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本当にオレはゾンビのようで、グラシーモの与えてくれる体液なしでは、身体を動かすこともできないようだ。それどころか、摂取し続けなければまた、死体に逆戻りしてしまうらしい。
一度死んでいても、不思議なことに死ぬことは怖いものだ。
オレはすっかり逃げる事は諦めた。
まあ、グラシーモの体液は不味くはないし、甘くて脳までハッピーになれるドラッグに似ている。
それに、この生活は割と心地よい。
グラシーモは、手から金銀宝石を作り出すことができ、質屋に流せば金には困らない。
きちんとした服を着せて歩けば、グラシーモは痛くても華麗な男である。
周りの注目を浴びてなんとなく優越感を味わえる。
ということで、グラシーモをハイヤーに載せて銀座へとショッピングに出かけた。
「我が妃よ、こんな鉄の籠に乗るより、我の転移術の方が速かろう」
無駄な時間を過ごすのが嫌なのか、グラシーモはイライラとしている。
勿論そんな転移術など使ってショッピングなど出来やしない。
「グラちゃん。これはハイヤーという乗り物で、グラちゃんみたいな高貴な男が威厳を示す為の乗り物なんだ。だから、オレは妃として夫がこの乗り物に一緒に乗って、街を巡りたいんだけど」
グラシーモは、オレが夫扱いをすると、嬉しいのかとても調子に乗る。
普段は隠すように言っている悪魔の尻尾がぴょこりとはみ出てフリフリしているくらいだ。
「そうか。妃が喜ぶなら仕方があるまい。心地よく眠れる寝具を一式揃えよう。ああ、早く子作りしたいものよ」
浮かれているグラシーモだが、オレは最後の一線は許してはいない。
グラシーモの話によれば、すでに子宮は俺の胎に出来ているらしいが、そんな恐ろしい事はできないので、色々と誤魔化して回避している。
寝具が気に入らないと言って、こないだは拒否したので買いに来ることになったが、そろそろ年貢の納め時かもしれない。
最近じゃ、グラシーモのこともだんだん可愛く思えてきているのもあるしなあ。
ハイヤーが止まり、グラシーモはドアを開いてオレの腕をとると、恭しく引き寄せて車の外へ連れ出してエスコートする。
お姫様じゃあないんだけどな。
オレはただの柄の悪い男に過ぎない。
「わ、金崎じゃね!?こないだ、誰かが殺したとか吹いて回ってたぜ。生きてるじゃん!!」
銀座には似つかわしくないチンピラがオレらの目の前に現れた。
コイツは誰だったか。
思い出せないが、オレを殺したヤツを知っている様子である。報復行為を今更したいとも思わないが、吹聴しているのは腹がたつ。
というか、殺人を犯して周りに言い触らすというのは、余程のサイコ野郎だな。
「おい、ソイツは誰だ?」
思わず目の前の男に食い気味に問い掛けると、ニヤと笑って情報料は高いぞとか四の五の言い始める。面倒くさいヤツだ。
「いくらだ」
金を出そうとすると、グイとグラシーモに引き寄せられる。
「我が伴侶に馴れ馴れしいぞ。頭が高い」
ヤバい。
痛いヤツと思われる。
グラシーモに制止をかけようとすると、男はグラシーモの威圧に腰を抜かして口から泡を吹き出す。
別の意味でヤバい。
グラシーモのもつ威圧は、普通の人間の精神では耐えられないようだ。オレが無事なのはゾンビだからだろうか。
「人間風情が、我が伴侶にたかろうとするからだ。まあ、良い」
「グラちゃん.........。オレは情報が欲しかったのだけど」
泡を吹いて殆ど意識を失っている男から、オレを殺したやつの話はもう聞けそうにない。
「ふむ。こやつの記憶と思考ならば、我がすべて把握したが。妃は何の情報がほしいのだ」
「あー、そうなの。オレを殺した奴が誰なのか知りたかったんだ」
男にはもう用はないので、家具の専門店に入っていく。
グラシーモに聞けば教えてくれるのであれば、手間も省ける。
「そうか。では、お主を殺した男を殺せばよいか」
背後からグラシーモが、平然とした口調で当たり前のことのように言うので、思わず首を横に振る。
オレは今まで悪いことばかりして生きてきたし、人に恨みを買っていたし、殺されても仕方のない生き方をしてきた。
だからと言って、人を殺そうとかは考えたことがない。
「あ、グラシーモ。お前は人の思考が読めるのか」
思い出したように問い掛けると、グラシーモは頷いた。
それなら、オレが散々渋ってセックスを回避していた言い訳も嘘だと気づいているはずだ。
「そうか。それなら.........いっぱいウソついた」
「ああ。そうだな。だが、卑怯で愚劣で浅はかで、それが愛らしくて.......。そういう短慮極まりない浅はかさがたまらないくらいに、好きだ」
貶されているとしか思えない言葉に、おそるおそる見上げると、綺麗な顔を意地悪そうに歪めた笑みにオレは魅入られてしまっていた。
