俺たちの××

怜悧(サトシ)

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夏休み編

夏祭り side T

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康史が集めた女の子たちは、待ち合わせ場所に既に来ていた。
時間には遅れてはいないのだが、きっと康史のことだから誠士のために、そういうことはしっかりしている子を選んだのだろう。
花火の見える位置に6人連なりながら歩く。

「こんばんわ、長谷川君も来たんだね。日高君と仲良しだけど、あんまり合コンとかこないイメージだったよ」
ポニーテールの女が俺の隣に寄ってきて、もの珍しそうな表情で顔をあげてみてくる。
イメージねェ。
「…………あァ……、こういうのは初めてだ」
俺には春前まで彼女がいたし、康史も俺を誘ったことはない。
だからと言ってイメージどおりと、思われるのも嫌だな。
「そっか。でも、緊張とかしてるようでもないね。よく見ると長谷川君も、背が高いし顔もカッコいいね」
ああ、きっと褒めてくれてるんだろうな。
社交辞令は別にいらないんだけど。
下から見上げて首を傾げる姿は、可愛い部類に入るのだろう。
皆がそれぞれ見やすい位置を確保するのをみて、俺は川べりのフェンスに凭れ掛かり、花火大会の会場である河川敷にちらと視線を走らせる。
康史目当ての女ばっかりは気分が悪いな。
誠士はツインテールの身長が小さめの女の子と仲良くなったらしく、同じくフェンスにもたれて談笑してる。

「喧嘩強いって有名だよね。………喧嘩好きなの?」
「……別に……好きじゃない」
話すこともどうでもよさそうに答えると、ポニーテールの女はむきになったように、一生懸命俺に絡もうとしてくる。
やっぱし、なんかすげー面倒くせえな。
「なんか思ってたのと違うね、もっと俺つえー的な武勇伝とか語っちゃうタイプだと思ったよ」
「…………話すのは、あんま…………苦手だ」
武勇伝とか語れるほど、俺は人と話すのは得意じゃない。
康史と誠士しかダチもいねえし、チームにも入ってないし派閥も作っていない。
「ホント、そうみたいだね。すごい噂がたってるから、気になってたんだ。東高校のりこんで、トップの人たちをやっつけたとか、ヤクザの人を殴り倒したとか。ありえるわけないのに噂ってすごいね」

俺の隣にしっかり陣取って、噂ほどこわくなさそうで安心したと呟いたのを聞いて、確かにそんなことした覚えがある。
「……まあ、そりゃ、事実だけどな……」
「え!」
表情を固まらせた彼女に、それ以上なんとも言えずに、花火の用意をしている人たちの方を眺めて黙った。
「あれ、玲奈ちゃんと仲良くなれたの?トール」
別の子と話していた、康史が割り込んでくる。
「ン……?どうか、わからん」
ぼそりと呟くと、康史はフォローをするように俺の肩をたたく。
「玲奈ちゃん、気にしねえでね。トール、頭の中も筋肉だから」
俺の背中にさりげなく腕を回して腰にまきつけてくる。
「……ひでえな、ちっとは色々考えてるぜ……」
唇を尖らせて文句を言うと、ニヤッと笑い返される。
「何を?」
「……いや……別に何も……考えてねえけど」
何とか聞かれて切り替えせずおたつくと、その様子に玲奈って女はおかしそうに笑う。
「ふふふ、なんか二人漫才みたい。息がピッタリ。2人は幼馴染なんだよね」
「いっつも一緒だったからね。……トールのことなら、何でも知ってる」
康史は自慢げに言って俺のケツをここぞとばかりに撫で回す。
ひゅううっと音がして、振り返ると夜の空に満開の花火が散る。
玲奈という女は俺の横ですごーいと歓声をあげている。
密着した康史はここぞとばかりに俺の腰をぐっと寄せる。
女たちは気づいていないようだが、俺は内心バクバクものだった。
俺の様子に調子に乗ったのか帯の合わせ目から手を内側に差し込んでくる。
「……幼稚園から高校まで、ずっと一緒だ」
なんとか相槌のように言葉を返すと、彼女はうらやましそうな表情になる。
「そうなんだ。すごいねー、そんなに長く続く友達って、私にはいないかも…あ、みて、ナイアガラ」
ざざざっと光の粒が川に向けて流れ落ちる。
光が舞い散るような綺麗な光景に俺は目を細めた。
「トール、ちっとトイレいきたいなあ」
康史は俺の股間を撫でながら、もう片方の腕を引く。
オマエには情緒とかないんだろうか、ヤス。
「え、花火、いいのかよ」
「そっちより、オレの花火が暴発しそう」
耳元でささやかれ、俺は顔までカーッと熱くなる。
「一緒にいってあげて。日高君一人だけじゃ絡まれて帰ってこれなくなりそうだろうから」
玲奈は絡まれやすい康史の体質を知っているのか俺に頼んでくる。
二人でいったらいったで、多分俺が無事じゃねえだろうけども。
「わかった……じゃあ、セージにはそういといて」
俺の花火もいたずらされて、暴発しそうだなあとか考えながら、俺は康史の腕を引いた。
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