僕の過保護な旦那様

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二章

365.リヴェラーニ夫夫の喧嘩

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「シル、クロノス様が来るって」
「うん、しってる」
 シルは少し緊張している。パンを見せてあげると約束したけど、また欲しいと言われることを恐れているんだろうか?
 今度はクロノス様の横暴を許す護衛騎士たちじゃないといいんだけど……
 僕はそれほど心配はしていない。なぜならクロノス様も来るけど、今回はクロノス様を止められるであろうメテオリティス様が一緒だからだ。

 新国王となったばかりなのに、こんなところに気軽に遊びにきていいのかと思うんだけど、先日僕とフェリーチェ様が見つけた闇組織が、思った以上に大きな組織だったらしい。
 貴族の暗殺を行ったり、人を攫って近隣の国で闇市にかけたりするような組織で、フェンスタの騎士団が長年追っていた。
 王都にいるのに見つけられなかったのかと不思議だったけど、まさか王都にいるとは思わなかったらしい。王都から近い街に拠点があるものだと思って必死に探していたそうだ。

「今回は本当に助かったよ。君たちにはいつも助けられてばかりだ」
 メテオリティス様とセリニさんはやっぱり忙しいみたいだ。少し挨拶をするとお茶を一気に飲んで帰ってしまった。
 クロノス様と数人の護衛騎士が残ったけど、クロノス様の護衛は一新されていた。

「ピグロは?」
 クロノス様が周りをキョロキョロ見渡しながらシルに訪ねた。本当にピグロのことが大好きなんですね。
「つれてってあげる」
 シルがクロノス様の手を引いて厩舎に向かうと、その後をゾロゾロと騎士たちがついていった。ピグロに会いにいくことを反対しないってことは、少しはクロノス様に寄り添ってあげられる人たちなんだろう。今度の護衛はクロノス様と信頼関係を築ける人たちだといいな。

「マティアス様ー! あれ? 国王様たちもう帰っちゃったの?」
 フェリーチェ様がやってきた。なんだかとても機嫌がいいみたいだ。
「お忙しいようで、挨拶してすぐに帰ってしまいました」
「そっか、残念。とうとうできたんだよ!」
 フェリーチェ様の言葉に、ラルフ様と部下の皆さんが瞬間移動した。本当に一瞬で消えたように見えたんだ。

「そうですか……」
 僕はそんなことできないから、その場でフェリーチェ様を迎えた。
 とうとうできたんですね。というか、できてしまったんですね、劇が……

「やっぱり広いところがいいから、庭でやろうと思うんだ」
 やっぱりやるんですね。
「劇とは楽しみだ。私はあまり劇を見たことがない」
「俺も劇って見たことないです」
 ロランドとルキオは楽しみだと話している。ロランドは騎士団にいてもリヴェラーニ夫夫とは別の団だったし、引き篭もっていたから見たことがないのかもしれないけど、ルキオも見たことがないんだね。
 運よく遠征にでも行っていたんだろうか?

 今回は一体どれほどの長さになっているんだろう?
 旅の総集編ではなく、喧嘩から仲直りまでの内容ならそんなに長くないと思うんだけど、どうアレンジされているか分からないから何とも言えない。

「劇やるんだってー?」
 クロノス様を抱っこしたピグロと、シルと手を繋いだリーノ、それに続くクロノス様の護衛まで庭にやってきた。
 ピグロはいい。リーノもいい。シルはアクロバットがあれば楽しめるからいい。まさかクロノス様とフェンスタの騎士にまで披露するんですか?

