俺たちの××

怜悧(サトシ)

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二学期編

アウトすぎるカムアウト →side T

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そりゃそうだろう。

静かになって、俺の様子を伺うような怯えた視線を向けるクラスメートにふっと息を吐き出した。
まあな、男と付き合っているのもまだしも、まさか、周りも俺がヤられるほうとは思ってないだろう。
それと、小西ほどの美少女からそんな下品な言葉がでてきたのが晴天の霹靂ともいえた。

俺は気の強い女は嫌いじゃないけど、他の男はやっぱり優しい可愛い女の子が好きだろうな。
一瞬ざわりとするが、俺をおそれてなのか、みな黙り込み気まずい空気が教室に流れる。

東山は俺の顔を凝視し思わずと言ったように、果敢にも俺の腕をホールドする。
女には手はあげないんだけどな。
面倒くせえな……。
………っても……俺は………誰にも迷惑はかけていない。
「コニシ……そりゃよ、間違ちゃいねェけど、別にオマエに関係ねーだろ?」
俺は東山のホールドはそのままに、小西を見下ろして静かに答えを返す。
「迷惑よ。男同士だなんて。日高君みたいな正常な人を、アンタみたいな変態な不良がたらしこんだんでしょ!」
みんなの前で派手にアウティングをかました小西を俺はため息をついて見下ろす。
まあな、普通ならこんな事言われちまったら、キレるか喚くかするんだろうな。
俺としちゃあ、別段、気にするようなことでもない。
「だからよ。…………コニシ、俺とヤスは付き合ってんだって。アレは俺のなんだよ。恋人と屋上セックスして、ケツに突っ込まれて気持ちヨかった。何か文句あるのか?オマエも付き合ったらセックスすんだろ?オトコ同士だし、どっちかが突っ込まれないとなんねーし、どー考えてもヤスより俺のが丈夫だから、そうしてる。何か……問題か?」
隠すことも、誤魔化すこともせずあっさりと俺は認めてやる。

こんなことは騙しても仕方ないし、隠すのは趣味じゃない。
大体、康史の方がこのオンナにくっちゃべったんだし、隠したくないと言ってたからいいだろう。
別にイケナイことは……まあ、屋上で青姦はイイ事じゃねえだろうけど、校則に屋上でエッチ禁止っていうのはなかったはずだ。

「はぁ?!何肯定してるの?アンタ、周りからどう思われてもいいの、オカマ野郎」
小西は俺の言葉に泣きながら、ほとんど本性丸出しで俺を攻め立てる。
いま時点で、相当恐がられて近寄るヤツもいねーし、周りからどう思われたいとか考えたこともない。
「周りにどう思われようが気にしたこたねえよ。俺に文句あるヤツいる?いるなら出てこいよ」
まあ、出てきたら一発殴るけど?
言外に匂わせて周りをぐるりと見回して言うが、出てくる勇者はいなかった。
東山もぽかんとした顔をしている。
「ほらなあ。……誰も文句ねェってよ。だって俺がヤスにケツ貸すのも、アイツのちんこで喜んでるのも、俺の自由でしょ」
「…………非常識すぎる……」
首を左右に振って、非難する女に俺は笑みを浮かべた。
「常識とかは、いきてくのに必要ねえし」
だから、女としゃべるのは疲れる。
「勝手にやってなさいよ。このホモ野郎!!…………許さないから!絶対に復讐してあげる!」

ひどい剣幕で俺の机を足蹴にして捨て台詞を吐くと、教室から駆け出す小西の背中をただ俺は見送った。

復讐ね……。

まあ、これでもクラス中にカムアウトしたわけだから、これで勘弁してほしい。
恥ずかしいとかはないが、ちと周りの視線が正直怖いぜ。

「長谷川……よくコニシを殴らなかったな」
パチパチパチと東山を中心として、何故か男子から祝福の拍手が巻き起こる。
女子たちは、あっけにとられた顔で俺を見ている。

「ハァ?」

キャプテン東山は俺の手をぐっと握って、目をきらきらとさせてぶんぶんと振り回す。
「あんなふうに馬鹿にされて、よく我慢できたな。俺、長谷川を誤解してたよ」
「別に誤解とかわからねえけど」
「すぐキレるヤンキーかと思ってた」
「まあ、これで日高は彼氏持ちってことで、ようやく俺らに女子が!」

下心丸出しの男子たちにとっては俺は救いの神のようだ。

「日高のひとり食い状態だったもんなあ」

「応援するわ。日高くんは惜しいけど、小西ひどすぎるもん。長谷川君もっと怖い人だと思ってたけど、結構、一途で純情だよね」
女生徒の声もあがり、なぜか英雄のような扱いだった。
てか、かなり男として恥ずかしい告白をした気がしたのだが、教室のなかではそうはとらえていないようだ。

「日高のテクってそんなすげえの?」
「すげえっちゃ………すげえな………。抜かず5回とかざらだしな」

昨夜は本当にやばかったとこころからぼやくと、なぜか周りに爆笑が生まれた。

「なんか長谷川に近寄りがたさがなくなった」
俺は、そのときはもう、小西の言っていた復讐とかはすっかりと心の中から抜け落ちてしまっていた。

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