僕の過保護な旦那様

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二章

145.ご褒美はお預け

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「ところでハリオ血まみれだったんだけど、殴って目を覚まさせたの? ちょっとやりすぎじゃない?」
 フェリーチェ様に言われて、ハリオが怪我をしたまま向かったことを思い出した。それにしても血まみれ? そこまでだっけ? ルカくんのところに行く間にハリオの傷は酷くなったのかもしれない。

「違いますよ。さっきそこでハリオは盛大に転んでいました」
 うちはそんなに過激な夫夫じゃないんだ。誤解されては困る。僕はさっきハリオが転んだ辺りを指さした。あの辺りにはハリオの血の痕があるだろうし、額に刺さったと思われる枝か石も落ちてるんじゃないかな?

「そっか。あまりにもハリオがバカだから、とうとう殴ったのかと。私がルカくんならボコボコにするな~」
 フェリーチェ様はそう言ったけど、それって副団長を何度かボコボコにしたってことでいい?
 クロッシー隊長の奥様に続き、過激な伴侶二号だ。

 フェリーチェ様はさっき僕たちのことを「羨ましくない」って言ったけど、副団長を地面に座らせてその膝の上に座った。
「腕はここだ」
 副団長の腕をとってお腹に回させると、「もっとギュッとしっかり支えろ」なんて命令しながら頬は緩みきっている。

「コホンッ、諜報部は潜入したり、街に溶け込んだり、演技力が必要になるからね」
 副団長に抱っこされて嬉しいの誤魔化した? 頬の緩みを引き締めたフェリーチェ様は、急に話を逸らした。
 可愛い人だ。

 シルとリズが戻ってくると、リヴェラーニ夫夫はシルたちの前で、もう一度ハリオたちの感動シーンの再現をした。最後には謎のダンスまで付け加えていた。多才ですね。

「すごい! きからとんだのすごい!」
 シルは演技より木から飛び降りたフェリーチェ様を褒めた。でも褒められたから満更でもない様子だ。
 フェリーチェ様はシルが褒めるものだから、何度も木に登って飛び降りるってことを繰り返している。

 フェリーチェ様も副団長も楽しそうだからいっか。
 そんな感じでみんな仲良くサンドイッチを食べ、午後になると帰ることになった。

 ハリオとルカくんは戻ってこないから置いていく。ハリオの馬を残しておけば相乗りして帰ってくるだろう。
 ルーベンとタルクは一緒に来たことを忘れるほど姿を見ない。本当に二人はどこまで鍛錬に行ったんだろう?

 パンの手綱を誰が引くかという話になったんだけど、なんと副団長が引いてくれた。副団長は自分の馬とパンの手綱を持って走っている。
 フェリーチェ様が、「この前シルくんを泣かせたお詫びにお前が引け」と一言言うと、副団長は了承して馬を降りた。
 それでいいんだろうか? きっといいんだろう。

「最後まで頑張ったら夜はご褒美あげる」
 そうフェリーチェ様が言うと、副団長はとっても軽い足取りで馬を二頭引き連れて走っていった。
 フェリーチェ様が副団長にあげるご褒美って何だろう? すごく気になる。

「ラルフ様、今日はとても格好よかったです。惚れ直しました」
「そうか。マティアス、俺もご褒美がほしい」
 えー!? ご褒美って何あげればいいの? 新作のポポファミリー? いや、そんなのあげても……
 ラルフ様は興味なさげにしていたけど、ちゃっかりリヴェラーニ夫夫の会話を聞いていたんですね。

「ラルフ様、何がいいですか? 何か欲しいものがあるんですか?」
「マティアスの愛だ」
「いつでも僕はラルフ様のことを愛してますよ。ちなみに明日はお休みです」
「そうか」
 ラルフ様、意味分かってくれた?

