僕の過保護な旦那様

cyan

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二章

137.招待状(※)

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 クロッシー夫人からお茶会に招待すると言われて、楽しみに待っていたんだけど、やっと届いた招待状はクロッシー夫人からの招待状ではなかった。

「ラルフ様、招待状のようなものが届いています。この蝋封の印はどなたでしょう?」
「副団長のリヴェラーニだ。そんなものは無視しておけばいい」
 ラルフ様は僕が渡した手紙の蝋封印をチラッと見ると眉を顰めた。

「そういうわけにもいかないでしょう? 開けますよ」
「見るだけだからな」
 ラルフ様は招待に応じる気はないようだ。

 開封してみると、結婚披露パーティーを開催するという内容だった。
「ラルフ様、参加しなくていいんですか?」
「必要ない」
 そうですか。
 ラルフ様はリーブを呼ぶと、不参加の返事を書いてすぐに送るよう指示をした。

 僕は騎士団の中のことはよく分からないから、ラルフ様がそれでいいならいいんだけど、夜会に行かないのは新年の夜会で僕が目をつけられたと勘違いしているからだろうか?

 その数日後、クロッシー夫人からお茶会の招待状が届いた。
 ひと月後にお茶会を開催する、参加者は第二騎士団に在籍する騎士の伴侶や子どもも参加できると書かれていた。
 貴族の堅苦しいお茶会ではないので普段着で気軽に参加してほしいとのこと。

 子どもを連れて参加できるのか。今回は様子見も兼ねて僕一人で参加して、シルも参加できそうなら次回はシルを連れていくのもありかもしれない。
 騎士の子どもなら、シルと同じように騎士に憧れていて、話が合う友だちができるかもしれない。

「マティアス、参加するのか?」
 帰宅したラルフ様の着替えを手伝いながら、クロッシー夫人から招待状が届いたことを伝えると、ラルフ様は動きを止めて僕を正面からジッと見た。

「はい。せっかく招待状をいただいたので、参加しようと思います」
「分かった」
 ラルフ様は反対はしなかったけど、僕が参加するのがそんなに嫌なんだろうか?
 眉間の皺を深くして、何かに耐えるような顔をしている。ラルフ様は何をそんなに恐れているんだろう?

「クロッシー夫人はそんなに危険な方なんですか? 先日お話をした限りではそうは見えませんでした」
「夫に剣を向けるような人物が危険でないと思うか?」
 そう言われるとそうかもしれないけど、僕なんてラルフ様に首にナイフをピタッとされましたけどね。

 夫にそんなことをされた人なんてそうそういないと思う。いや、クロッシー隊長はされているかもしれない。
 あれ? 意外といるのかな?
 そんなわけないと僕は首を横に振った。

「マティアスがまた遠くに行ってしまいそうで不安だ」
 ラルフ様がそんな風に不安を口にするのは珍しい。学生時代にクロッシー夫人に何かトラウマでも植え付けられたんだろうか?

「大丈夫ですよ。僕はどこにも行きません。ラルフ様だけのものです。独り占めしていいのはラルフ様だけだって言ったでしょう?」
「そうだな」
 ラルフ様は少し肩の力を抜いて、僕をそっと抱きしめてくれた。俯いて僕の首筋に顔を埋めているのか、ラルフ様の温かい吐息が首にかかってムズムズする。

 なんだか……
「ん……」
「独り占めしたい」
 ラルフ様はそう呟きながら、僕の首筋にチュッチュッと何度も柔らかい唇を当ててくる。

「キス、したいです」
「我慢できない」
「うん。僕もです」
 そう答えると、すぐにベッドに攫われて僕は裸だった。

 夕食は……まあいっか。きっと優秀なリーブなら察してくれるはず。

「少しよくなってきたか? ひび割れてはいないな」
 ラルフ様が僕の手を取って、指先をじっくり眺めて一本ずつ丁寧にキスしてくれた。

 僕は自分の指さえ自分で管理できない。今はラルフ様が朝晩、ぬるま湯で洗って薬を塗ってくれている。
 最初は包帯を巻かれていたけど、血が出るような傷がひいてからはしなくなった。包帯なんて巻いていたら何にもできないから、数日で包帯が取れたのは本当によかった。

