【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

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46.日常

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 メレディス様と僕の婚約披露の夜会の話をしている時に、魔法陣の話が出た。
 陛下と王太子様辺りに使わせることを考えてるとか。
 確かに魔法陣はすごく便利なんだ。
 苦手な魔法でも使えるし。

 僕はすぐにマイストさんを呼んで検証を始めた。
 マイストさんにはメレディス様が陛下や王太子様に使わせようとしていることを話した。
 マイストさんは、陛下や王太子様の家庭教師をしていたこともあるのだとか。
 知らなかった。マイストさんって本当に色々なことを知っていると思っていたけど、王家に雇われるほどの人だったんだ。

「魔法陣の研究者がどこの派閥の息がかかっているか分からないから、信頼できる僕にできることなら対応して欲しいみたいなんだけど」
「そうですね。その気持ちは分かります。その辺の貴族であれば、そこまで気にせずともいいと言えますが、王家となると途中で買収される危険もありますし、レスター様が優秀だから頼っているんでしょうね」
「そっか。じゃあ頑張ってみる」
「えぇ、私もお手伝いしますよ」
「ありがとう」

 実験はとても楽しかった。
 色んな魔法陣を作って、その強度をあげたりして、魔法や剣などの物理攻撃を加えて強度を確認していった。


「魔法や物理攻撃の他には毒とか呪いくらいしか思い浮かばないんだけど、他にも何か攻撃手段はあるかな?」
「だいたいそんなところですね。それだけ対策をしておけば、あとは近衛騎士たちが何とかするでしょう」
「確かに。そうだよね。1人で出歩くわけじゃないし、近衛騎士がいれば外出の時は安全。あとはお城の中にいる時とか、大勢人が集まる夜会とかお茶会とかそんなところかな」
「そうですね」


「レスター様、マイスト様、もうそろそろ休憩されませんか?」
「あ、もうそんな時間か。マイストさん休憩にしようよ」
「えぇ。休憩しましょう」

 僕たちが時間を忘れて研究や検証に没頭していると、ヤコポやゼスト、他の使用人の誰かが時間を見て声をかけてくれる。

 そして今日も庭師のおじいちゃんが綺麗に整えてくれている庭を見ながらお茶と軽食をいただく。
 この生活楽しいな。
 僕は、メレディス様の秘書官の仕事と、この魔法陣の研究を1日交代で行っている。
 マイストさんは引退したおじいちゃんだし、そんなに毎日長時間付き合わせるのは可哀想だから、いい時間配分だと思う。


 そして僕は、鍵をかけて寝た翌日から、メレディス様の部屋で一緒に寝るようになった。

「嫌なら、無理しなくていいんだよ。ただ、私がレスターと少しでも一緒にいたいだけだから」
「僕もメレディス様と一緒にいたいです」
「これからは私の部屋で一緒に寝ないか? 嫌だと、1人で寝たいと思う日があれば、部屋に戻ってもらってもいいんだが……」
「毎日一緒に寝ましょう。僕は嫌だと思う日なんてないけど、メレディス様も1人で寝たい日があったら言ってくださいね。僕は部屋に戻るので」
「そんな日はない」

 そんな日は無いと即答してくれるメレディス様が好き。
 でもメレディス様は僕が鍵をかけて寝たのは、メレディス様が激しく抱いたせいだと思ってるみたいで、いつも優しく抱いてくれるようになった。
 しかも、毎日ではない。
 毎日抱きしめて寝てくれるけど、無理させたくない、嫌われたくないと言って、2日置きか3日置きになった。
 お休みの前日は何度も求めてくれる時もあるけど、余裕がなくなって激しく求めてくることはなくなった。

 僕は、実はそれが少し寂しい。
 魔法陣を変えれば求めてくれるようになるかもしれないけど、それじゃあ意味がない。メレディス様に心から求めて欲しいのに。
 余裕がないって、僕だけに夢中になってくれるメレディス様もたまには見たいのに。

 激情に飲み込まれて重なって溶けて一つになっていくあの感覚が恋しい。


「メレディス様、僕のこと好きですか?」
「好きだよ。大好きだよ。当たり前だろ?」
「うん。嬉しい。僕もメレディス様のことが大好きです」

「来週、婚約披露の夜会があるから、まぁ別に特に準備もないと思うが、あるということだけは覚えておいてほしい」
「はい。ちゃんと覚えていますよ」

 僕は幸せだった。メレディス様を疑うことなんてなかったし、いつもメレディス様は僕のことを大切にしてくれて、抱きしめてキスをして微笑んでくれる。

 この時は、何も心配することなんて無いって、心から思えたんだ。

 
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