【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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8.アルフレート(グレオン視点)

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「アル、エルヴァニアのことが気になるか?」
「はい。気になります」
「王から文が届いた」
 そう伝えると、アルは明らかに動揺を見せた。何かを隠していることは分かっていたが、この怯えようはまさか王から酷い扱いを受けていたのか?

「文にはなんと?」
「宝石を融通してほしいと書かれていた」
「宝石……穀物などではなく?」

 先程まで怯えた様子を見せていたのに、今は意味が分からないといった様子で首を傾げている。
 そうだよな。国の各地で飢餓が発生しているのに宝石が欲しいなど理解できないよな。

 そんな話をした数日後、軍部で会議をしているときに緊急事態だと文官が駆け込んできた。

「アルバン・エルヴァニアを名乗る者が訪ねてきております。エルヴァニアの王家の紋章が入った馬車で来ております」
「は? アルは俺の部屋にいるぞ」
「真意は分かりかねますが、自分が本物のアルバンであり、彼は偽物だと言っておりまして……」

 とにかく王家の馬車で来たということなら会うだけ会ってみようと思った。アルに会いに来た兄弟という可能性が高いだろう。
 そう思い俺はアルを着替えさせ、共に謁見室へ向かった。

 目の前には膝をつき頭を下げる猫がいる。アルを迎えた日のことを思いだした。酷く怯えた様子で、俺を見上げた弱々しい存在。頭を下げていると似ているとも言える。髪は銀ではなく白に近いか。
 顔を上げさせると似てはいなかった。鮮やかな赤い瞳と真っ青な瞳はアルとは違う。

「皇帝陛下、発言の許可をいただけますか?」
 大人しく俺に従うアルとは違い、俺と近い傲慢な匂いを感じた。

「よかろう、言ってみろ」
「アルフレート、お前の役目は終わりだ。これからは身代わりのお前ではなく、王子である私が皇帝を支えていくから安心しろ」

 アルフレート?
 チラッと隣に立っているアルに視線を向けると、俯いたまま真っ青な顔でカタカタと震えていた。アルが俺に隠していたのはこのことだったか……
 もっと早くにアルの出自を調べるべきだった。身代わりか……

 正直俺はアルが王族かどうかなどどうでもよかった。しかし兵がいる前で『身代わり』という発言をされたのは痛い。
 カタカタと震えて動けそうにないアルの腕を掴んで謁見室から引き上げると、一応アルにも確認してみる。

「アル、あいつが言ったことは本当か?」
「はい」
「分かった、投獄する」
「はい」

 アル、許せ。
 あの傲慢そうな王子をどうにかし、アルを迎える正当な理由を用意し、すぐに迎えに行く。
 エデラーは数日前からエルヴァニアに調査に向かっている。他にアルを任せられる者はいない。身代わりということが明かされた今、牢が一番安全だ。食事も全て俺が確認すればいい。

 アルを牢へ送り、アルバンに興味本位で会いにいった。

「我が国に何をしにきた? 盟約を破り偽りの王子を送り込んだことはどう説明する?」
「あいつは私の準備が整うまでの繋ぎだ。帝国は宝石も肉も食料も豊富だとか。王族である私が皇帝の隣に立つに相応しい」
 俺に相応しいか。それならどれほど相応しいのか確かめさせてもらおうか。

「お前は光魔法が使えるか?」
「そんなものは必要ない。私には高貴なケットシーの血が流れているからな」

 俺の質問は『はい』か『いいえ』で答えられる単純な質問だった。光魔法が必要かどうかは俺が決めることだ。俺は早々にアルバンに見切りをつけた。

 我が国に来た目的が分からない。様子を見るために使用人の部屋を一部屋与えた。アルとは違い、部屋に入れたいと思わなかったんだから仕方ない。

 どうしたものかと考えを巡らせながら部屋で執務を続けていると、ドンドンと品のないノックの音が響き、勝手に扉が開いた。そして許可なく入ってきたのはアルバンだった。
 こいつは本当に王族か? マナーも知らない王族とは呆れる。

「おい、誰が入室の許可をした?」
「私に用意された部屋が間違っているようだ。取り替えてくれ。この部屋はなかなかいいな、この宝石など私に相応しい。私はこの部屋にする」

 こいつは俺の言葉が理解できないのか? 部屋に無遠慮に足を踏み入れ、飾ってあった紫水晶の塊に勝手に触れた。

「俺の部屋に立ち入る許可は出していない。すぐに出ていけ」
「どれ、私が執務を手伝ってやろう」

 こいつは頭の上にでかい耳をつけているのに、耳が聞こえないのかと思うほど会話が成り立たなかった。イライラが募り、体の中を闇の魔力が巡り出す。

「立場を分かってないなら教えてやろうか? お前のことなど俺が一捻りで潰せる。余計なことをしたら捻り潰すぞ!」
「そんな脅しには乗らない。私はエルヴァニアの王子なんだからそんなことできるわけがない。そんなことをすれば獣人たちが敵討ちとして、この国を襲うぞ」

 どこからその自信が出てくるのか、エルヴァニアは自国さえ守れない弱小国家のため我が軍が守ってやっているというのに。

「そうか、それは楽しみだな。俺は戦争が得意だ。盟約など煩わしいと思っていたところだ。お前を殺し、十万の兵を差し向けてエルヴァニアを蹂躙といこうか」
「十万……」
 俺の言葉は一応通じているようだ。血の気が引いた様子でアルバンは後退りをした。

「なんだ? 十万の兵くらい直ぐにでも出立できるぞ。我が国の軍部は五十万の兵を抱えている。獣人の国など俺にとってはどうでもいいんだ」
 死にたくないと喚くアルバンがウザくなって、使用人の部屋に押し込めて扉を闇魔法で固めた。
 こいつは一体何をしに来たんだ?

 
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