私の推しは勇者さま!?〜アラサー異世界奮闘記〜

白猫ミント

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突然の異世界

宰相と尋問

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私たちが通された部屋は、細やかな装飾が
散りばめられた煌びやかな部屋だった。

その真ん中には膝丈の長テーブルに、ふかふかで
柔らかそうな三人掛けのソファが対で置かれている。
そのソファの右側に、薄いベージュの長い髪を
後ろに低く結んだ40代くらいの男性が座っている。
如何にも知的そうな見た目だ。

少し緊張しながら前まで進むと、その人物の向かいに座らされた。


「初めまして、私はシュタイン・クロウと申します。ここでは、宰相という職に就いております」


柔らかな微笑みを浮かべてはいるけど、
目は笑ってない。
どうやら私は歓迎されていないどころか危険人物
として警戒されているようね。


「貴方のお名前を伺ってもよいですか?」

「橘 碧(タチバナ アオイ)と申します」


「ではタチバナ アオイさん、、
失礼ですが、アオイさんとお呼びしても?」
アオイの方が呼びやすいのかもしれない。
はい、と短く答えてまっすぐ目を見つめる。
変に目を逸らしたりしたら疑われそうなので、
できるだけ堂々としていようと心に誓う。

宰相のシュタインさんは警戒を緩めていない様子で、こちらを伺っている。

うぅ、こっちまで緊張してくるなあ。。


「では、アオイさん。
貴方は異界人ということで間違いないでしょうか?」

はい、と言いながらコクリと頷く。

「なるほど。
なぜ、貴方をここへ連行したのかについてですが、本来、異界人がこの王都に入った場合
結界の探知機能が働いて異界人をマークするようになっています。

しかし今回、なぜかその機能が働いていないにも
関わらず貴方は突然現れました。
この原因については後ほど調査しますが、
現段階では特定できないので、貴方が不審人物でないか確認のため一旦拘束及び連行させて頂きました。
いくつか質問させて頂いて、問題がなければ釈放となりますので、正直に答えて頂けると助かります」

相変わらずニコニコと胡散臭く笑いながら言葉を
続ける。


「では、アオイさん。この世界に来てからどれくらい経っていますか?」

「今朝来たばかりです。まだ1日も経っていません」

そういえば、こちらの世界に今朝来たばかりだと
いうことを自分でも思い出す。
・・・そう思うとちょっと理不尽な扱いを受けて
いる気がしてきた。
少し苛立ちながらぶっきらぼうに答えると
シュタインさんは僅かに目を見開いた。

「これは驚きました。まさか来たばかりだとは。
訳も分からず大変な思いをさせてしまいましたね」

・・まあ、別にいいですけど。

自分のことながらチョロい奴だと思う。


「この国や場所についてどこまでご存知ですか?」

「ここがアストラ王国という国で、今いる街が王都のリマだということは知っています。
あと、ここが王宮だということも。
それについては連れてきた兵士の方が教えてくださったので」

「ふむ、なるほど。ちなみに今朝来られたと言う
ことでしたが、それにしては随分と早く情報を得ることができましたね?
それに貴方を目撃した兵士は、警備署の方へ迷うことなく向かっているようだったと聞きましたが」

やばい、これは完全に疑われてるよ。

まぁ、確かに今朝がた来て今は昼ごろといった時間。この短時間で国や王都の名前を知り、異界人の申請ができる警備署へ向かっていたのだから
訝しむのも分からなくはない。

「たまたま出会った親切なおばあさんが、この国のことや警備署のことを教えてくださったんです」

若干、自分でも苦しい言い訳のように聞こえるが
事実なのだから仕方ない。

そうシュタインさんに説明をしながら、あの優しいおばあさんのことを思い出す。
また、落ち着いたらお礼を言いに行かなきゃ。
そういえばあのおばあさん、私の名付け親の院長先生にどことなく似ていたな、、

などとぼんやり考えていると

「そうですか。それは幸運でしたね。
では、最後に、ここ最近起きている異界人の噂をご存知ですか?」

「?、、いえ、知りません」

そう答えると、シュタインさんはこれまでじっと私を見据えていた目を閉じ、ふぅと息を吐きゆっくりとまた目を開けた。

その目は先ほどと違って、明らかに嘘偽りなく優しい眼差しになっていた。


「どうやら貴方はただの異界人のようですね。
なぜ、探知機能が働かなかったのか疑問は残りますが、特に問題ないようですので釈放となります」

何時間も質問される覚悟でいたが意外とすんなりと疑いは晴れた。
あまりにも急に疑いが晴れたことを疑問に思い、
聞いてみる。

「あの、、これだけの質問でいいのですか?
それだけで嘘かどうか見抜けるとは思えないんですが、、」

そう聞くとシュタインさんは軽く微笑んで

「はい、私の目は少々特別でして、、 
それ以上は国家機密ですのでご了承ください」


国家機密の目って何なんだ!
めちゃくちゃ気になるけど、残念ながらこれ以上
聞いても答えてくれそうにない。。
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