「今日は観客が多いから腕がなるよ」
「ふむ」
 意外にも副団長まで乗り気になっている。やっぱり夫夫ですね。

「ヒンッ」
 パンも見にきたの?
 パンが見ても面白くないと思うけど。パンはシルが座る椅子の隣に立って、シルに頭を擦り付けている。
 きっとパンはもっとシルと遊びたかったんだろう。

 劇は開始の合図もないまま突然始まった。
 アクロバティックなダンスをしながら、フェリーチェ様は歌を歌うという器用なことをしている。
「すごーい!」
「すごい!」
 クロノス様もシルも大喜びだ。フェリーチェ様、喜んでもらえて良かったですね。

 長い長いダンスが終わったかと思ったら、今度は急に劇が始まった。

「フェリーチェ、危険なことに首を突っ込むなとは言わないが、俺を連れていけ。一人で行くな。心配なんだ……」
 副団長の静かな怒り、きっと二人が部屋に消えてからのやり取りなんだろう。
「うん、ごめん」
 フェリーチェ様はやけに素直に謝っている。

「俺のために諜報部を辞めたことを後悔しているのか?」
「そんなことないよ」
「俺がしつこくしたから結婚してくれたんだろ?」
「そんなことない」
「俺は分からなくなった。心配だから諜報部を辞めてくれと言ったが、正しかったのか」
 なんだか雲行きが怪しくなってきた。副団長、そんな風に思ってたの?
 フェリーチェ様は自分の妖精に『リオ』と付けるほど副団長のことが好きなのに。

「ごめん……」
 二人のシリアスな雰囲気に、僕も緊張してきた。どうなってしまうのかドキドキと鼓動が速くなる。

「俺に制限されることなく、もっと自由に動いたりしたいか? もしそうなら……」
「待って、待ってよ。ねえ、今言っちゃいけないこと言おうとしたでしょ。別れるとか言おうとしたでしょ。そんなのダメだから」
 フェリーチェ様が焦っている姿なんて初めて見た。実際もこんな感じだったのかな? それともこれは誇張してる?

「しかし……」
「私は結婚してあげたなんて思ってない。好きだから結婚した」
「そうなのか?」
「そうに決まってるだろ? 私のことなんだと思ってるんだ」
 ちょっと拗ねたように口を尖らせるフェリーチェ様が可愛い。

「俺だけが幸せだと思っていた」
「何言ってんだ、私だって幸せだ」
「フェリーチェ、愛してる」
「私も愛してるよ。そんな不安だったなんて知らなかった、ごめん。ちゃんと愛してる」
 二人は抱き合って、唇が重なり……
 ちょっと! 濃厚なキスシーンをクロノス様やシルがいるところで見せないでください。

 慌ててクロノス様たちが座っていた席を見ると、二人はいなかった。クロノス様とシルはアクロバティックなダンスは楽しかったみたいだけど、劇はよく分からなかったようで、二人でパンと一緒に庭で遊んでいた。
 ホッ。
 フェリーチェ様、クロノス様とシルが見てないと分かってそんな濃厚なキスシーン見せてるんですか? 僕たちだって目のやり場に困るからやめてください。

 護衛騎士の皆さんも、これは見てもいいシーンなのか迷っている。
 ロランドとルキオは二人して真っ赤になって俯いているし。ピグロはお菓子を食べながら欠伸をしている。ピグロは劇の部分はほとんど見ていなかったんだろう。
 リーノだけは食い入るように見ている。
 他人のキスシーンをそんなに凝視できるリーノって真面目だよね。いや、これは真面目なのか? 僕はよく分からなくなった。

 いずれにしても、今回はクロノス様がいるせいか、三時間ほどで終わった。
 長いけど、前編後編と二部構成になっているわけでもなく、半分は歌とダンスだったからなんとか見ていられた。

 僕はゆっくりお茶でも飲もう。
「ふわぁ~、俺はお昼寝しようかなー」
「ピグロねるの? おとななのにおひるねするの?」
 クロノス様、ピグロのこと好きすぎじゃない?
 ピグロとクロノス様は、シルとリーノも一緒にお昼寝するらしい。

「ピグロ殿、後でお話をさせていただいても?」
「うん、いいよー、あ、えっと、いいでござす?」
 ピグロは護衛の人に声をかけられ、いつものように返事をしたけど、リーノに睨まれて慌てて言い直した。
 めちゃくちゃな言葉だったけど、頑張ってることは分かった。
 ピグロ、僕は応援するよ。

 
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