【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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8.アルフレート(グレオン視点)

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 エデラーからの報告を待っているが、なかなかエデラーは帰ってこない。アルの出自など直ぐに分かるだろ。国の成り立ちや歴史も一般公開されている図書館で簡単に調べられるはずだ。
 時間が過ぎていく度にイライラが募っていく。

 アルがいないせいで眠りが浅くなった。
 夜中に何度も起き、部屋の中を闇の魔力が漂うようになった。
 よく眠れるというキャンドルを久々に灯し眠ってみたが、これもダメだ。
 朝から鉛を詰め込んだように重い頭と、ズキズキと痛むこめかみ。天候は悪くないというのに、俺の頭の中は晴れる気配がない。

 俺は禁書庫に駆け込んだ。
 ここの空気は少し落ち着く。アル……
 本当の名前はアルフレートと言ったか。アルの柔らかい手に触れたい。あいつさえ来なければ……

 俺の手には『竜に乗った少年』の本が握られていた。部屋から持ってきてしまったらしい。
 久しぶりに開いてみると、アルの空気が少し感じられた。
 最後まで読み切ると、ゆっくり立ち上がり部屋に戻った。

 コンコン
「誰だ」
「エデラーです」
 やっと来たか。アルを牢に入れて五日目、やっとエデラーが戻った。

「これはまた……お部屋で闇魔法でも使いましたか? それでアル様は?」
 エデラーが驚くのも無理はない。部屋の中はもう闇の魔力で霞んでいるほどだ。
 俺はエデラーに本物のアルバンが来てアルフレートを牢に閉じ込めていることを話した。

「それは正解かもしれません」
「それで? 俺を待たせるだけの成果は持ち帰ったんだろうな?」
「ええ、それはもう」

 勿体ぶらずさっさと教えろ、と怒鳴りそうになる気持ちを堪え、空いた部屋に移動した。
 テーブルセットに向き合って座ると、エデラーは一冊の古い本を出した。表紙に文字はない。

「これはなんだ?」
「エルヴァニアの王宮にあった書庫から一冊くすねてまいりました」
 悪びれる様子もなく、他国の王宮から本を勝手に持ち出したなど、エデラーは何をしているのか。くすねたということは許可も取っていないんだろう。

「本の内容は?」
「光魔法の使い方です」
「そうか、アルが喜びそうだな」
 我が国には光魔法の本はなかった。取り寄せられるのなら取り寄せたいと思っていたところだ。
 開いてみると、一部見たことのない文字が羅列され、俺には読み解くことができなかった。博識なエデラーでも読めないらしい。

「光魔法はケットシーの血族にしか適性者が出ないそうです」
「そうか、それで?」
「アル様、アルフレート様でしたか? 彼は間違いなくケットシーの血筋でしょう」
「それがどうした。アルがケットシーの血筋であることなど分かっている」

 俺は特に疑ったこともない。柔らかい手のひら、薄い水色とピンクの瞳、光魔法の適性だけでなく、グリフォンの到来にいち早く気付いた。

「アルフレート様の出自ですが、王家ではありませんでした。田舎の平民の出です。それで探すのに時間がかかってしまいました」
「は?」
「それで影を置いてすぐに帰ってまいりました。詳細は調査中です」

 それで出自を明かす前にアルがケットシーの血筋であるということを伝えたのか。それにしてもケットシーの血筋の者が平民? 降嫁したとしても平民にはならないだろう。
 鉛のように重い頭では、思考がうまく回らない。

「続報を待つ」
「そうですな。アルバンという者に会ってみたいのですがよろしいですか?」
「好きにしろ」

 そうだ、アルバンの目的も確認しなくてはならない。だがあいつは会話ができない。エデラーが何とかできるのであれば、目的を聞き出してもらうか。
 俺とエデラーはその足でアルバンの部屋へ向かった。

「あなたがアルバン様ですかな?」
「そうだ。なんだ? この質素な部屋から豪華な部屋に移動させてくれるのか?」
「それは陛下次第ですね。お聞きしたいのですが、あなたの歳は十八で間違いありませんか?」
「そうだ」
「お父上は? 祖父と曽祖父がいれば年齢を教えていただけますか?」
「父は四十二、祖父は六十で死んだ。曽祖父も同じくらいで死んだ。これで私が王子であることの確認が取れただろ? 他に何か?」
「いえ、ありがとうございます」

 俺にはエデラーがこの男に何を聞きたいのか全く分からなかった。
 だが、今日は会話が成り立ちそうな気がした。エデラーの影からの続報はいつ届くか分からないし聞いてみるか。

「お前が我が国に来た本当の目的はなんだ? 何をしに来た?」
 本当のことを話すよう、少し威圧をかけながら問うてみる。血の気が引いて青白い顔になりながら、アルバンは俺からすぐに目を逸らし、俯きながらぶつぶつと呟いた。

「エルヴァニアは裕福ではなくなった。こんなはずではなかった。帝国は裕福と聞いたから、私にはエルヴァニアより帝国の方が相応しいと思った。本来なら私が来るはずだったんだ。もっともてなせよ」

 睨みつけると口を閉じたため、俺はエデラーを連れて無言で部屋を出た。もちろんしっかりと闇魔法で扉は閉ざしておいた。

 飢餓が起こるほど困窮し、自分だけ逃げたんだな。大した理由もなかった。
 しかしエデラーが難しい顔をしながら隣を歩いているのが気になった。

「さっきの質問の意図はなんだ?」
「アルフレート様を迎える前にお伝えしたと思いますが、ケットシーの血族は寿命が百五十年ほど。ただの猫人族であれば人間と同じで六十年から長くて七十年」
「まさか、今のエルヴァニアの王族はケットシーの血族ではないのか?」
「分かりません。まだ可能性の段階です」

 病気や事故で早くに亡くなった可能性もあるか……
 まさかアルを害しに来たということはないよな?

「アルは俺の手元に置く。アルバンではなくアルフレートの方だ。エデラー、お前も協力しろ」
「畏まりました」

 エルヴァニアのことはどうも信用できん。
 元々盟約には従ってきたが、それ以上の深い交流はなかった。今後も必要以上には関わるまい。宝石が欲しいとかいう王の文も破り捨てた。

 
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