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9.妃の誕生
60.※
しおりを挟む「グレオン様、大好きです。キスしてください」
皇帝は僕に何をさせたいのかよく分からない。好きだとか愛してるとか、おねだりとかを要求するくせに、いざ僕が口にすると困ったような顔をする。
やっぱり僕ではダメなんだと思う。
この前なんて、上に乗って腰を振れなんて言われて、上手くできなかった。
呆れたように眉尻が下がって怖くなった。だからキスみたいに、練習させてもらうことにしたんだ。
「ほら、自分で挿れられるだろ?」
「んっ……」
皇帝の太くて硬いのを掴んで後ろに当てる。ゆっくり沈み込んでいくのは少し怖い。
「お前を下から眺めるのも悪くない」
僕が上手く動けないと、皇帝は痺れを切らせて勝手に下から突き上げてくる。
「あっ、やだ……まだ、だめ……」
「それなら自分で動いてみろ」
やっぱり僕は上手く動けなくて、皇帝の上で震えていることしかできないんだ。
「ああっ!」
「気持ちいいか?」
「んっ、気持ちいい、気持ちいいけど、もう出ない……」
下手なのは明らかなのに、皇帝はいつも終わると僕の体を拭いて寝巻きを着せてくれる。そしていつもと変わらずに抱きしめて眠ってくれる。
僕はずっと部屋に閉じ込められたままだから、不便ではないけど少し退屈だ。皇帝は窓辺に一人がけのふわふわした柔らかいソファを置いてくれた。僕がよく窓の外を眺めているからだと思う。
そのソファには僕しか座らないから、僕専用みたいだ。なんでそんなことしてくれるんだろう?
今日も皇帝が部屋を出ていくと、僕はソファに乗って膝を抱える。
膝を抱えるならソファになんて座る必要はないんだけど、このソファはふわふわして居心地がいい。窓の外も眺められるし日が当たると暖かい。
『竜に乗った少年』この本は僕のお気に入りで毎日読んでいる。いろんな国に行って、いろんな景色を見るのを想像するのが楽しいんだ。空から見た景色ってどんな感じだろう?
ふわぁ~
眠くなってきちゃったな。暇だし少しだけお昼寝しよう。
少し冷たい手は皇帝のだろうか?
夢の中ならいいよね?
気持ちいいから両手で引き寄せてそっと頬を寄せてみる。大きくて手の甲に鱗が数枚あって、そこだけ少し硬い。
「アルフ、お前は本当に可愛いな。俺はこんなにお前を愛しているのに……」
「嬉しい。僕もです……」
夢の中の皇帝は僕が欲しい言葉をくれる。現実では皇帝が言うはずのない言葉。
「アルフ、起きているのか?」
「ん~」
はっ! 皇帝が帰ってきてる、寝ている場合じゃない!
僕は慌てて姿勢を正した。
「グレオン様、おかえりなさい」
「ただいま」
僕の頬に当てられた手は間違いなくグレオン様の手だけど、さっきの言葉は夢だよね?
そっと手の甲の鱗に触れると、ポロッと一枚落ちてしまった。
「も、申し訳ありません」
鱗が……
「気にするな。生え替わりの時期だったんだろう」
皇帝は一枚落ちた鱗を拾って僕に見せてくれた。
綺麗だ。手の甲にくっ付いているときは分からなかったけど、光にかざすと薄く透明なだけじゃなく虹色に光って見える。
「気に入ったか? お前にやる」
「いいんですか? ありがとう、大切にします」
すごく綺麗だ。生え替わるってことは痛いわけじゃないんだよね?
こんなのが手の甲から生えてくるなんてどういう仕組みなんだろう。不思議だ。
窓辺の一人がけのソファは僕用だから皇帝が座るには少し小さい。
鱗を眺めていた僕は皇帝にひょいっと抱えられてバルコニーに移動した。
晴れた日が多くなるとバルコニーの白いベンチは色が塗り直された。最近皇帝はよく僕を連れてバルコニーで日向ぼっこをする。僕はいつも日向ぼっこのときは皇帝の膝の上だ。
日向ぼっこが好きなところは、僕と皇帝の唯一の共通点だと思う。あ、それと『竜に乗った少年』が好きなところもだ。今日も皇帝は僕の手をフニフニと触りながら日向ぼっこをしている。
「今日もいい天気だ」
「はい」
僕は皇帝の腕の中で、さっきもらった鱗をずっと眺めていた。
「明日は忙しいぞ」
「そうですか」
じゃあまた僕は部屋でずっと一人なんだ……
エデラーさんがきてくれたらいいけど一人は寂しい。
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