 愛っていう形をなさないものではなくて、ラルフ様に何かをあげたいと思った。これから暑くなったら僕が作った虫除けハーブオイルはあげるけど、誰にでもあげるようなものじゃなくて、ラルフ様にだけ特別なものをあげたい。
 何かいいものがないか考えてみることにする。

 自分で誘っておいて、僕はドキドキしていた。
 家に帰ると、パンの手綱を引いてくれた副団長にお礼を言って、リヴェラーニ夫夫は帰って行った。
 副団長が早く帰ろうと急かしたんだ。ご褒美をもらえると聞いて楽しみにしているんですね。フェリーチェ様も可愛いけど、副団長も忠実な大型犬みたいで可愛い。

 しばらくするとハリオとルカくんが馬に相乗りして帰ってきた。
「俺たち、恋人になりました」
 ハリオが僕たちに報告しにきてくれたけど、僕たちは知っている。リヴェラーニ夫夫が演じてくれたから、どんな会話があってどうやってくっついたのかも知っている。
「うん。よかったね、おめでとう」
 本人たちからも報告を聞くことができたから、その後も二人で話し合って上手くまとまったんだろう。

「ハリオ、大切なものは自分で守れ。その力がお前にはある」
「隊長……ありがとう。俺、隊長の部下でよかった」
 ハリオがラルフ様の言葉に感極まって声を振るわせながらそう言った。
 やっぱりラルフ様は格好いい。僕の旦那様は格好いいんだ。

 そんなことを思っていると、ラルフ様は僕の袖口のナイフを掴んでシュッと振った。もう虫の季節ですか。明日にでもバルドに頼んで庭で虫除けのハーブを炊いてもらおう。そして僕はハーブオイルを量産するぞ。

「マティアスのことは俺が守る」
「いつも守ってもらって感謝しています」
「感謝するのは俺の方だ。マティアスにいつも癒してもらっている」
 そうなの? 僕がラルフ様を癒したことなんてあったかな?

「マティアス、いいか?」
「ん? いいですよ」
 って何のこと? 思わずいいって言ってしまったけど、何のことだっけ?

 僕は一瞬にしてラルフ様に攫われて、ベッドの上だった。でも今日はまだ服を着ている。
「マティアス、今日は森に行ったから疲れているんじゃないか? ご褒美は後日にするか?」
 ご褒美って、僕の愛ってそういうこと?
「大丈夫ですよ。僕はラルフ様に相乗りさせてもらっていましたし、森でものんびりお茶を飲んでいただけですから」
「しかし、少し体が冷えている気がした」
 そうなの? 全然気づきませんでした。
「じゃあ先にお風呂に入って温まればいいんじゃないですか?」
「そうだな」

 ラルフ様はお風呂に柑橘の実をいくつか浮かべてくれた。体が温まるそうだ。
「いい香りですね」
「そうだな」
 ラルフ様は後ろから僕を包み込むように浸かっていて、僕の肩にお湯をそっと掛けてくれている。

「ルカくんとハリオ、よかったですね」
「そうだな」
「リヴェラーニ夫夫も仲良しですね」
「俺とマティアスの方が仲良しだ」
 なぜかラルフ様はリヴェラーニ夫夫に対抗意識があるらしい。
「うん。僕たちも仲良しです。キスしますか?」
「する」

 僕が顔だけ振り向くと、ラルフ様が好きな唇をチュッチュッと啄むキスをたくさんされた。だから僕もラルフ様の唇に吸い付いてみる。そうやっていつまでも僕たちは遊びながらキスをしていた。
 ようやくお風呂から上がると体から柑橘のいい香りがした。

「マティアス……」
 コンコン
「夕食の準備ができました」
 これからという時にリーブが食事の用意ができたと呼びにきて、ラルフ様はお預けを食らってショックを受けている。眉尻が下がって、臨戦態勢だったラルフ様のものがゆっくりと力を失っていくのを見ていた。

「ラルフ様、夜はまだ長いです。ご褒美は後で、僕が上に乗って動きますから」
「分かった。すぐに食事に行こう」
 ラルフ様はやっと気持ちを切り替えて、僕のことを抱き上げて食堂へ向かった。なぜ抱き上げる必要があるのかは分からないけど、たぶんくっついていたかったんだろう。僕は抵抗せずラルフ様に身を任せた。

 
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