朝焼けは雨

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
44 / 64

第44話→sideH

しおりを挟む
ライに連れてこられた五十嵐さんの店には、前に1度だけ松川さんにつれてきてもらったことがある。
まあ、詫びと礼行脚になるのは折り込み済だったが、なんだか拍子抜けするほど真壁の一派はこちらを恨んだりはしてないように見えた。
真壁を筆頭に幹部たちが、能天気で脳みそ筋肉なやつらだってのは知っていた。だから、卒業のギリギリまで手は出さなかったし、出すつもりもなかった。

「真壁、あの赤毛はこなかったのか?」

真壁が彼氏だって紹介した、赤い髪の富田の姿は見当たらない。真壁がいるところには、大体一緒にいたのに。
もしかしたら、別れたとかか?
「あー…………たけおは、外にいるよ。アイツ、ハルちゃんの顔はまだ見たくないらしい。わりぃな」
箸を咥えながら呟く真壁は、反面少し嬉しそうな表情をしている。
富田の反応が1番正しいのじゃねーかと思っている。
俺らが1番酷い目に合わせたのは、実は富田なのだというのも分かっている。

「…………だよな」
納得して、俺は出されたコーラを口にする。
「…………峰ちんはさ、メチャメチャ必死にボロボロになりながらハルちゃんを探してたんだ。だからさ、もう無茶なことしないでよ」
「分かってる」
実際、分かっている。
なんの手がかりもないとこから、俺の居場所を突き止めたのだ。
どうしようもないプライドで出ていってヘマこいた俺なんか捨てておけば良かったのに。
「あんなことをしたオマエにまで頭下げて探しにきたんだ。それくらい分かる」
「んー、まあ、あれはさ、俺もちょっとは引きずったし自暴自棄になったりしたけど、もうあんま気にしないでいーよ。ハルちゃんはさ、本当は俺のことが好きだったんだろ?」
図星だが、それは今言わなくてもいい話だろ。ホントに無神経な奴だ。
すっかり諦めた感情を蒸し返すなとにらみ返すと、真壁はポンと肩をたたいた。
「だから、それなら、俺も悪いからいい。そういうの知らずに、自慢しに行っちゃったわけだからさ」
知らないも何も言わなかったわけだし。だからといって、卑怯な手を使ってこいつを、手に入れようとした言い訳にはならない。

でも、そうだ。

「…………今は、ライが大事だ」

何もかもプライドすら投げ捨てて、俺を探しにきてくれた。
ヤクザに乗り込むとか普通は考えない。
「それ!!それ!ちゃんと、峰ちんに言ってあげんだぞ」
言わなきゃわかんねーんだからなと続けた真壁のデコを指で俺は弾いた。
言っていたら、変わっただろうか。
入学式のあの日。
屋上で1発KOを食らったあの日。
恋心を伝えていたら、俺と真壁の関係は変わっていただろうか。

馬鹿な考えだな。
全然、俺は成長してねえ。

「言うよ・・・・・・・・・そのうちな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

Bランク冒険者の転落

しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。 ◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公  ◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;) ◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―

たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。 以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。 ​「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」 トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。 ​しかし、千秋はまだ知らない。 レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。

処理中です...