朝焼けは雨

怜悧(サトシ)

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第42話→sideR

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個室に入ると既に将兵はあぐらをかいて寛ぎながら何かを焼いていた。
まあ、将兵は昔から変わらないマイペースな奴である。
「お、峰。今日もおごりとか、給料前にはホントに嬉しいぜ、アリガトな!」
シシシと八重歯を出して笑う将兵には、裏がない。
「こっちこそ、マジで世話になった。無事にハルカも戻ってきたし。て、将兵、肉じゃなくて何焼いてんだ?」
さっきからもくもくと煙のたちこめる網の上で焼いているのは肉じゃなかったらしい。
椎茸を箸でつまんでかじりながら、将兵はふーっとため息を漏らす。
「いやなあ、五十嵐さんがさあ、みんなくるまで野菜しか出してくんねーんだよ。オアズケちゅーなのさ。おー、小倉もきたか、もうカラダとか大丈夫なんか?しっかし痩せたな」
相変わらずのデリカシーの欠片もない言葉に、ハルカは少し眉を寄せるが、
「ああ…………まあ大丈夫だ。……村澤、色々、世話になった。ありがとう」
ちょっと棒読みくさかったが、ハルカはきちんと礼を言った。
「ンな、他人行儀なこたいーんだよ。拳で語り合ったせーしゅん過ごした同じガッコの仲間なわけだしよォ」
けらけらと笑い、将兵は大雑把なくくりをしてくる。
ちょっとハルカは怪訝そうな表情をすると、俺の横に座って落ち着かなそうに指先を唇にもってくる。
将兵はずっと五十嵐派にいたヤツで、真壁がいなかったら五十嵐派を継ぐと言われてたくらいの奴だった。五十嵐さんが内輪もめでたまらず真壁に任せると言ったら、あっさり真壁派のトップ2に収まった奴である。
真壁が留年した時に、そのまた自分の派閥にすることもできただろうに、それもせずに俺達との派閥抗争もしなかったのだ。
ハルカは眉を寄せたまま何やら考えこんでいる。
まあ、将兵は脳みそまで筋肉におかされている奴だからな。
ガラッと引き戸が空いて、わらわらとうちの制服を着た奴らが、真壁を筆頭に入ってきた。
真壁は、ハルカが高校時代ずっと片思いしていた男である。

「わりィ、補講があってさ。遅れた」
本気で予備校に行っているのか、真壁はパンパンのカバンを置いて靴を脱いで個室にあがりこむ。
「……士龍ちゃん、マジで進学する気かよ」
思わずうへえと呟くと、真壁はニヤッと笑う。
「任せろ。今回の模試、俺ァ、県下のテッペンとったぜェ。一高のヤツを抜いてやった。東高初らしいぞ」
胸を張って自慢しながら焼かれている椎茸を摘んで、将兵の横に座る。
そりゃ、うちの底辺高校から予備校いかないだろうし、一高以上の学力をもつなんて野郎は存在しないだろうが、マジで県トップとか。
「士龍ちゃん、なんで東高きたのよ」
喧嘩もすすんでするタイプじゃないし。
「…………んー、ハセガワがね、東高にくると思ったの。小学生の時の親友だったから」
「あ、そういうことか」
ハセガワはこの辺で一番喧嘩で有名なヤツである。
確かにきっと東高にくるだろうとみんな思っていたな。

「…………真壁。昨日は、悪かった。混乱してて、八つ当たりしちまった。本当にありがとう」

会話を切るように、ハルカは真壁の前に進み出て頭を下げた。


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