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35.転送の魔法陣
しおりを挟む荒らされていなかった書庫に有用な魔法陣の本がないか探していたら、随分と古い本が出てきた。ところどころ染みができていて、インクが滲んで読めなかったり、ページが貼り付いてしまっているところもある。
転送の魔法陣。
読めない箇所が多いけど、どうしても作りたいと思った。手紙は届くのに何日もかかるけど、この魔法陣を使えば、すぐに届けられる。
人が入って行き来することはできないけど、それでもメレディス様と今思っていることを伝え合えると思ったら絶対に作りたいと思った。
それに、僕がいなくなってからこの領地にトラブルが起きた時、すぐに何かできることがあるかもしれない。
僕は昼間はステファノやセバスや、土木ギルドの人たちとやり取りをしながら、夜は魔法陣の開発に時間を費やした。
回復の魔法陣を貼っているから、多少の夜更かしは大丈夫。
そして1週間経ってやっと魔法陣は完成した。部屋の端と端で試してみて上手くいったから、たぶん大丈夫。
さっそくメレディス様へ送る手紙に魔法陣も入れて送った。
きっと魔法陣が届けば、この目の前の魔法陣に手紙が送られてくると思う。
今か今かと楽しみに待っていると、4日後に魔法陣の上に手紙が現れた。
僕はすぐに手紙を読んで、メレディス様に返事を書いて転送した。
顔を見ることはできないけど、声を聞くこともできないけど、会話ができることがとても嬉しかった。
最初は手紙みたいに長い文章を送っていたけど、だんだん本当に会話をするように短い文章を何度も何度もやりとりするようになった。
<おやすみさない、大好きなメレディス様>
と送ると、メレディス様から、
<レスター、おやすみ、愛している>
と返事が届く。
さっきまでメレディス様が触れていた紙というだけで、ドキドキして、僕はやり取りした紙の束を抱きしめて寝た。
この魔法陣が完成したことをステファノとセバスに話すと、難しい顔をされた。
「大変素晴らしいのです。素晴らしいことに違いはないのですが、このような技術をベリッシモ家が持っていると分かると危険です。
これは有用すぎるのです。
オルロー国内では特に他言しないようにお気をつけ下さい。そして、この家の中での扱いも私とステファノ様に限定しましょう」
「そうだな。回復や結界の魔法陣も、想像以上に効果が高いようだから、取り扱いには注意しよう」
「そっか。なんか余計なことだったかも。ごめんなさい」
「いえ、レスター様が謝られるようなことは何もございません。正しく使えばとても有用なものです」
「うん。もし、僕がドラータ王国に嫁いでから困ったことが起きたら相談してほしい。役に立てるかは分からないけど、できる限りのことはするよ」
「私たちのためだったんだな。レスター、本当にありがとう」
「ううん。僕は成人前にできることはやったつもりだったけど、やっぱりベリッシモ家を途絶えさせてしまうことが少し悲しいと思っていたから存続してくれるステファノにはとても感謝してるよ。だから僕に協力できることがあればって思ったんだ。ステファノ、ありがとう」
この転送の魔法陣が完成したことで、僕は早く帰れることになった。
陞爵とステファノを養子にする手続きは終わってる。あとは、ステファノに当主を譲る手続きをすれば良いだけだ。
「レスター、もう行ってしまうのか?」
「うん。僕の未来の旦那さんが寂しがってるから。僕も寂しいし」
「そうか。レスターに婚約者がいなかったら、私がレスターの元に嫁ぎたかった」
「ステファノ、ごめん。気持ちは嬉しいけど、僕はメレディス様じゃなきゃダメだから」
「分かっている。それでも、私も家族になったんだから忘れないでほしい」
「そうだね。僕たちは家族だね。たまには遊びに来るよ。手紙も書く。あ、結婚式とかするか分からないけど、する時は呼ぶね」
「あぁ。楽しみにしている」
「レスター様、いつでも気軽にお越し下さい。皆でお待ちしています」
「うん。セバス、ステファノのこと頼んだよ」
「畏まりました」
僕は王都に戻って当主を譲る書類を王城に届けると、ドラータ王国へ向かった。
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