【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

cyan

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1.身代わり生活の始まり

2.

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 神殿に行った数日後の空が真っ青に晴れた日、僕は旅立った。天気の影響で、少しだけ出発が遅れたんだ。
 馬車に王子様と一緒に乗せられて、御者はたぬき人族の無口なおじいちゃんだった。

 周りを護衛が囲んでの移動。正直、王子様と話す話題なんてない。王子様はずっと不機嫌で、僕とは目も合わせてくれない。きっと平民の僕と同じ馬車に乗るのが嫌なんだろう。

 こんな状態で従者なんて務まるんだろうか? 不安はあるけど、一年間しっかり勉強してきた。これから先の人生は長いんだから、僕は王子様のよき理解者になって彼を支えていくんだ。

 しかし途中で問題が起きた。
 王子様が、「こんな服は動きにくいから嫌だ」と我儘を言い出したんだ。そんなこと言われても困る。僕は平民で王族に逆らうことなんてできないんだ。
 動きにくくても、激しい運動をするわけじゃないんだから、どうか我慢してほしい。

「おい、この服着てみろよ、肩はガチガチに固まって腕も上がらないし、こんな動きを制限されるような服で馬車に乗る気持ちをお前も味わえ」
 半ば無理やり王子様の服を着せられ、「確かにこれは窮屈で苦しいですね」と言ったら、やっと落ち着いてくれた。
 今王子様はラフな生成りのシャツに、剣術の訓練でもするかのような茶色の少しよれたパンツを履いている。

「それを何時間も着たまま馬車に乗ってみろ」
「はい」
 王子様の命令だから聞くしかなかった。
 僕はさっきまで王子様が着ていた、綺麗な飾りがたくさんついた、豪華な服を着て馬車に揺られている。
 年齢が近いせいか、サイズも違和感がなく、宝石がついた重い靴まで履かされた。

 王子様のいうとおり、こんな格好で馬車に長時間揺られるのはかなり辛い。
 国内を移動する三日間は何とか窮屈な服で耐えていたけど、王子様もとうとう限界がきたんだろう。気持ちは分かる。

 国境を越えて小さな村をいくつか通り過ぎ、最初の街に入ると、仰々しい帝国軍に囲まれた。お迎えってことらしい。

「王子だけ引き渡せ。あとは国に帰っていい」

 僕は帰れるのか。色々と勉強してきたけど、残念ながら活かす機会はなかった。これから先、王子様は一人で大丈夫だろうか、一人は心細いと思うけど、国のために頑張ってください。
 ──そう思ったのに、「このお方が王子殿下です!」と王子様が僕を前に出した。

 違う、僕は……
 何が起きているのか全然分からない。だって僕は王子様じゃない。唖然としたまま王子様を見ると、僕にしか分からないように口元が僅かに弧を描いた。
 そして耳元で囁かれた。
「お前は生贄だ。俺の代わりをちゃんと務めろよ。このために平民を従者にしたんだ」

 僕は声も出せなかった。
 そんなのすぐバレるよ……

「我々は国に帰ります」
 あっさりと王子様は護衛を引き連れて帰っていった。もしかしてあの護衛たちって、平民の中から選ばれた人じゃなくて、初めからこの計画に組み込まれた王子様を無事に国まで連れ帰るための精鋭の人たち?
 平民が一年くらい訓練したからって、王族の護衛なんてできるわけなかったんだ。

 
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