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二章
179.捕まったラルフ様 ※
しおりを挟む「マティアス……」
いつもより少し遅い時間に帰ってきたラルフ様の声が小さい。「ただいま」なんて口はかすかに動いていたものの、声になっていなかった。
「おかえりなさい、ラルフ様」
こんなに疲れているラルフ様を初めて見た。というかラルフ様が疲れているところなんて見るのは初めてだ。
ラルフ様は体力が無尽蔵に溢れてくるのかと思うくらい、いつも元気なんだ。悲しいとか戸惑いとかは見たことあるんだけど、疲れたなんて言葉にしたことはないし、そんな様子を僕は見たことがなかった。
夜中に海賊を倒し行っても、雪山で遭難して何ヶ月も帰ってこなくても、無茶な行軍で僕を迎えにきた時も、朝まで僕を求めても全然疲れていなかった。
それなのに今僕の目の前にいるラルフ様はとても疲れている。僕を見ても目に光が差すことがなく、虚ろな感じで、のそのそと体を引きずるようにして歩いている。
何があったの?
ラルフ様と部屋に向かい、無言でラルフ様の着替えを手伝う。
この疲れの原因を僕は聞いていいんだろうか? まさか戦争が始まるとかじゃないよね? また離れ離れになるなんて嫌だよ。僕が迷っていると、ラルフ様がポツリと溢した。
「マティアス。膝枕をしてほしい」
「いいですよ」
ラルフ様が僕に甘えてくるなんて珍しい。
僕はソファの端に座って、リラックスできるようにカモミールのキャンドルを焚くと、横たわるラルフ様の頭を膝の上に乗せた。人の頭ってけっこう重いんだな。
少し怖いけど聞くなら今だと思った。
「ラルフ様、何があったんですか?」
ラルフ様の話を聞いてみると、先日イーヴォ隊長が来ていた日に逃げると言っていたけど結局捕まって、リヴェラーニ夫夫の新婚旅行の再現をしっかり最初から最後まで見せられたらしい。それは朝一の訓練が終わった頃から始まり、午前中に一部と二部、昼を挟んで三部と四部まであったらしい。
ラルフ様の疲れの原因はリヴェラーニ夫夫だった。
よかった……
戦争じゃなくて本当によかった。
しかし一日中、リヴェラーニ夫夫のイチャイチャ新婚旅行の再現を見せられた騎士の皆さんは災難でしたね。
ラルフ様がこんなに疲れるということは、倒れている騎士もいるのでは?
フェリーチェ様は、続きはまた今度と言っていた。ということは、副団長がお休みの日にでもうちに来て、三部と四部を見せられるんだろうか?
僕も逃げたくなってきたな……
うちの使用人の何人かは理由をつけて逃げそうな気がする。シルは意外と平気らしく楽しんで見ている。フェリーチェ様がたまにするアクロバットを見るのが楽しいらしい。僕もフェリーチェ様のアクロバットだけなら見ていてもいいんだけど……
「ラルフ様が僕に甘えるなんて珍しいですね」
「すまない、嫌だったか?」
「嫌なわけないです。いつも頼ってばかりだから、ラルフ様に甘えてもらえて嬉しいですよ」
「そうか」
そう言うと、ラルフ様は仰向けから僕のお腹に向き直って、僕の腰に腕を回して抱きついてきた。お腹に顔を埋められるとくすぐったい。でも珍しく甘えてくるラルフ様が可愛くて、僕はラルフ様の髪をずっと撫でていた。
「マティアスに髪を撫でられるのも悪くない」
「そうですか? それならラルフ様が疲れた時には僕が髪を撫でてあげます」
そう僕が答えたら、ラルフ様は僕のお腹に顔を埋めたまま笑っていた。
そんなところでモゾモゾされると、変な感じになっちゃうんだけど……
「マティアスは元気だな」
「ラルフ様がそんなところでモゾモゾするからです。気にせずラルフ様は寛いでください」
「無理だ」
次の瞬間に僕はベッドの上で裸だった。おかしいな、さっきまでソファでラルフ様に膝枕してたはずなんだけど……
