斬り裂くのは運命と識れ【完全版】

怜悧(サトシ)

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「まだ1ヶ月も経ってないのにリタイアか。この人事にわたしがどれだけ頭を下げたと思ってるんだ」
 オメガである統久が、宇宙警察始まって以来の異例の人事で、警察のエリート集団である海運捜査局の副局長になったのは、ひとえに総監である父の力だ。
 統領抜擢の人事を足蹴にしたこともあり、一生辺境警備隊長かとも思っていた。
 海運捜査局に就任してから運命の番である歩弓との接触もあるが、周りがアルファばかりなのもあり、感覚が鋭くなり過ぎていて身体がおかしい。
 
 歩弓がここを離れるように背中を押してくれたのも、アイツも番のフェロモンに当てられて辛いせいだろう。通信機ごしの父親に諭され反論を考えるが、頭もボーっとしていて、このままじゃ自滅するのは分かる。 ヒート初日に桑嶋とセックスしたのに収束せず、すぐに再ヒートして、今漸く人と会話できるレベルに収まったのだ。
「本当に酷くなっているんだ。辺境じゃベータ型の同僚しかいないし、元に戻してほしい」
「それは年齢のせいだろう。番をもたないオメガは体が求めてヒート間隔が狭まってく。大体三十才を超えると三ヶ月に1度が一ヶ月ヶ月1度になるし、三十五才を過ぎれば常時ヒートしてる状態になる。確かに毎日アルファに接しているのも起爆剤かとは思うが、遅かれ早かれだ」
 起爆剤とか、そんなもん簡単に起爆されちまったら、大変なのは俺じゃねえかよ。
 遅かれ早かれの言葉に、統久は全身の血が凍るよう思える。
「大体悠長にしてるオマエが悪い。辺境でこれ以上鍛えたら、また婿候補に逃げられるだろ。番を捕まえさえすればその後は楽になるのだし、我慢しなさい」
 それには否とは答えられずに統久は奥歯を噛み締めるしかない。本当にあと十年でヒートし続けるようになったら、それこそ目もあてられない。
 それにどうやら親父は、俺に跡を継がせるのを諦めてはいないようだ。

 ドクッと身体の中の血流がぐつぐつと粟立ち、統久は身を震わせ画面を睨みつける。 
 ……やべッ、またきやがった。

「わり……ッ、サイクルきたから……また、かける」




 通信を遮断した統久は、のろのろとベッドに重くなる体を横たえた。
 頭の中が沸騰したかのようになり、次第に欲情以外の何も考えられなくなってくる。何年つきあっても、理性が体から引き剥がされる感覚に嫌悪しながらも、着ていた服をもどかしそうに脱ぎ散らかす。
 どうしようが、あるっていうんだ。
 統久は四つん這いになり膝立ちになって脚を開くと、内部へ求めてたまらない中心へと、慣れた手つきでシリコンの張形をゆっくり押し込んでいく。
 浅ましいくらいに内部へ男を欲して、苦しくて仕方がない。一度味わった快感を何度も求めたくなってしまう。
 この苦しみから解放される為に、差し伸べられた手を素直にとれたらよかったんだが。
 俺には向けられた優しさを受ける資格がない。
 抱えているものをさらけだしても、なお受け止めてもらえるなんて思えない。
 統久は腕を伸ばし、スイッチを入れるとベッドに取り付けた金具が動き腰を固定する。張形の裏につけた金具がゆっくりと胎内を揺さぶりながら動き始める。
「くッふ……う……ッ」
 ベッドの上で腰を少し下げて、ぐぷうぐぷうと内部を刺激する感覚に、統久は背を丸めて全身を震わせる。
 頭の中が弾け飛んで何も考えられなくなる前に、安全装置つきの器具で自慰をするのにも慣れた。機械に犯される行為は、最初は惨めで仕方がなかった。
「あ、ふ……くっ、ああッ……ッンンン、くあっ……ああ、ああ、あは、あああ、ァァアッく、ふぅ」
 まるで自分の声じゃないような甘い声をあげて、喘いでいるのは誰だろう。
 この苦痛や惨めさから逃れたくて、オメガが必死に番探すのは当然だ。これが毎月になるなんて、地獄でしかないのも分かっている。親父の俺を想う親心もわかる。
 でもおれは心を偽っておれじゃねえモノにもなれねえし、それを愛してもらいたいとも思えない。
「くッ、ッあ、ああ、……ッアッアアッ……ッく」
 既に理性は焼ききれたのか、統久は全身を撓ませ、溢れる体液を纏わせて雌の獣のような声をあげ続けていた
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