僕の過保護な旦那様

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二章

186.ルカくんの話

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「マティアス様、病気は治ったんですか?」
「マティアス様が回復された!」
 僕の風邪が治って、ラルフ様から外出の許可が出ると、街で騎士を見かける度に声をかけられるようになった。
 この前までは軽い会釈だけだったのに、風邪を引いたくらいでそんなに心配されてたのかと思うと恥ずかしくなってしまう。

「フェリーチェ様、僕は騎士のみんなに、ちょっと風邪を引いたくらいで死んでしまうような最弱の人間だと思われているんでしょうか?」
 僕がそんな質問をすると、さっきまで久しぶりの再会を共に喜んでいたルカくんがクスクスと笑っていた。やっぱりルカくん前より筋肉ついたよね? 厚着してるからはっきりは分からないけどそんな気がした。

「シュテルター隊長が血相を変えて帰宅して、つきっきりで看病してるって聞いたからじゃない?」
 ああ、なるほど…
 ラルフ様のせいで僕は重病人に仕立て上げられていたのかもしれない。看病している間、ラルフ様はお仕事を休んでいたし、僕は部屋から一歩も出してもらえなかった。

「それで、二人が再会してからのこと詳しく聞かせてもらえる?」
 僕はそんなことよりハリオとルカくんがラビリントで再会してからのことが気になっているんだ。僕がルカくんに顔を近づけると、ルカくんは一瞬怯んでから、ちょっと恥ずかしそうに話し出した。
「えっと、初めは距離がありました。でも僕が一人で宿に泊まると言うと一緒に泊まってくれて、ハリオは部屋の扉のところでずっと寝ずの番をしていました」
 それって一緒に泊まったって言える?
 ハリオってば追いかけてきてくれたのに、まだそんな態度だったのか。

「僕が帰らないと分かると、毎日一歩ずつ距離が近づいてきて、ようやくベッドの側まできたから、フェリーチェ様に教えてもらった技をかけてベッドの上に組み敷いてみました」
 ルカくんが体格のいいハリオを組み敷くことができるって、何その技。僕もそれ知りたいんだけど。僕も頑張ればラルフ様を組み敷いたりできるんだろうか?
 うーん、でもラルフ様は「仰向けになって動かないで」って言えば僕が乗っても動かないでいてくれるから、そんな技をかけなくても上に乗ることができる。

 ハリオとルカくんはそのままキスはしたんだけど、ハリオが「自分が受け入れる」と言い出して、ルカくんも「僕が受け入れる」とどちらも譲らず数日はそのまま喧嘩したままだったらしい。それでもルカくんが心配だから毎日そばに置いて、宿の部屋にも一緒に泊まってたし、ルカくんは毎日技をかけてハリオに無理やりキスしていたらしい。
 なんて大胆なんだ……
 あれ? そういえば、僕もラルフ様に大胆だとか言われたっけ? ラルフ様、大胆と言うのはこのようなことをする人のことを言うんだと思います。

「それで結局どうなったの?」
「えっと……僕が脱いで、こんなに鍛えたから大丈夫だって言ったら、襲い掛かられました」
 ハリオ……抑えきれなくなっちゃったんだね。好きな人が目の前で脱いだら、そりゃあ我慢できなくなるよね。ルカくんそれは計算だったの? それとも本当に鍛えたってことを伝えたかっただけ?

「それで仲良しさんになったから部屋を借りたんだね」
 ふむふむとフェリーチェ様が言ったけど、ルカくんはちょっと目を逸らして気まずそうな顔をした。
 何? そうじゃないの?

「その、宿を追い出されて……部屋を借りるしかなかったんです」
「追い出されたの!? なんで!?」
 宿を追い出されるって何をしてしまったの? 夜中まで二人で騒いでたとか? 喧嘩の声が大きくて苦情がきたとか?

「その……夜中にガタガタうるさいと注意されたのと、ベッドを壊してしまって……」
「ぶっ、はははは」
 フェリーチェ様は大爆笑だ。お腹を抱えて、目の端には涙まで浮かべている。
 それって、その……夜の行為が激しすぎたってこと? ガタガタ音がするのは宿が古いとかそういう理由もあると思うけど、ベッドが壊れるってどういうこと!? ベッドって壊れるんだ? ベッドもボロかったの?

「フェリーチェ様たちに鍛えてもらっていてよかったです。あれからもちゃんと鍛錬を続けて、ハリオも安心しているみたいです」
 なるほど……ハリオが以前のルカくんに手を出さなかったのは正解だったのかもしれない。きっとベッドが壊れるくらい激しく求められたら、ルカくんが大変なことになる。
 もしかして、もしかしなくても、ラルフ様ってものすごく僕に加減してくれてるのかな?
 この前の一件で加減してくれていることは分かっていたけど、僕の想像以上なのかもしれない。

「フェリーチェ様、僕もルカくんみたいに鍛えたいです。教えてください!」
 僕はフェリーチェ様に頭を下げた。
「マティアスさん、やめておいた方が……」
 ルカくんが慌てて僕を止めようとしたけど、僕はサッとフェリーチェ様に攫われてリヴェラーニ邸に連れて行かれた。

「よし! じゃあ最初だし軽くね」
「はい!」
 気合いだけはあったんだ。それに僕だってちゃんと鍛えてきたし、フェリーチェ様の「軽くね」って言った言葉を信じていた。


「お前、俺のマティアスをこんなにするなど、出禁にするぞ!」
 僕は甘かったらしい。フェリーチェ様を怒鳴りつけ、地面に倒れて動けなくなった僕を大事に抱えて帰るのはラルフ様だ……
 そしてラルフ様はとっても不機嫌に大股でドスンドスンと歩いている。

「マティアス、俺では不満か?」
「いえ……」
 ラルフ様は僕の体力を考えて鍛えてくれているってことが分かった。甘いかもしれないけど、ラルフ様に鍛えてもらうのが一番いいってことも分かった。

「ごめんさない。ラルフ様に全力で愛されてみたかった」
「俺はマティアスのことを全力で愛している」
「うん」
 結局僕は、ラルフ様に我慢させたくないと思ったのに、全身の筋肉痛が酷すぎて数日間ラルフ様に禁欲という我慢を強いることになった。また失敗してしまった……

 
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