 ラルフ様に熱のこもった目で捕えられると、やっぱり少し拗ねているのか、チュッチュッと啄むようなキスを繰り返してきた。

 ラルフ様の手によって、丁寧に体が開かれていくと、キスで口を塞がれたままゆっくりと繋がる。

「マティアス、愛してる」
「ら、んん……」
 ラルフ様は自分だけ言って、僕には愛してると言う隙を与えてくれなかった。

 背中に手を回して、胸と胸がペッタリと密着すると温かくて気持ちいい。
 ラルフ様、何も不安に思うことなんてありませんよ。僕が愛してるのも、愛されたいと思うのもラルフ様だけです。

 ラルフ様は夕食を気にしているのか、ただ余裕がないだけなのか、激しかった。
 ちょっと止めてほしくて手を伸ばしたのに、その手を掴んで余計激しくされた。
「やぁっ……ダメ……」

「マティアス、優しくできなかった」
「うん」
「大丈夫か?」
「うん」

 ラルフ様は乱れた髪が汗で顔に張り付いたまま、肩を落として僕の体を丁寧に拭いてくれた。
 自分のことは後回しにして、いつも僕の体を労ってくれる。

「大丈夫ですよ。ラルフ様はいつも優しいです」
「夜はもっと優しくする」
「はい」
 足りなかったんだ……
 夕食を食べてリベンジですか? 後でするよって予告されるとなんだか恥ずかしい。
 今は大丈夫だけど、明日は抱っこの日かな? なんて想像しながら僕たちは食堂に向かった。


「風呂で温まってから寝よう」
「そうですね」
 夜は時間を気にしなくていいから長かった。ラルフ様は当たり前のように裸のままの僕を抱えてお風呂に向かう。やっぱり明日は抱っこの日だ。
 暖炉で火を焚いていても、その熱はベッドまでは届かない。体を重ねていても裸でいたら体は冷える。

 チャポン
 冷えた指先と痛む腰に温かいお湯が心地いい。「夜は優しくする」なんて言ってたけど、優しくなかった。
 ランプをボーッと見ながらラルフ様の分厚い胸筋にもたれていると、お風呂の中で眠ってしまいそうになる。

「マティアス、大好きだ」
「僕もラルフ様が大好きですよ」
 ラルフ様の腕に力が込められて、苦しいくらいに後ろから抱きしめられた。ラルフ様は何がそんなに不安なんだろう?
 ただ僕のことが大好きなだけ? そういうことにしておこう。


 お茶会当日になると、僕はラルフ様と喧嘩することになった。
 ラルフ様がチェーンメイルを着ていけと言うんだ。お茶会にチェーンメイルなんておかしいと反対したら、「それなら俺が仕事を休んでマティアスを守る」と言い出した。

 どこに夫のお茶会についていくために仕事を休む騎士がいるのか。
 僕が断りきれなかった理由に、普段着で参加と書かれていたことと、ラルフ様が護衛を連れていけと言ったことがある。
 みんなクロッシー夫人のように過激で、お茶会の途中で剣とか振り回して模擬戦なんかが始まるんじゃないかと思ったんだ。
 普段着と書かれているけど革鎧を着て参加する人もいるんじゃないかとか、色々考えてしまい、仕方なくチェーンメイルを着ることにした。

 護衛を連れていけと言うから、チェルソを連れていくことにした。バルドでもよかったんだけど、バルドはロッドとデートだと聞いて諦めた。

「ラルフ様行ってきます」
「チェルソ、必ずマティアスを守れ」
「畏まりました」
 そんなに危険な集まりなの? なんだか不安になってきた。

 
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