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6.打ち明けるとき(グレオン視点)
48.
しおりを挟む翌日になると俺たちの関係に小さな変化が訪れた。
「グレオン様、僕は勉強の時間を増やしたいです」
「そうか、エデラーに言っておこう。あいつなら喜んで飛んでくるだろう」
「勉強の間は部屋から出ないと約束します。ですから、会議や軍議に参加するのを僕は遠慮したいです」
「は? なぜだ!」
アルに向けて殺気を放つ者や、よくない感情を持つ者がいるのは分かっていた。その都度対応してきたつもりだったが、それでは足りなかったということか?
俺の力不足か? 俺ではアルを守れないとでもいうのか?
「僕が隣にいると、グレオン様は会議に集中できないでしょう?」
そんなことをアルに指摘されるとは思ってもみなかった。アルを守ることを優先し、会議よりアルに気を配っていたことは認める。だがそれが何だと言うんだ。
「僕のせいでおかしな噂も立ちました」
「そんなものは言いたい奴に言わせておけばいいだろ?」
「僕はグレオン様の足を引っ張りたくないのです。ご理解ください」
いつも俺に従い、肯定の返事しかしないアルが引かなかった。
分かっている。アルの判断は間違っていない。全て俺のためだということも分かる。
「分かった。部屋から出る時は必ず俺と一緒だと約束しろ」
「はい。約束します」
アルは何でも俺の言いなりになるわけではないんだな。
それなら俺に抱かれたことも、俺が求めたから仕方なく応じたわけではないと思っていいのか?
俺は俺のやり方でいこう。アルが言いかけて言わなかったことも気になる。
いつからエルヴァニアの王家に光魔法が発現しなくなったのかを調べることにした。
エルヴァニアにそんな問い合わせをしても答えてはくれないだろう。過去の皇帝の手記や国の伝記から調べることにした。祖父の代で迎えた王女は効果が出なかったのは確実だ。遡っていくことにした。
天気が鍵となっている気がする。
だがアルは光魔法の適性があるから天気に与える影響も大きいとして、光魔法の適性はないが光魔法を浴びたという王家の者の効果はどうだろう。
正直、俺はその辺りは怪しいと思っている。光魔法を浴びただけで効果など本当にあるのか?
祖父の代から遡っていくと、その前に迎えたのも王女だということが分かった。
彼女はほとんど口を開かず、いつも雨が降る窓の外を眺めていたそうだ。当時の皇帝が形だけの結婚をしたが子はできず、側妃との間に子を儲けた。
雨が降る窓の外か……
光魔法の適性がないことは明らかだが、光魔法を浴びたのに効果がなかったのか、光魔法を浴びてすらいないのかは分からない。
その前は王子を迎えていた。燃えるような真っ赤な瞳と目が覚めるような鮮やかな青いの瞳の少し気の強い王子も当時の皇帝が妃としたが、子はできなかった。
ん? 子はできなかったとはなんだ?
王子ということは男で、男なのに子ができるのか?
真っ赤な瞳と鮮やかな青い瞳というのも少し気になった。アルは薄いピンクと薄い水色の瞳だ。それほど濃い色の瞳ではない。例の皇帝に寵愛されたフランなんとかという王子も水色とピンクの瞳だったと書いてあった。だが、それは個人差があるのかもしれない。
この王子を迎えた当時も日照り不足で麦の収穫が落ち込み、他国から多く輸入したせいで国庫金がかなり減っている。
ということはこの王子も光の適性は持っていなかったんだろう。この王子もよく窓の外を見ていたのだとか。
アルは日向ぼっこが好きだし、猫はきっと外の景色が好きなんだろう。明日は雨が降らなければバルコニーでアルと一緒にまた日向ぼっこをしよう。きっとまた眠ってしまうんだろうが、アルと一緒に昼寝をするのも至福の時間だ。
今日はこんなところにしておくか。
あまり部屋を空けたくない。アルが勝手に部屋から出ることはないが、それはアルを閉じ込めているということだ。俺は読み終えた手記を棚に戻し、禁書庫を後にした。
「アル」
「グレオン様、おかえりなさい」
アルはエデラーと共に俺を迎えてくれた。エデラーを帰し、今日どんなことを勉強したのか聞いてみる。ソファの隣にアルを座らせ、柔らかい手をプニプニと堪能しながら話をする。
近頃は、毎日こんな会話が繰り返され、それがとても楽しい。
ずっと隣に置いておけば安心できるが、部屋で迎えてくれるアルを毎日見られるのも、今日何をしたのかを話すことも、離れているからできることだ。
一人で歩いていれば、アルに向けられる視線を気にすることもない。
ずっと気を張っていることもなくなり、会議もスムーズに行われるようになった。
「アル、今日も抱いていいか?」
「はい」
本当は毎日でも抱きたいが、アルの小さく華奢な体に負担はかけたくない。
いいんだ。俺はアルを抱きしめて眠るだけで幸せだ。
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