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5.訪れる変化
40.
しおりを挟む続々と運ばれてくる小型の魔獣を数えていると、背中がゾクッとした。
「陛下……」
僕は怖くなって皇帝のところに走った。
「どうした?」
「何か来る……気がします」
「分かった。迎撃体制を整えるから安心しろ」
そう言われたけど、すごく怖くて血の気が引いていく。姿は見えないのに、なぜこんなに嫌な感じがするんだろう?
皇帝はすぐに残っている人たちを集めて敵を迎え撃つ準備をしてくれた。僕の周りは皇帝の他に三人の屈強な人が囲んでくれている。僕では持ち上げることもできないような大きな盾を持った人たちだ。
「うっ……」
急に訪れた空気の重さに足元がふらつく。まるで上から押さえつけられているみたいに重く、呼吸もしにくい。
「来たぞ! 構えろ!」
囲まれた隙間から空に向かって狼煙があがっているのが見えて、その先の上空には魔獣がいた。大きな獅子の体を持つ鳥?
まさか空を飛んでくるなんて思わなかった。あんなのどうやって倒すんだろう?
「なんでこんなところにグリフォンがいるんだよ!」
「持ちこたえろ! 狼煙はあげた。すぐに援軍は来る!」
皇帝は僕を背に隠して、大きな剣を構えている。近づいてくるとその大きさに驚いた。馬より大きくて荷馬車に乗せられるようなサイズじゃない。
グリフォンと呼ばれた魔獣が、ギシャーっと大きな咆哮をあげて翼をバタバタすると、羽根みたいなのがたくさん飛んできた。
「大楯! アルを守れ!」
僕の前に盾を持った人が出て、飛んでくる羽根から僕を守ってくれた。
ガキン、ガキンッと盾に何かがぶつかる音がして空気が震える。あんな音、とても羽根が当たった音とは思えない。魔獣の攻撃だったのかもしれない。
僕のことは盾を持った人が守ってくれたけど、皇帝は?
盾から出ようとしたら、「出てはいけません」と止められて出られなかった。
大きな盾のせいで皇帝や他の人がどうなったのか見えない。
わー! と大勢の声が聞こえて、援軍が来たことが分かった。
これで大丈夫なんだよね?
「陛下が押さえているうちに連続攻撃をしろ!」
押さえている? もう僕のところに攻撃が飛んでくることはないのか、盾から出ようとしても止められることはなかった。
怖かったから顔半分だけ出してチラッと見てみると、皇帝の手から黒い網のようなものが出ていて、魔獣が網に絡められて地面に押し付けられていた。そこに大勢の人が攻撃を仕掛けている。
もしかしてあれは闇の魔力?
いつも見かける黒い靄は、向こうが薄っすら透けて見える煙みたいなものだけど、あの黒い網ははっきりと形を作っている。僕は戦えるわけじゃないし、邪魔してはいけないと、盾の人の後ろに隠れて戦いが終わるのを待つことにした。
ギャアーっと魔獣が叫ぶ声がずっと聞こえていたけど、とうとうその声が聞こえなくなって、みんなの歓声があがった。魔獣は無事倒せたみたいだ。
「陛下!」
誰かの焦った声が聞こえて、僕は飛び出した。皇帝と思われる人が魔獣の隣に倒れていて、黒いものが体を隠すように上に覆い被さっている。あれはいけないやつだ。靄みたいに僕が払えるかは分からないけど、僕がなんとかしなきゃいけないと思った。
みんなが近づけないでいるところに駆け寄って、必死に黒いのを引き剥がしていく。
土嚢みたいに重くて、剥がすのも大変だったけど、このままにしてはいけないことは分かった。
「陛下、死なないで!」
「アル……俺は大丈夫……だ」
全然大丈夫じゃない。皇帝のこんなに弱々しい声は聞いたことがない。なんでみんなが手伝ってくれないのかは分からないけど、僕一人でもこの黒いのは全部引き剥がしてやる。
皇帝が死んでしまうのではないかと怖くて視界が滲むけど、僕は皇帝が助かることを信じて必死に黒いのを引き剥がしていった。
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