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3.静かに過ぎる日常
26.
しおりを挟む僕は国の経理部署にも連れて行ってもらった。帝国の人は計算が苦手なのだそうだ。理由は分からない。
だからこの前渡された書類も間違いが多かったんだね。僕でも役に立つかな?
皇帝を見上げると、ふんっと鼻で笑って大きな手で頭を撫でられた。力が強いから、首がもげるかと思った……
大抵は皇帝の部屋で計算をするんだけど、たまに軍に書類を届けたり、経理に書類を届けたりする。先日、皇帝から城の中ならどこへ行ってもいいと許可が出たから、僕は結構自由に動き回れる。
てっきり僕は皇帝の部屋に閉じ込められるのだと思っていた。エデラーさんが国花を見にいこうと誘ってくれて、勝手に出ていいのかと迷いながら一緒に庭園に行った日のことだ。
勝手に庭園に行ったことが皇帝にバレて怒られるかと思ったら、これからは自由に動いていいなんて言われたんだ。
毎日のお風呂はやっぱり苦手だ。また今日もお風呂に入らなければならないと思うと憂鬱になる。僕は体を洗って、皇帝の体も洗うと、ザブンと湯に浸かってすぐに出る。「早いのが好き」なんておかしな言い訳をしたのに、皇帝は怒らなかった。それどころか、僕がすぐにあがるのを許してくれる。
「今日も早いな。湯が嫌いなら逃げてもいいんだぞ」
「え?」
逃げてもいいなんて言われると困る。肯定も否定もできない。じゃあ逃げますなんて言ったら怒りそうだし、また早いのが好きって言ってみる?
逃げていいなら逃げたいですって言っていいんだろうか?
それはさすがにダメだよね……
僕は「逃げません」とだけ言って、チラッと皇帝の様子を窺ったら、皇帝は笑っていた。
僕にとっては全然面白くなかったけど、皇帝は面白かったの?
全然分からない。
どうやったら皇帝の機嫌を損ねないで過ごせるかをずっと考えているのに、喜ぶ基準が全然分からない。
お風呂から出てベッドに入ると、僕は皇帝の抱き枕になる。
皇帝に抱きしめられて眠るのはだいぶ慣れた。初めの頃はいつまた犯されるのかと怖かったけど、皇帝は初日以降はそんな素振りを見せない。
お風呂に入った時にも、お尻の中まで洗ったりしない。たぶんどこかで発散しているんだろう。
僕もたまに発散することがある。これは男だから仕方ないんだ。いつもトイレでこっそりするけど、バレてないよね?
「なんだアル、俺の胸筋が好きなのか?」
「え?」
僕はベッドに寝そべって、皇帝の胸筋を両手で交互にムニムニ押していた。完全に無意識だった。なんか分かんないけど、感触が気持ちよかったんだ。
「ごめんなさい。感触が気持ちよかったから……」
「そうか。好きにしていいぞ」
今日も皇帝は笑顔を浮かべて機嫌がいい。最近気づいたことがある。牙がチラッと見えるのは、威嚇しているわけじゃなくて、機嫌がいい時だ。
こんな失礼なことをしても怒らないのはなぜだろう?
皇帝も気持ちよかったのかな?
「アル、軍の仕事を増やしてもいいか?」
「はい」
「先日、とうとうやりやがった。桁を間違えて物資を送った奴らがいたんだ。そのせいで計算が狂ったらしい」
「分かりました、明日は軍に行きます」
桁を間違えたなんて大変なことだ。少なければ追加で送ればいいけど、大量に送ったのであれば、その後の計算が難しくなるのも分かる。僕にできるかな?
軍の会計の人たちとも相談しながらやってみよう。
ここに来たばかりの頃は、いつ殺されるのかと怯えていたけど、最近は結構充実した日々を過ごしている。毎日仕事をして、仕事をするとみんなが喜んでくれる。
皇帝も軍の仕事なんて重要な仕事で頼ってくれる。それが僕はとても嬉しい。
冷たくて適度な弾力がある皇帝の抱き枕になるのも、最近は心地よくて好きだ。冷たい感触が気持ちよくてぐっすり眠れる気がする。
母さん、みんな、心配しなくても僕は楽しく過ごしてるよ。
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