【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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8.アルフレート(グレオン視点)

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 アルが会議や軍議に出なくなったため、俺は一人の時間が増えた。エルヴァニアの王家に光魔法の適性者が発現しなくなった時期を調べていると、どうやら二百年前辺りから送られてくる王族が怪しくなってきた。
 前回調べた鮮やかな赤と青の瞳の、子ができなかったという王子の前も、王子を迎えていた。ちょうど二百年前だ。彼も鮮やかな真っ赤な瞳と、真っ青な瞳だったそうだ。

 当時の皇帝は既に結婚して子もいたため、その王子は侯爵家の娘と結婚させた。皇室所有の屋敷を与えたが、こんなところには住めないと言われ城を建てる計画をした。しかし魔獣討伐に参加中に不慮の事故により死去。闇魔法の残骸に触れて倒れたまま、息を引き取ったそうだ。
 このことから光魔法の適性が無いことが分かる。

 アルは闇魔法の残骸に触れても特に体に影響はなかった。それどころか俺の体の中に溜まった闇の魔力まで吸い取るように消し去ってくれた。俺が闇に支配されずに済んでいるのはアルのおかげと言える。
 これからも大切にしよう。

 その前に送られてきたのは王女だった。彼女の目は薄い水色とピンクの瞳で、ほとんど言葉を発することなく、いつも窓の外を眺めていたそうだ。彼女は王族だが、王の兄の娘で光魔法の適性はないと記載されている。
 だが国の伝記によると、彼女が国に来てしばらくすると天候は回復し、実り豊かな年が続いている。

 ふむ、光魔法の適性がなくても光魔法を浴びていれば効果があるというのも、間違いではないのかもしれない。
 兄の娘か……エルヴァニアでは生まれ順で王が決まるわけではないんだな。もしくは兄が王位を退いて弟が王位に就いたのか。息子ではなく弟? 何かが引っかかった。
 とりあえず、二百五十年前に我が国に送られた王女はケットシーの血族で、光魔法を浴びていたことは確かなようだ。

 それ以前を調べてみると、天候の面では光魔法の効果が出ているように思う。
 そしてとうとう見つけた。王子を妃にした皇帝の手記の中に書かれた一文。

『ケットシーの血族は男でも子を宿すことができるというのは本当だった』

 男なのに子を宿すなどにわかには信じられない。ということはアルは俺の子を宿すことができるということか?
 アルとの子……想像しただけで、気分が高揚してきた。

「陛下、少々問題が発生しております」
 気分よく部屋に戻る途中、兵に声をかけられた。今俺は気分がいいからな。聞いてやってもいい。
 そんな思いで兵と一緒に軍部へ行くと、少々の問題と言われた内容は深刻なものだった。

「は? エルヴァニアに駐屯する我が軍への食糧の供給が途絶えた?」
「はい。どうも天候不良の影響で出せないとか」
「過去にそんなことはあったか?」
「軍の記録では過去にそのようなことは一度もありませんでした」

 すぐにでも軍を引き上げたいところだが、アルの故郷だから迷うところだ。天候不良なら仕方ないとも言えるが、改善する見込みがあるのかだけでも調べなければならない。

「すぐに現地へ調査隊を派遣しろ。兵たちの食糧も持っていけ」
 我が国も穀物や野菜は十分とは言えない。日照り不足は解消されてきたが、まだ収穫までには時間がかかる。
 先日、国の各地で魔獣狩りを行ったため肉なら十分に用意できる。塩漬けや干し肉にして送るか。
 俺は食肉の加工を手配し、調査隊の選定を行うと、疲労感を引きずりながら部屋へ戻った。

「グレオン様、おかえりなさい」
「アル、ただいま」
 部屋でアルが迎えてくれるだけで、重い体が癒やされていくようだ。

 夕食の前に部屋に届いた書類や文を確認しておくか。
 緊急の知らせがあるかもしれないと思い文の束を確認していくと、エルヴァニアの王からの文を見つけた。
 盟約があるとはいえ、エルヴァニア王家とはそれほど交流がない。珍しいと思ったが食糧の供給が途絶えたと報告を受けたばかりだ。内容は想像がつく。

 穀物は輸出してやれるほどの余裕はないが、肉の加工品であれば多少送ることができる。そう思って開いてみたが、『帝国では緑色の宝石が採掘されていると聞いたから、いくつか融通してほしい』という内容だった。

 宝石? 正直意味が分からなかった。
 確かに我が国の鉱山では深い緑の美しい宝石が採掘されている。他にも赤や青、透明なものもあるが、緑は他国では珍しく高値で取引されている。
 俺は手紙の返事は保留とした。軍への食糧の供給が途絶えたというのは何かの手違いがあっただけで、食糧不足などないのかもしれない。調査隊からの報告を確認してから判断することにした。

 しかし八本足の馬の魔獣スレイプニルを飛ばして調査隊からもたらされた報告は、食糧不足は深刻で飢餓が起きているとか。

「グレオン様、少しよろしいかな?」
「エデラーどうした? アルのことか?」
「アル様のことというよりはエルヴァニアのことです」
 エデラーも情報は掴んでいるだろうと思っていたが、やはり深刻なようだ。珍しく顔から笑みが消えており、話を聞くことにした。

 エデラーの話はエルヴァニアの各地で飢餓が発生していること、それを知ったアルが心を痛めているとのことだった。普通はそうだよな、アルの反応は正しい。
 俺はエデラーに王から宝石が欲しいと文が届いた話をした。

「アル様は王族にしては平民に心が寄り添いすぎている気がします。王が平民に生ませた子なのでは?」
「エデラー、アルの出自を調べられるか? それと……」
 俺はアルのこと、そしてエルヴァニアの歴史の調査をエデラーに依頼した。

 
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