俺たちの××

怜悧(サトシ)

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三学期編

※叶わぬいのり →side Y

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どうか、来ないでほしい。

東流に電話が繋がってしまった。
いま、オレに残されたことは、そんな僅かないのりしかない。
神なんか元から信じてなんか、いない。
だけど、今オレが頼めるのはいない筈の神様だけだ。

東流にこないでほしいという、小さなねがいだけ。

体を貫き、内部を圧迫して苦しめる肉の感覚に、脳髄まで揺さぶられていく。
ひどい吐き気に襲われても、胃液すら吐くことすらできない。
苦悶と情けない嗚咽の声しか、乾いた唇からは漏れない。
このまま、そう…………こいつらに殺されてもいい。

もう、十分だろ。

十分…………オレには十分すぎるくらい幸せな時間を過ごした。
夏休みだけでいいと考えてたのに。
東流に殺されなくても、想いを遂げて拒否された時点で、オレは命を断つつもりでいた。

あんな卑怯で醜いことをしたオレには、半年でも充分すぎる。
神様とやらが、それだけの幸せをくれたのだから。
信じちゃいない、だけど、万が一にも神様ってやつがいるっていうなら。

ここで、オレを、終わらせてほしい。

何人か入れ替わって、次々にオレの体の中に体液を吐き出し欲望のままに汚していく。
こんな姿を東流に見られたら、どちらにしろ、おしまいに違いない。

怖くて怖くて、涙が出てきて、止まらない。

どこかで、もう充分すぎるって思ってるのに。

未練がましく、東流を失うのがこわい。

内部を揺さぶる動きより、どうにもならない体の疼きより、恐怖しているのはそのことばかりだ。

「泣いた顔も可愛い顔だなぁ、美形ってのは何しても様になるなァ」

蔑みをこめた口調で、オレの顔に向けてびちゃびちゃと精液を放つ男すら、今のオレにはどうでもよかった。

媚薬で体内が疼いて、腰の動きも止まらないこともどうでもいい。

頭はもう麻痺している。

東流に電話が繋がってしまったことが、オレの頭の中をぐるぐると駆け巡っている。

オネガイだから、こないでくれ。

ここには総勢30人ほど東高のやつらが集まっている。
見えすいた罠に飛び込んでくるほど、頭に血が上ってないよな……トール。
ひとりでノコノコこねえよな……。

この姿を見られることも、怖くて仕方がなかったけど、何よりそのせいで東流が傷つくのに耐えられない。


外でグオオオオンという聞き慣れたバイクの唸り声が聞こえる。

トール?

「!!ーーッひ、イ、イヤ、……ッだァァァ」
絶望的な思いの中、ぐぐっと奥を貫かれガクガクと全身を震わせると、オレはあまりの絶望感に突き落とされ、パニックへと陥って悲鳴をあげた。


バリバリバリバリ

身体が馬鹿になったように中がうねり、絶望の中で快感が追い詰めてくる。

男が、慌てて俺の体を引き剥がしても、なお、俺は痙攣が止められずにビクビクと跳ね続ける。

トタン板の扉がまるで裂けるように割れて、隙間からバイクがスピードを落とさずに突っ込んでくる。
悲鳴をあげて逃げ惑う男達を跳ね飛ばして、その辺に転がっている木材を拾うと振り回しながら、顔を血まみれにした東流が大暴れしはじめているのが、霞んだ目に映る。

バカ………。
バイクごと乗り込むヤツがいるかよ……っ、ほんと、やること、めちゃくちゃ、だな。
呆れながらも、酷い頭痛が軋むように警鐘を鳴らす。

…………バカ……やろ……そんなむちゃ、したら、オマエも大怪我すんじゃねえか…………。

悲鳴と怒号が聞こえる。
それが、また耳に響いて、頭を締め付けるような痛みを増加させる。

応戦しようとする男たちが、東流の方に押し寄せているが、無表情に東流は一気になぎ倒す。

…………ヤバイ時のかお、してる。

ひでえな……神様………やっぱ、いねーんかな…………。
ちっとも、願い事なんか聞いてくんねえんだな…………ほんの、ささいな…………いのりでさえ…………と、どかないん、だ。

もし、それでもホントに神様がいるなら…………。

このまま、すべて…………なにもかも、わすれさせて、くれ。

意識がのまれていく感覚に、俺はそのまま身を任せた。
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