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21.決戦の日
「貴族なのだから従者を1人連れて行きなさい。私が用意したから」
「はい」
出発の前日の夜、メレディス様は僕のことを抱きしめて寝てくれた。
翌朝起きるとメレディス様はもういなくて、少し寂しかったけど、僕は大丈夫。
僕が支度をして玄関に行くと、もう従者の人が待っていた。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
「え?」
メレディス様が貸してくれた従者の人に挨拶をして顔を上げたら、メレディス様だった。
「驚いたかい?」
「はい。でもなぜメレディス様がそのような格好を?」
「私がレスターの従者だからだよ」
「いけません。今の僕は平民です。この国の宰相様であるメレディス様がそんなに長い間、国を離れてはダメでしょう?」
「問題ない。私が始めたことだ。顛末を見届けたいと思うのは自然なことだろう?
それにこの日のためにしっかり日程の調整はしてきた」
「分かりました」
「私が一緒じゃ嫌か?」
「そんな風に聞くのは狡いです。僕がメレディス様のこと大好きだって知ってるくせに。嬉しいに決まっています」
「そうか。レスターは可愛いな。私が付いているから大丈夫だからな」
「はい」
これから、父上や兄上を死に追いやった貴族がいる場所に1人で立ち向かうのはやっぱり怖くて、本当はすごく緊張していて、だからメレディス様が付いてきてくれることが心強くて、嬉しくて、僕はちょっぴり涙が出てしまった。
もう何も怖くない。
メレディス様のことは僕がちゃんと守るよ。
僕は、メレディス様から借りる従者のことは何がなんでも守らなければいけないと思って、たくさんの魔法陣を用意していた。
僕は光と氷の魔法は得意だけど、結界は得意じゃない。メレディス様を治療した時みたいに魔力切れで倒れたりしたら大変だから、魔法陣を使うことにした。
「メレディス様、ちょっと失礼しますね」
メレディス様の外套の裾を捲って、内側に魔法陣を二つ貼り付けた。
片方は防御結界で、もう一つは温度調節の魔法陣だ。
長時間の移動や、外気に晒されることを考えて、体調を崩さないように用意したもので、僕の外套の内側にもちゃんと貼ってある。
「魔法陣か。何の魔法陣なんだ?」
「防御結界と温度調節の魔法陣です」
「レスターはそのようなものも用意していたんだな」
「はい。メレディス様が従者の役をされるなんて知りませんでしたが、メレディス様からお借りする人を必ず守り抜かなければならないと思って用意していたんです」
「そうか。ありがとう。さぁ、行こうか」
「はい」
僕たちは乗合馬車で向かった。
他国から豪華な馬車で向かうわけにはいかないから。
乗合馬車に乗っていると、ニコラスを頼ろうと一人で国に帰った時のことや、全てを無くしてこの国に戻ってきた時のことを思い出して少し怖くなった。
そんな僕の気持ちに気づいたメレディス様は他の人に分からないように僕の手を握ってくれた。
そっか。僕はもう独りぼっちじゃないんだ。僕にはメレディス様がいる。
だから大丈夫だ。
街の宿に泊まる時にはメレディス様が抱きしめて寝てくれた。
ちゃんとしたレストランでご飯を食べて、その土地の名物なんかも食べたから、なんだかメレディス様と旅行してるみたいで楽しかった。
きっと緊張している僕のためにメレディス様がそうしてくれたんだと思う。
本当にメレディス様は僕には勿体無いくらい素敵な人だ。
だから僕も頑張ってメレディス様に相応しい人間になるんだ。
王城に行く日、メレディス様は僕に服を着せてくれた。
「メレディス様、そんなことまでしなくていいんですよ」
「いいんだ。私がしたいからしていることだから」
メレディス様にそんな本物の従者みたいなことをさせて申し訳ないと思いつつ、とても嬉しかった。
気合を入れて臨む。
僕は前にメレディス様に教えてもらったように仕事モードのポーカーフェイスで挑んだ。
大勢の貴族を前に堂々と一歩も引かず意見を通すメレディス様を真似て、しっかり自分の足で立って、自分の言葉で真実を公表した。
そのためのお膳立ては全てメレディス様が整えてくれていたから、僕がしたことなんかは大したことないんだけど、それでもメレディス様が整えてくれた最高の舞台で僕は陛下に向き合った。
ニコラスがいることも視界の端に捉えていたけど、僕は知っている。父上や兄上を死に追いやった貴族の中にニコラスの家も入っていることを。
別に死んで欲しいとは思わない。好きだと言ったのが嘘だったのは悲しかったけど、今はメレディス様がいるから。
僕の目的は、誰かに罪を償わせることじゃない。
父上と兄上の名誉を回復して伯爵家を再興し、貴族となりメレディス様の隣に立つことだ。
「私は伯爵家の再興と、父と兄の罪の取消し並びに名誉回復を望みます!」
ちゃんと言えた。よかった。
僕はそのまま陛下の部屋に呼ばれた。
「従者の方は控え室でお待ちください」
そっか。立場を明かしていればそのまま陛下と対面することもできたんだろうけど、それは何もない時の話。今回のように揉めている時に出てきてはいけない。
「大丈夫です。待っていて下さい」
「うん。待ってる」
少し緊張したけど、メレディス様が待ってると言って僕の手を握ってくれたから勇気が出た。
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