【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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8.アルフレート(グレオン視点)

57.

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「おはようございます、陛下」
「おはよう」
 アルはすぐに天蓋から出ていった。俺も後に続くと、闇の魔力で覆い尽くされ暗かった部屋が明るい。

 魔導灯がついているにもかかわらず、夕暮れの霧深い森に迷い込んでしまったような部屋が、一晩でこんなに晴れやかになるとは。
 頭は軽いし、夜中は一度も起きなかった。夢の内容は覚えていないが、悪夢を見ていないことは確かだ。

「やはりお前がいい。お前がいないと俺は上手く眠ることもできない。部屋の魔力もほとんど消えているな」

 気分よく話しかけたが、以前のようにアルが俺に笑いかけてくれることはなかった。
 アルの力は本当にすごい。それは認めるが、俺はアルの光魔法の力だけあればいいわけではない。やはり牢に閉じ込めたせいだろうか?

「あんなにも劣悪な環境の牢に閉じ込めてすまなかった」
「いえ、当然の対応だと思っております」

 アルはそう言ったが、そんなことはない。我が国の天候が回復したのはアルのおかげだし、アルはもっと欲を出していいんだ。
 エデラーからアルは平民として育ったと聞いた。そのせいで控えめな態度なんだろう。
 欲しいものを聞いても満足していると言って何も欲しがらない。やりたいことを聞いても、俺の役に立ちたいと言うだけだ。

「部屋からは出るな。お前の安全のためだ」
「はい」
 自由にしてやりたいが、今は我慢してくれ。アルが王子でないと知られれば安全の保証ができない。アルバンの謁見の際に見聞きしていた兵たちが何を広めているか分からない。

 不満を俺にぶつけてくるのであれば捻り潰すまでだが、悪意をアルに向けられる可能性がある。
 どこへでも連れ歩きたいが、アルはそれを望まない。
 許せアル……

「エデラー、続報はまだか?」
「まだ影が帰ってきておりません」
「王家の系譜などすぐに辿れるだろう」
「怪しいですな。隠匿されているのかもしれません」
 エデラーの言葉にますますエルヴァニアへの不信感が募っていった。

 早く俺の子を孕めと願いながらアルの中に欲望を吐き出す。禁書庫に通いケットシーの男が孕みやすい時期などがあるのか調べてみたが今のところ有力な情報は得られていない。
 タイミングを逃したくないとアルを毎日抱いた。

 アルバンさえ来なければ、俺とアルは幸せに暮らしていたのに。
 今のアルはどこか壁を感じる。アルを迎えた頃のように俺を恐れて遠慮しているように見える。せっかく距離が近づいているような気がしていたのに。
 俺の代わりに涙を流してくれたあの日、アルの心に触れられそうだと思ったのに……

「あの……アルバン様のことも抱いたんですか?」
「あんな奴、抱く価値もない」
 アルが俺に質問をするなど珍しい。あんな話の通じないような男など頼まれても抱きたくはない。同じ空間にいるだけで闇の魔力が勝手に溢れ出てくる。アルとは真逆だ。
 俺が答えると、アルはホッとした表情を見せた。

「なんだ? 嬉しそうだな」
「そんなことはありません」
「お前、もしかして嫉妬か?」
「そんなこと……」
 アルは戸惑っていたが、少し希望が湧いた。
 まだアルの心は俺から完全に離れたわけではない。

 アルはいつも『竜に乗った少年』を読んでいる。明るい窓辺にアルのために一人がけのソファを置いたら、そこを気に入ってくれたようだ。
 物語を読むのが好きなのかと思い、色々な物語を書庫から持ってきて本棚に並べたが、読んでくれているのかは分からない。いつも部屋に戻ると、アルの手元には『竜に乗った少年』がある。

 そんなに『竜に乗った少年』が好きならと、少し苦い思い出のあの本を貸してやろうと思った。『竜に乗った少年』の続きのような物語はきっとアルも好きだと思う。だがどこへしまい込んだのか見つからない。

 あの本を見つけたのは禁書庫ではなかった。だが書庫を管理する者に聞いてみても首を傾げるだけで所在は分からないままだ。探してもらっているが、本のタイトルも忘れてしまったため、探し出すのは難しいだろう。
 もしかしたら父に見つかって捨てられてしまったのかもしれない。

 エデラーも忙しいようだ。度々顔を出すが、長時間は時間が取れないらしく、少し話をするとすぐに帰ってしまう。

 
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