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22.王様と僕
しおりを挟む僕はいつもの仕事モードで陛下に向き合った。
「レスター、立派になったな。君の父や兄を思い出す。」
「そうですか。」
「君の父がそのようなことをするような人間でないことは分かっていたんだ。
それでも貴族派の勢いを止めることができなかった。申し訳なかった。
君のバックにはとてつもない人物が付いているんだな。」
「どうでしょうね。」
「いや、別に咎めたいとかそういうことではないんだ。君のことは気になっていた。一度君が王都へ来たのを見たと聞いて、保護に動いてみたんだが見つけられなかった。」
「そうですか。」
「これだけの証拠を提出してくれたんだ。もちろん伯爵家の再興はするし、罪の取消しと国内各所への周知も行う。」
「ありがとうございます。」
メレディス様が色々手を回していてくれたおかげで、すんなりと僕の要望は通った。
「レスター、成人を迎えたら正式にベリッシモ伯爵家の当主としよう。」
「はい。」
「領地や仕事はどうする?学園も退学になってしまったのだろう?」
「領地は要りません。仕事はあります。学園は退学となりましたが、良い教師に恵まれ学園で学ぶ内容以上のことを修得しておりますので学園への復帰はしません。」
「そうか。」
「私は貴族の地位がいただけて、父や兄の名誉を回復できればそれでいいのです。」
「屋敷はどうする?」
「もし家族の形見が残っているのならいただきたいです。」
「領地も王都の屋敷も王家で預かっているから、もちろんそれは許可するが、レスター自身が住む場所はどうするんだ?
屋敷は住める状態ではないし、使用人もいないだろう?」
「成人を迎え、当主となったら私は結婚します。」
「結婚?ファンゴ伯爵家のニコラスとの婚約は取り消しとなったと聞いているが。」
「ファンゴ伯爵家は関係ありません。私は他国に嫁ぎます。」
「そ、そうなのか。」
「嫁いだ後は爵位は返納します。嫁ぐために貴族の地位が必要なだけなので。」
「それはいけない。せっかくベリッシモ家を再興するならどうか爵位はそのまま持っていてほしい。名誉伯爵でもいい。それなら貴族としての肩書はそのままで貴族の義務は発生しない。」
「いえ、私の後を継ぐ者がおりませんので、爵位は返納させて下さい。」
「そうか・・・。決意は固いんだな。分かったそのように取り計らう。」
「ありがとうございます。」
「レスター、必要ないかもしれないが、もし何か困ったことがあればワシを頼れ。」
「ありがとうございます。」
困ったことがあれば・・・。
この人は分からないな。何を目的としてそんなことを言うのか。
父や兄を死なせた罪悪感からなんだろうか。
分からないが簡単には信用できないと思った。
「あ、一つだけ、私の先祖の墓が無くなっていましたが、移動したんでしょうか、それとも捨てられたんでしょうか、母上の墓も、どこかにあるのなら教えて頂きたいのですが。」
「すまない。墓は荒らされてしまってな、それで止むなく墓石を廃棄した。
母君は彼女の兄が引き取って実家の子爵家に眠っていると聞いている。」
「そうですか。教えていただきありがとうございます。」
僕は部屋を出て真っ直ぐにメレディス様のいる控え室に向かった。
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