俺たちの××

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
56 / 353
二学期編

厄介なDNA →side Y

しおりを挟む
「立ち聞きなんてイケメンのすることじゃないんじゃないの、ヤッちゃん」

屋上の扉前で外を覗き込んでいた俺に、先に戻ってきた波砂は少し怒ったような表情で、オレの肩をパンと叩いた。

波砂はオレの母の妹なので、オレの叔母である。
分かりやすくサザエさんで説明すると、オレがタラちゃんで波砂がワカメちゃんだ。
それが波砂は恥ずかしいのか、絶対黙ってるようにと言うが、オレと波砂の顔のパーツは大きさ以外そっくりである。
まあ、こんだけ似ているし周りにも親戚とはいってはいるのだけど。
「大丈夫、今さら返せとかいわないわ。……トウル、あんたに襲われたのがきっかけとか言ってたけど。本当にそんな卑怯なことしたの?」
半信半疑な顔で聞いてくる。
「……したよ。トールを殴ってスタンガンで気絶させて、縛って無理矢理犯したよ。それくらいの既成事実でもなきゃ、腹くくれないよ」
オレの言葉に驚いて一瞬目を見開いたが、はーっと深々とため息をつかれる。
「ヤッちゃん、アンタ…………ホントに最低ね。あんたもトウルのこと言えないくらい鈍感だよね。トウルはずっとヤッちゃんのこと好きだったよ。付き合ってた時も、よく言ってたよ。ナズはヤスに似てるから一緒にいて安心するって」
少し悔しそうに言う波砂の言葉に自分も同じような気持ちだったことを思い出す。
自分に似た波砂と付き合うなら、まだ仕方が無いかなとか思った。
波砂と結婚したらトールはオレの叔父さんになるのかとか想像したこともあった。

「本当に好きな相手には、いつまでたっても自信とかないもんだ。どうせ叶わないならと思ってオレは思いを遂げた。まさか許してくれるとは思わなかったけど」
「そうね。なんだかんだトウルはヤッちゃんに甘いからな。女子にヒドイ噂流されてるわよ。トウルのこと大事にしてるなら、ちゃんとどうにかしてよね。根回しはしてあげるけど。あんまり酷いことばかりしてたら、またわたしが奪い返すからね」
冗談ぽい口調で憎まれ口を言って、ぽんぽんっと階段を降りていく波砂の背中を見て肩をすくめる。

素直じゃないのは遺伝かもしれないな。
なんだかんだ、波砂はトールを今でも好きなのだ。

女の子たちを丸め込む方法なら、いろいろ知っている。
周りを牽制するのもいいかと思ったけど、波砂のいうとおりだな。

オレは、重い鉄の扉をあけて、フェンスにもたれてだるそうにタバコを吸っている東流に向かって歩き始めた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

処理中です...