名で、新年の夜会に参加しなさいと手紙が届いた。
また王都に行くのか。正直少し面倒ではあるが、王都には僕のことを『モコ神』と呼ぶ冒険者たちがいる。
変なあだ名をつけられたが、彼らと共に過ごす時間は心地よかった。僕のことを恐れず普通に接してくれるのが新鮮だった。今では兵もロイターの住民も距離は近くなったけど、あの時は本当に衝撃的で、嬉しかったんだ。
「ロディ、今年も新年の夜会に参加することになった」
「あの気味が悪いところに行くのか?」
確かにロディにとって夜会はいい思い出がある場所ではない。それは僕もなんだけど……
「一応、貴族の義務なんだ。新年の夜会に貴族はできる限り参加する」
「そうか。貴族というのは大変だな」
「それと、父上がロディに会いたいそうだ」
「分かった」
ロディは少し表情を固くした。不安なのかもしれない。母上は僕に似ていたから受け入れやすかったのかもしれないが、父上はどうだろう。僕や母上と違って筋肉質で体格がいいから見た目は少し怖いかもしれない。
僕たちは準備を整え、雪が降る前に馬車で移動を開始した。
今年はトミーは来ない。クルートを貴族が集まる時期に、王都に連れて行くのはやめた方がいいと思ったからだ。だからトミーとクルートは領地に残ってもらうことにした。
クルートはまだ今後のことは迷っているようだが、しばらくはトミーと一緒に兵として働いてみるそうだ。
ランスも連れてきていない。嫁と娘がいるのだから何ヶ月も家族を引き離すのは可哀想だ。
ロディの護衛はカミーユ、アストロ、フライツで回してもらう。
「旦那様、ローデリック様、おかえりなさいませ」
王都ではハドリットとメイドたちが迎えてくれた。
今年は去年より早く出立したから、途中で雪が降って足止めされることなく王都には順調に辿り着いた。
「大旦那様と大奥様、客人もお見えですよ」
両親は分かるが、客人? 母上が言っていた『意外な協力者』という人物だろうか?
「分かった。旅の装いだから、着替えてから向かう」
「畏まりました。皆さんにはそうお伝えします」
一体誰だろう。僕の予想では神様、陛下の影とか言っていた名前は……ネーベル。彼ではないかと思うんだ。まさか陛下が訪れているということはないだろうし、しかし陛下の影が堂々とロイター家の屋敷を訪れるだろうか?
「ロディ、父上と母上もいるが、客人もいるそうだ。誰だと思う?」
「俺には分からない。貴族で知っているのは陛下とアダムの母と『キラキラした石がついた服を着た男』だけだ」
「そうだよな」
分からないまま着替えて応接室へ向かう。ロディとはしっかりと手を繋いでいる。
部屋をノックし、扉を開けて僕は目を見開いて、咄嗟に結界を展開した。
「ロディ、下がれ」
「え?」
ロディは部屋の中を見ておらず、状況が分からないから戸惑っている。
なぜ僕がこんな対応をしたのかというと、そこには両親と『石男』がいたからだ。
「アダム、どうした?」
「父上、どういうつもりですか?」
ロディの質問に返答する余裕はなかった。僕の両親はまさかロディを『石男』の元に返すつもりか?
身なりを整え、マナーを身につけたロディが惜しくなって取り返しに来たんだろうか?
「アダムヘルム、落ち着きなさい。ローデリックくんも一緒にとにかく部屋に入って座れ」
「ロディに危害を加えるようなら容赦はしませんよ」
僕が答えると、『石男』はすまなそうに眉がへにょっとなり、なんだか弱々しいおじさんに見えた。
ロディは『石男』を前に平気でいられるんだろうか?
ロディにこっそりと伝えた。そういえば僕は『石男』の名前を知らない。
「『キラキラした石がついた服を着た男』が来ている。ロディを攻撃する気はないようだが、一緒に行けるか?」
「はい」
繋いでいたロディの手に少し汗が滲んだのを感じた。牢に入れられ魔術の的にされていたんだ、目の前に行くのは怖いよな。でもロディは嫌だと逃げ出したりはしなかった。
ロディの手を引いて部屋に入り、『石男』と両親の向かいにある二人がけのソファに座った。
『石男』はなんだか情けない顔をして、口を開いて何か言おうとしては閉じ、また口を開いて……と繰り返している。ロディは身を固くして、俯いたまま固まっている。
最初に口を開いたのは父上だった。
「久しぶりだな、アダムヘルム。初めまして、ローデリックくん。まずは状況を説明させてくれ」
「お久しぶりです父上」
ロディは今はちょっと話せそうにない感じだ。
「ハーマイン伯爵には、六年前の事件の解明について協力してもらったんだ」
「そうですか。それで?」
僕は父上が何を考えているのかも分からないし、『石男』も何を考えているのか分からない。事件の解明に協力したからなんだというのか。陛下から打診があれば協力するだろ。
「エアガイツ公爵の派閥が事件を主導していたことは知っていると思う。そこで次の薬物の隠し場所としてハーマイン伯爵の領地が候補に上がった。私はそれを掴んで伯爵にコンタクトをとったんだ。
息子の夫の名誉回復ならと言って、伯爵は快く協力してくれたよ」
は? ロディのこと虐げていたくせに、今更協力? 何を企んでいる?
「ろ、ローデリック、すまない。私はお前に酷いことをしたし、酷いことを言ってきた。許してくれとは言わないから、これから償わせてほしい」
肩を落として力ない声で『石男』がロディに頭を下げている。これはどういうことだ?
「ア、ダム、ギュッてしていい?」
「いいよ」
「うん、ありがとう」
親の前でか? と言いたかったけど、ロディの声が震えているなんて初めてで、僕の方が怖くなってしまったんだ。
「ロディ、僕がついてる。大丈夫だ」
いつもロディが僕にしてくれるみたいに、片手で背中をトントンしながらギュッと力を込めた。
僕は『石男』のことも両親のことも、ますます分からなくなった。
ここで信じられるのはロディだけだ。必ず二人で乗り越えよう。
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校正・文体の調整に生成AIを利用しています。