「マティアスの元気を分けてほしい」
「いいですよ」
ラルフ様がとても真面目な顔をしてそんなことを言うから、僕はドキドキしながら了承の返事をした。やっと光が戻ってきたラルフ様の目が、今度はギラっと雄の目に変わる。
その目を見ると僕は期待せずにはいられないんだ。ドキドキと高鳴る鼓動と、ラルフ様の柔らかい唇。そっと僕に触れる大きな手、全部好きだ。
ラルフ様の大きな背中に腕を回すと、ラルフ様と目が合った。今度はとても優しい目で僕に微笑んでいる。この目は僕だけが独り占めしたい。
「ラルフ様、僕もラルフ様を独り占めしたくなりました」
「俺はいつでもマティアスだけのものだ」
温かい唇が重なって、今日はチュッチュッっと啄むキスではなく、すぐに舌がヌルリと滑り込んでくる。僕の元気を分けてほしいと言ったのは本気みたいで、僕の唾液を全部奪っていくようなキスだ。
「んっ……」
それが気持ちよくて吐息が漏れてしまう。僕の拙い舌の動きでも、ラルフ様は嬉しそうに微笑んで髪を撫でてくれた。
ラルフ様の温かい唇が、首筋から鎖骨を伝って胸に向かうと乳首に吸い付かれた。
「あ……」
体の奥からゾクゾクと快感が広がっていく。
さっきまで撫でていたラルフ様の髪に触れて、ほわっと温かい気持ちに包まれた。
ゆっくりと下に下りていって、僕の股間に辿り着くと、僕の昂ったものに温かい吐息がかかってビクッと震えた。
「マティアス気持ちいいか?」
「んっ……」
ねっとりと舐められ、ジュルジュルと音を立てて吸い上げられる。ねえ、元気をもらうって僕の飲むつもり?
ラルフ様だけ狡くない?
「んんっ……」
ラルフ様は僕が吐精すると、最後の一滴まで吸い取るように吸い上げて、ゴクッと音を立てて飲んだ。
「マティアスの元気を分けてもらった。もう寝るか?」
はい? そんな終わりってあり?
「やだ……ラルフ様だって、それじゃ終われないでしょ?」
「いいのか?」
「そんな終わり方は許さない」
僕は隣に寝そべったラルフ様の上に跨った。
だって……僕は期待してたんだ。もっとラルフ様を感じたい。
「ラルフ様だって抑えきれてない。こんなに昂ってはち切れそうになってる」
僕がそっとラルフ様のものを撫でると、そこはピクリと反応した。
いいよ。ラルフ様が疲れてるなら、僕が自分でやるから。手を伸ばしてオイルを手に取ると、そっと後ろに指を入れる。いつもラルフ様がしてくれるように、自分で解していく。僕だって自分でできるんだから。
「マティアス、俺がやる」
「ラルフ様はそのまま動かないで」
ラルフ様は僕の言うことを聞いて動かなかった。でもまた雄の目になって、僕を下から見上げている。その目、ゾクゾクします。
オイルを足してラルフ様のものを掴むと、ジュプッと先端を中に導いた。ゆっくりと息を吐きながら腰を下ろす。
「ん……はぁ……」
やっぱり上手く動けなくて、快楽よりも上手くできているかどうかが気になってしまう。
「マティアスが頑張って動いているところが可愛い」
「やっぱり上手くできない……」
ラルフ様は上体を起こして、僕を包み込むようにギュッと抱きしめてくれた。
「大丈夫だ。俺が下から動いてやる。マティアスは俺に掴まっておけばいい」
疲れているラルフ様に無理はさせたくないんだけど、僕はまだまだ未熟だ。
「ああっ……」
ラルフ様に抱きしめられたまま揺さぶられると、途端に思考が溶けていく……
もう何も考えられなくなって、僕は必死にラルフ様にしがみついていた。
ラルフ様、疲れてたんじゃないの?
僕は腰をさすりながら、輝くような笑顔で元気に出勤していくラルフ様を見送った。
ラルフ様は本当に僕の元気を吸い取っていったのかもしれない。
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