流石、魔王様。歪み方が半端ないだろ。
一度死んでいても、不思議なことに死ぬことは怖いものだ。
オレはすっかり逃げる事は諦めた。
まあ、グラシーモの体液は不味くはないし、甘くて脳までハッピーになれるドラッグに似ている。
それに、この生活は割と心地よい。
グラシーモは、手から金銀宝石を作り出すことができ、質屋に流せば金には困らない。
きちんとした服を着せて歩けば、グラシーモは痛くても華麗な男である。
周りの注目を浴びてなんとなく優越感を味わえる。
ということで、グラシーモをハイヤーに載せて銀座へとショッピングに出かけた。
「我が妃よ、こんな鉄の籠に乗るより、我の転移術の方が速かろう」
無駄な時間を過ごすのが嫌なのか、グラシーモはイライラとしている。
勿論そんな転移術など使ってショッピングなど出来やしない。
「グラちゃん。これはハイヤーという乗り物で、グラちゃんみたいな高貴な男が威厳を示す為の乗り物なんだ。だから、オレは妃として夫がこの乗り物に一緒に乗って、街を巡りたいんだけど」
グラシーモは、オレが夫扱いをすると、嬉しいのかとても調子に乗る。
普段は隠すように言っている悪魔の尻尾がぴょこりとはみ出てフリフリしているくらいだ。
「そうか。妃が喜ぶなら仕方があるまい。心地よく眠れる寝具を一式揃えよう。ああ、早く子作りしたいものよ」
浮かれているグラシーモだが、オレは最後の一線は許してはいない。
グラシーモの話によれば、すでに子宮は俺の胎に出来ているらしいが、そんな恐ろしい事はできないので、色々と誤魔化して回避している。
寝具が気に入らないと言って、こないだは拒否したので買いに来ることになったが、そろそろ年貢の納め時かもしれない。
最近じゃ、グラシーモのこともだんだん可愛く思えてきているのもあるしなあ。
ハイヤーが止まり、グラシーモはドアを開いてオレの腕をとると、恭しく引き寄せて車の外へ連れ出してエスコートする。
お姫様じゃあないんだけどな。
オレはただの柄の悪い男に過ぎない。
「わ、金崎じゃね!?こないだ、誰かが殺したとか吹いて回ってたぜ。生きてるじゃん!!」
銀座には似つかわしくないチンピラがオレらの目の前に現れた。
コイツは誰だったか。
思い出せないが、オレを殺したヤツを知っている様子である。報復行為を今更したいとも思わないが、吹聴しているのは腹がたつ。
というか、殺人を犯して周りに言い触らすというのは、余程のサイコ野郎だな。
「おい、ソイツは誰だ?」
思わず目の前の男に食い気味に問い掛けると、ニヤと笑って情報料は高いぞとか四の五の言い始める。面倒くさいヤツだ。
「いくらだ」
金を出そうとすると、グイとグラシーモに引き寄せられる。
「我が伴侶に馴れ馴れしいぞ。頭が高い」
ヤバい。
痛いヤツと思われる。
グラシーモに制止をかけようとすると、男はグラシーモの威圧に腰を抜かして口から泡を吹き出す。
別の意味でヤバい。
グラシーモのもつ威圧は、普通の人間の精神では耐えられないようだ。オレが無事なのはゾンビだからだろうか。
「人間風情が、我が伴侶にたかろうとするからだ。まあ、良い」
「グラちゃん.........。オレは情報が欲しかったのだけど」
泡を吹いて殆ど意識を失っている男から、オレを殺したやつの話はもう聞けそうにない。
「ふむ。こやつの記憶と思考ならば、我がすべて把握したが。妃は何の情報がほしいのだ」
「あー、そうなの。オレを殺した奴が誰なのか知りたかったんだ」
男にはもう用はないので、家具の専門店に入っていく。
グラシーモに聞けば教えてくれるのであれば、手間も省ける。
「そうか。では、お主を殺した男を殺せばよいか」
背後からグラシーモが、平然とした口調で当たり前のことのように言うので、思わず首を横に振る。
オレは今まで悪いことばかりして生きてきたし、人に恨みを買っていたし、殺されても仕方のない生き方をしてきた。
だからと言って、人を殺そうとかは考えたことがない。
「あ、グラシーモ。お前は人の思考が読めるのか」
思い出したように問い掛けると、グラシーモは頷いた。
それなら、オレが散々渋ってセックスを回避していた言い訳も嘘だと気づいているはずだ。
「そうか。それなら.........いっぱいウソついた」
「ああ。そうだな。だが、卑怯で愚劣で浅はかで、それが愛らしくて.......。そういう短慮極まりない浅はかさがたまらないくらいに、好きだ」
貶されているとしか思えない言葉に、おそるおそる見上げると、綺麗な顔を意地悪そうに歪めた笑みにオレは魅入られてしまっていた。
流石、魔王様。歪み方が半端ないだろ。
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