僕の過保護な旦那様

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二章

366.ピグロのこととラルフ様の登場

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 お昼寝中は、リーノや護衛の皆さんにベッドの周りを囲まれていたそうだ。
 そんなところで眠れるなんてピグロってやっぱり凄い。僕だったら気になって絶対に眠れない。リーノもそんなところでは眠れなさそうだよね。

「シル、あそぼ」
 お昼寝をして全回復したクロノス様はシルを誘った。
 クロノス様は小さいのに、さっき護衛騎士がピグロの話があると言ったのを聞いていて、気を遣っているのかもしれない。
 シルのお母さんはもう会えないけど、クロノス様のお母さんは生きているんだから、どうにか会わせてあげたい。僕が何をできるわけでもないけど、神様に祈っておくね。

 護衛の一部はシルとクロノス様についていった。
 リーノはピグロの監視役だから側にいる。今日はメテオリティス様やクロノス様が来るってことで、ピグロの腰縄は解かれているし、リーノとしてはしっかり見ておかないと心配なんだろう。先日騎士に連行されたこともしばらく引き摺っていたし。

 僕も先日のことがあるからまだ騎士を信用しているわけじゃない。僕も同席させてもらいます!
 僕はメテオリティス様の友人だ。それが抑止力になるかもしれない。やりたくはないけど、民衆を味方につけることができるほどの知名度もある。
 武力はなくても、みんなを守るためなら権力だって使うんだ。ロランドみたいに格好よく決められないかもしれないけど、僕はみんなを守りたい。

 シュッ
 一瞬風が吹いて、そこにラルフ様が瞬間移動で現れた。
 本当にそう見えるくらい一瞬で現れた。扉が開いた気配はなかったし、どうやって入ってきたの?
 そしてサッと僕が座っていた席に座って、僕はラルフ様の膝の上だ。
 後でどこに行っていて、どうやって入ってきたのか聞こう。

 ピグロに話を聞きたいと残ったのは三名。クロノス様の護衛をまとめるリーダーみたいな人と、あと二人だ。
「ピグロ殿、どうやってクロノス様の心を開いたのですか?」
「そう言われてもねー、あ、そう言われましても、えっと……」
 リーノの監視の下、ピグロは言葉遣いを直そうと頑張っている。寝起きで思わずいつもの口調が出ちゃったんだね。

「どんなことでも構いません、教えていただけませんか? 例えば何かを一緒にしたとか……」
「庭で遊んだ、です。それと、お菓子を食べた。話をした、です」
 ピグロ、偉いよ。変な言葉遣いだけど、努力は僕が認める。

 ピグロの言葉に護衛の三人は考え込んでいる。急に訪れる静かな時間。
 ピグロは特別なことなんてしてない。ただ普通にクロノス様と遊んで、そしてクロノス様の気持ちに寄り添っただけだ。

「私も発言してもよろしいですか? 私もずっとではないですが一緒におりました」
 リーノが少し緊張した様子で沈黙を破った。
 リーダーらしき人が許可を出すと、リーノは「あくまで近くで見ていた私の考えですが……」と前置きして話し始めた。

 ピグロは硬い言葉を使わないから子どもに親しみを持たれること、子どもがやりたいと言ったことを「じゃあやろう」と否定せずに自分も楽しむこと、子どもの意見に「その気持ち分かる」と共感を伝えること、不安な時は大人になって守ろうとすることを挙げた。
 リーノすごいよ。ちゃんと分析しながら見てたんだね。

 ピグロは突拍子もない行動に出たりするから、その対策としていつも観察して分析していたのかもしれない。リーノの頑張りが役に立ってる。

「なるほど。先ほど厩舎で遊んでいる時も見ておりましたが、確かにそのような行動をとっておられましたね」
 感心したようにリーダーが告げると、ピグロは自分のことなのに「へぇー、そうなんだ」と驚いていた。

 ピグロはそれを計算でなく無意識にやっているから、自分では気づいていなかったんだろう。同じようにしても、誰もが上手くいくとは限らない。でも、何もしないよりはいい。
 寄り添ってくれる人のことを、子どもはどうやって見分けているのか分からないけど、案外ちゃんと見ているものだ。

「ピグロ殿、何か気をつける点はありますか?」
「気をつける点? うーん……無い」
 ピグロらしい。何も気をつけていないから騎士に連行されたんだけどね。

「大人と同じだ。子どもも理不尽は嫌がる。痛いことや苦しいことも嫌がる。理由もなくやれと言われたら嫌がる。嫌なことをする奴は嫌われるし、怖い奴も嫌われる。力は弱いし知らないことも多いが、彼も小さいなりに考えている」
 今までずっと黙ってたのに、ラルフ様が口を開いた。
 ラルフ様はシルを引き取ると決めた時に、シルと接してそう思ったんだろうか?
 僕はただ元気に育ってくれればいいと思っていたけど、ラルフ様は色々考えていたんですね。

 僕はちょっと感動していた。
 護衛の皆さんも納得してくれて、僕たちにきっちり頭を下げてクロノス様たちのところに走って行った。

「肩凝るー」
「まだまだ合格点はあげられませんが、努力は認めます。ピグロ、よく頑張りましたね」
 リーノが立ち上がってピグロの肩を揉んでいる。ピグロ、よかったね。

「ところでラルフ様、どこに行ってたんですか?」
「見回りだ。賊が入り込まぬよう、みんなで離宮の内と外をしっかりと見回っていた」
 堂々と言ったけど、みんながリヴェラーニ夫夫の劇から逃げたこと知ってるんですからね。

 遠くに行ったとは思っていなかったけど、離宮の内と外を見回ってたのか。
 内と外…………外は分かるよ。内って、もしかして僕が逃げないよう見張ってたってことある?
 いや、そんなことはない。きっとない。何してたのか知れたんだから深く追求しなくてもいい。

「そうですか。ところでさっき、瞬間移動しましたか?」
「マティアス何を言っている? そんなこと人間には不可能だ。だが素早い移動は引き続き鍛えていくつもりだ」
「扉が開いたようには見えませんでした。どこから入ってきたんですか?」
「窓だ」
 窓? 僕は明かりが入ってくる窓を見た。この部屋の窓は一つ。太陽光を和らげてくれるレースのカーテンが靡いている。風があるということは窓が開いているんだろうけど……

「ここ、二階ですよね?」
「それがどうした? 櫓の外壁を登るのは少し大変だが、二階程度であればすぐだ」
 そっか。
 思わず納得しそうになって、僕は首を振った。

「部屋には扉から入ってください」
「分かった」
 ラルフ様は瞬間移動は人間にはできないって言ったけど、二階の窓まで登って部屋に入るなんて普通の人間はできません。櫓の外壁を登るなんてとんでもない。
 そこ、分かってますか?

「マティアス、ありがとう」
 え? 何のこと? 唐突に言われ僕はラルフ様を見つめた。僕には全然分からないけど、ラルフ様はなぜか満足そうにしている。

 
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