【完結】破壊神のお婿さんはイケメンらしい

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九章:未来 ロディ視点

68.『毛玉』狩り

  

 アダムを膝の上に乗せて抱きしめていると、ようやくアダムの呼吸が整って、力を抜いて俺にもたれかかってきた。

「ロディ、ありがとう」
「アダムは今日も可愛い。大好きだ」
「うん」
 アダムは本当に可愛い。本当はキスしたいけど人前ではダメだ。今は抱きしめるだけで我慢する。

「アダム、部屋に戻る?」
「そうする。話はもう終わった」
 俺はアダムを抱えたまま立ち上がって、部屋に戻ることにした。

「そうだ、今度『毛玉』を食べさせてあげます。近いうちにアダムと一緒に狩ってくるので楽しみにしていてください」
 俺はアダムの両親に伝えた。アダムがいるのはアダムの両親のおかげだから『毛玉』を食べさせてあげたい。

「『毛玉』とは何だ?」
 そのまま退室しようと思ったが、アダムの父から質問されて立ち止まった。

「角と牙があって黒い毛の塊のような、怖い生き物です。魔物? アダム、元の名前なんだっけ?」
「キングファングボアだ」
 そうだ、キングファングボアだ。いつも忘れてしまう。

「キングファングボアか、狩りに行くなら私も一緒に行く。行く時は声をかけてくれ」
「分かりました」
 アダムの父も一緒に行くのか、あんなに服が張り裂けそうな筋肉なんだから強いんだろう。楽しみだ。


 二日後、『毛玉』狩りに行くことになった。
「どこに行くんだ?」
 アダムと手を繋ぎ、カミーユとアストロとフライツと連れて冒険者ギルドに向かっていると、横を歩いているアダムの父が尋ねてきた。
 アダムの父の呼び名はまだ決まっていない。『張り裂けそうな父』以上にしっくりくる名前が見つからないんだ。
 革鎧に身を包んで、大きい剣を背負っている。大きい剣を振り回すには、これくらい筋肉がないといけないのかもしれない。

「冒険者ギルドです」
「なるほど、ギルドで情報を集めるのか」
「いえ、知り合いがいるので顔を出したいのと、みんなも一緒に行くかもしれないのでお誘いです」
「へぇ、王都に仲間がいたなんてな。ローデリックくんも王都を楽しんでるな」
 俺はアダムと会ってから、いつでも楽しい。離れていた時は寂しかったけど、それ以外はいつでも楽しい。

 冒険者ギルドに入ると、「『モコ神』とロディが来たぞ!」と騒ぎになった。
「おおー『モコ神』ロディ、久しぶりだな!」
「相変わらずロディはイケメンだな」
「『モコ神』は今日もモコモコだな」
 屋敷から出て今までずっと口を開かなかったアダムも、みんなに囲まれて嬉しそうに話している。

「『モコ神』とはなんだ?」
「オッサン強そうだが見かけねーな。あの有名な魔術師『モコ神』を知らないとは損してんな」
 冒険者のジョーがアダムの父の肩を気安くバンバン叩いた。

「ジョー、この人はアダムの父だ」
「マジかよ! 偉い人? 俺もしかして不敬で殺される?」
「私はそんなことはしない。さっきと同じ態度で構わんよ」
 アダムの父なんだから大丈夫だと思ってたが、やっぱり怒らなかった。

「さすが『モコ神』の父! 『モコ父』だな」
 みんながアダムの父を『モコ父』と呼び始めた。その名はすぐに広がって冒険者たちに定着した。

「アダム、アダムの父の呼び名は『モコ父』でいいんじゃないか? 『石の父』と『モコの父』でどうだ?」
「くくっ、いいんじゃない?」
 アダムの父の呼び名がやっと決まった。

 王都を出て南の街ラムダを目指す。
 アダムとはずっと手を繋いでいる。指を絡める握り方が気に入ってから、俺たちはこの繋ぎ方をするようになった。
 アダムの手は小さくて可愛い。

「『モジャ』が生えてる。アダム、摘んでいいか?」
「いいよ」
 手を繋いでいるから、声をかけてから道端にしゃがんで『モジャ』を摘んだ。ふわふわの葉の匂いを嗅ぐ。うん、今日も『モジャ』はいい匂いだ。アダムにも摘んで渡す。
『モコの父』の分も摘んで渡した。

「『モコの父上』、『モジャ』です。どうぞ」
「ぷっくくく」
 俺が『モコの父』に『モジャ』を渡すと、アダムが笑い出した。そんなに面白いことがあっただろうか?

「『モジャ』とはこの草の名前なんだよな? これはなんだ?」
「いい匂いがします」
 俺が伝えると、『モコの父』は『モジャ』の匂いを嗅いだ。
「確かにな」

 アストロが『毛玉』を狩る時に有効なのだと代わりに説明してくれた。領地で香水を作っていることも一緒に説明していた。
 ラムダの街を超えて森に入っていく。

「このまま南へ真っ直ぐだ」
 アダムが魔術で『毛玉』がいる場所を調べて教えてくれる。アダムは可愛いのに強くて格好いい。
「アダム格好いい、好き」
 思わず口をついて出ていた。

「ははははは」
 俺の後ろにいた『モコの父』が笑っている。楽しんでいるみたいだ。

「ロディ、メインでいくか?」
「やってみる!」
 遠くに『毛玉』の姿を見つけた俺は愛用の片手剣を抜いて、音を立てないように回り込んで攻撃を仕掛ける。
 大きな剣でないから、一回の斬りつけで倒すことはできない。何度か斬りつけて、懐に潜り込む必要がある。
 フライツが槍で牽制してくれて、カミーユも『毛玉』を翻弄するように動いてくれる。遊撃というやり方らしい。
 一人で戦うより、みんなで戦うと怪我も少ないし短時間で倒すことができる。
 みんなで倒すのは楽しい。一人の時はいつも怖かった。

「ロディ、お疲れ様」
 そして一番嬉しいのは、倒すとアダムが労ってくれることだ。

 その後は冒険者のみんなが交代で倒したり、『モコの父』の戦いも見た。トミーの戦い方に似ている。トミーの剣の方が大きいが、体格も似ているし動きが近い。

「久しぶりの魔物討伐は楽しいな!」
「『モコ父』もやるね~」
「『モコ父』は魔術でドカーンじゃないんだな」

 アダムが魔術で血抜きをしてくれて、去年と同じように上空に浮かせながら『毛玉』を運んでいく。

「アダム、疲れてない? 俺が抱えて帰る?」
「大丈夫だ」
 アダムは小さくて細い。すぐに疲れてしまうから心配になった。
 それは言い訳だ。本当はアダムを抱きしめたかっただけ。帰ったらたくさん抱きしめてキスしよう。

「こんな大きな『毛玉』はうちだけでは食べきれない。ハーマイン家にも持っていくぞ」
『モコの父』が提案してくれて、『石の父』にも持っていくことになった。


 
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