朝焼けは雨

怜悧(サトシ)

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第8話→sideR

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ハルカが見つかるなら、プライドとかに構っている余裕はなかった。多分、将兵なら顔は広いし今以上の情報を仕入れられるはずだ。
間柄的には本来頼めたりはしないのだが、恥も外聞もプライドすら捨てる気持ちはある。
俺は仕事が終わった後に、将兵が着ていた作業着を頼りに多分奴の勤務先であろう建設会社の前で待ち伏せをした。

藁にでもなんでも縋って縋って縋りまくる気持ちでいっぱいだった。

「うわ、なに!?峰ェ?なんでココにいんだよ?!まじでストーカーかよ!!」

作業場っぽい小屋から出てきた将兵の腕をぐいと掴むと、ツリ目で睨みあげながら将兵は少し俺を警戒して体をこわばらせる。
たしかに、俺達の間柄はそれが正しい。

「キャハ、軽くストーカーしてみた。襲わないから、ちょっと相談に乗ってくれねーか?……メシ奢るし」
グイグイと将兵の腕を引いて、乗って来た車の助手席をあける。
「ったく、いきなり襲撃されたらビビるだろ。オマエね、俺は、一応、オマエに腹刺された被害者なんだからなっ!」
たしかに、8ヶ月くらい前に将兵のことを刺した覚えはあるんだけど。
それでも、将兵はため息をつきながらも車に乗ってくれる。
「だって、ガチでやりあって将兵に勝てる気しなかったしさ。あん時は邪魔されたくなかったから」
運転席に座ると、勝てる気しないという言葉に少しだけ気を良くしたのか、将兵はシートベルトをして俺をチラッと見やる。
「オマエが動くとか、小倉に何かあったのか?」
将兵は昔から勘がいい。
俯瞰から周りを見渡している気がする。
「あー、ハルカが失踪した。探してんだけど、もう3ヶ月くらいみつかんねー」
笑えない。いつものようには笑えない。
「峰にしては珍しいなァ。そーいうの用意周到なタイプなのにな」
近くの焼き鳥屋にでも行こうかと車を回すと、将兵は少し考えこんで、
「まさかとは思うんだが、松川さんとこに?」
「確証はねーんだけど、N市の松川さんがでいりしている組の近くでハルカを見かけたって噂もあって」
車を走らせていると、将兵は右側を指さす。
「あの交差点、右に曲がれ。じゃあ、五十嵐さんとこいくぞ。士龍も呼ぶ」
「待てよ、まだそうとは決まった訳じゃ」
ハンドルを右に切りながらも、俺は時期尚早すぎると将兵にいい募ろうとする。
「松川さんは、死んだんだぞ。テメェは考えたくないだろうが、悪いけど一緒にいたなら、もしかしたらもう生きてねーかもしれない。けど、まだ生きてるかもしれない。だとしたら、一刻も早く手をまわさねーと、テメェが後悔するだろ!」
「だけど!!」
「テメェが小倉を大事にしてきたのは、俺は知ってる。……なくしたくねぇんだろ」
将兵は、昔から暑苦しいほど熱いヤツだった。苦手だなと思ったこともある。

だけど、いまは、それがすごく心強かった。

「あ、でも、俺、まだ士龍ちゃんに会わす顔がねーけど」

抗争中とはいえ、将兵のアタマだった士龍をひどい目にあわせた自覚はある。
そのあと、蹴られて股間を踏まれて報復はされたのだが。

「大丈夫だろ。士龍にはそーゆー記憶力、おっそろしーほどないから」
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