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九章:未来 ロディ視点
67.アダムの父と『ポコポコ』
緊張しながらアダムの両親が待つ部屋に向かう。
「ロディ、大丈夫だ。僕がついている」
「手、ギュッてしてていい?」
「いいよ」
アダムは俺の手を握ってくれた。俺の指とアダムの指を交互に絡めて握ったんだ。この握り方は初めてだが、絡み合った感じがすごく好きだと思った。
「二人とも、仲睦まじくてなによりだ」
アダムの父がそう言って、向かいのソファに座るよう促された。
怒ってはいないように見える。子は父と母の血を半分ずつ持って生まれると聞いたが、アダムの父は改めて見てみるとアダムに似ているところがない。不思議だ。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。ローデリック・ロイターです」
「そういえば自己紹介がまだだったね。私はカルロス・ロイター、アダムの父親だ。ローデリックくんはアダムと結婚して私の息子になったんだから父と呼んでもいいんだよ」
父? 俺は父上のことも父と呼んでいるのに、アダムの父も父も呼ぶのか? 二人を同じように呼ぶのは変じゃないか? どうしたらいいか分からずアダムを見た。
「ロディ、どうした?」
「父上のことを父と呼んでいるから、アダムの父のことも父と呼んだら、父が二人になってしまう。どうしたらいい?」
アダムも困った顔をした。
「じゃあ『キラキラした石がついた服を着た男』のことは『石の父』と呼べばいいんじゃないか?」
「なるほど。じゃあ……」
アダムの父は何と呼べばいいだろう? 特徴といえば服が張り裂けそうなほどに盛り上がった筋肉だろうか。
「アダムの父のことは『張り裂けそうな父』でいいか?」
「「「ブハッ」」」
アダムの両親とアダムが同時に紅茶を吹き出した。『張り裂けそうな父』はちゃんとアダムの父だった。似ていないと思ったが、同じタイミングで紅茶を喉に詰まらすなど、体質が似ているからとしか思えない。同じ血が流れているというのは面白い。
「ちょっと待ってロディ、長くない?」
アダムに言われてそうかもしれないと思った。『石の父』のことはもっと長い名前で呼んでいたが、普段から呼ぶわけではなかった。普段から呼ぶならもっと短い方がいいんだろうか?
「いや、アダムもアダムだ。ツッコミどころはそこではないだろ」
「あら、私はいいと思うわ。『張り裂けそうな父』ってあなたにピッタリじゃない。今日の服も張り裂けそうよ」
アダムの父は気に入らないようだ。アダムの母は気に入ったようだが。
「今はいい名が思い浮かばない。考えておこう」
「僕も一緒に考えるよ」
アダムが一緒に考えてくれるなら嬉しい。
「はぁ~目の保養になるわ。イケメンの笑顔っていいわね~」
アダムの母がこっちを見ながらそう言った。それはもしかして俺のことだろうか?
話は逸れたが、アダムの両親からの話というのは学園を破壊した事件のことだった。
報告を聞いた時、結界が張られた学園の魔術研究科の建物を破壊するのは、アダムの魔力を持ってしても無理だとアダムの母はすぐに気づいた。
そんなことは魔術研究者であれば分かることだから、すぐに原因は解明されると思っていたそうだ。
アダムが怪我をしたと聞いたため王都にすぐにでも向かいたいのに、帝国が攻めてきて足止めされ、王都へ向かうのが遅れた。
王都に着くとアダムの怪我は酷く、夏休みが明けてもしばらく入院が必要だった。後遺症が残ることも、傷跡が残ることもなく完治したと聞いて、俺は心底ホッとした。傷跡がないことは知っていたけど、ちゃんと治ってよかった。
退院の目処が立つと、原因の解明が遅いのは気になったが、帝国の動きが不安なため領地に戻っていった。それは仕方ないことだ。
アダムは学生だったこともあって咎められることはなかったが、アダムが犯人にされ色々な噂が広まっていった。そのことをアダムの両親が知ったのは、「学園を退学して領地に戻る」とアダムから手紙が届いた時だった。
なぜそれまで気づかなかったのかと疑問だったが、ロイター領は王都から離れているから情報が届くまでに時間がかかるんだと教えてもらった。
アダムの母は真相を調べたいと主張したが、アダムの父は黒幕は高い地位の者だと感じ、慎重に動くことにした。
アダムに危険が及ばないようにするには、領地に閉じ込めるが一番いいと思い付いた。閉じ込める? アダムは閉じ込められていたのか?
それでアダムに当主を譲り身軽になって調査に乗り出した。
「お前を辺境に留めるために『破壊神』の噂をロイター領に流したのは私たちだ」
とにかく人をアダムに近づけないようにした。人が近づかなければ、アダムが危険に晒されることもない。
セドリックと軍団長にアダムに近づく者がいないか監視もお願いしていたそうだ。
「すぐにでも解決できるはずだったんだが、こんなにも時間がかかって、長い間一人にしてしまった。すまなかった」
「ローデリックくんがアダムの心を救ってくれたのよね。ありがとう」
説明中もアダムは呼吸を度々止めていたが、説明が終わって謝罪の言葉を聞くと、完全に止めてしまった。
俺はアダムを抱えて、俺と向き合うように膝の上に乗せた。
「大丈夫だ。俺がいる」
抱きしめながら背中を撫でると、アダムはふぅ~っとやっと息を吐いた。
俺の首筋に顔を埋めてスンスン匂いを嗅いでいる。俺が緊張するからと持ってきた『ポコポコ』だったが、アダムを救うことになってよかった。ありがとう『ポコポコ』、ありがとうボン。
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