私の推しは勇者さま!?〜アラサー異世界奮闘記〜

白猫ミント

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突然の異世界

オクティマとオルク

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ミズキくんと名残惜しくも別れたあと、シュタインさんの執務室で今後のことについて話し合われた。

「まずは昨日、神伝室で起こった出来事に関してですが、なぜ異界人であるアオイ様がオクティマに触れることができたのか、、

私も昨日は気が動転していて王族であると断言してしまいましたが、最終的にアオイ様が我が国の王族であると判断するのは国王陛下です。
ですが、陛下は今ご公務で国外に出ており、戻るのは3日後になります。
ですので、それまでの間は王宮でお過ごし頂けないでしょうか?」


「もちろん、私も何故なのか気になりますし、行くあてもありませんし、、
ここに居させて頂けるなら助かります」

昨日のあの球体。オクティマだっけ、、
助けるために触ったとき、何かに全身が包まれるような感覚があった。
自分の中に眠っていたエネルギーみたいなものが全身を巡り出した感覚というか、、

そういえば、

「あの、オクティマから声が聞こえた、、
というより喋っていたんですが、これは誰にでも聞こえるものではないんですよね?
逆に聞こえる人というのは、どういう人なのですか?」


「オクティマと意思を通わすことができる者は、
神伝者(オルク)以外考えられません。
オルクは、神の言葉を伝えるオクティマから意思を受け取り人間へ伝える者のことを言います。

ただ、異界人がオルクとなった例は今までにありませんし、私の知っている範囲にはなりますが、
アオイ様のように直接言葉を交わすように意思を通わすオルクは聞いたことがありません。
基本的には夢で見たり聞いたりすることが多いようです」

そう言うと、シュタインさんは神妙な面持ちになる。

「実は、、我が国は今オルクを探しているところなのです。
オクティマを有する国には必ずオルクが存在し、神のご意志をオクティマから私たちに伝えてもらうのです。
国に危機が訪れる前には必ず神のご意志が示され、私たちはそのお告げを元に対応・対策していき危機を乗り越えていくのです」

シュタインさんは両手を膝の上で組み、ぎゅと力を入れる。
その表情はさらに苦しそうなものになっていく。

「しかし、アストラ王国には今、そのオルクがいません。
これはかなり危険な状態なのです。
隣接する国々には、オクティマもオルクも揃っています。しかし我が国だけオクティマはあってもそれを伝えるオルクがいない。
もう何年も現れていないのです。

不作や疫病、戦争そして正体不明の“混沌”。
これらの危機を察知できないことを他国に知られれば、それにつけ込み戦争を仕掛けてくる可能性もあるのです」


・・焦るのも当然だろう。

周りの国は危機に先手を打つことができるが、アストラ王国だけ何も知らず対策もできず、危機に直面しなければならない。迫りくる危機に対応できなければ、国の存続に関わってくるのだから。

しかし、これまでも続いていた慣習であるならば
なぜ今オルクは存在しないのだろう。

「これまではどうやってオルクを見つけていたのですか?」

「見つけるというよりは、受け継がれていたものなのです。
多くはオルクの血縁関係にある者が受け継いでおり、先代まではそうでした。
しかし、先代から先の御子が途絶えてしまったのです」

「では、もうオルクは生まれないのですか?」

「その可能性もありますが、オクティマが存在する限り必ずこの世界のどこかでオルクが生まれていると我々は考え、これまで探してきたのです」

そう言うと、シュタインさんはバッと顔をあげ私を見つめる。

「ですから、アオイ様は漸く現れた希望の光なのです!
こんなことを勝手に願うのはアオイ様の負担になると分かってはいますが、しかし我々はどんなに小さな可能性でも逃してはならないのです」

必死な表情がこの国の切迫した状況を物語っていた。

「そうなんですね、、
私は異界人ですが、オルクである可能性があると
シュタインさんは考えているんですね」


別の世界から来た私がオルクである可能性は極めて低いと思うが、念のためシュタインさんの考えを確認しておく。


シュタインさんは少し考え、

「・・可能性は十分にあるかと。
オクティマともう一度意思を交わすことができれば、それが証明となり陛下もご納得されるはずです」

そうして少し沈黙が流れたが、
ふと気になっていたことを思い出した。

「! あ、あの、そういえばずっと不思議だったんですけど、この世界の言葉が分かるのも、もしかして私の何か特別な力なんでしょうか?」


先ほどまで深刻な顔をしていたシュタインさんが、少し表情を緩め、

「ああ、いえ、それはこの王都を包む結界が関係しています。
結界内では言葉の違いが脳内で修正され、お互いに分かる言葉に変換されるようになっています」


「あ、なるほど、、へぇー、、」


ああ、なんか恥ずかしい。
自分は特別な人間かもって期待してるみたいに聞こえたよね。。

「こほん。
じ、じゃあ私は滞在の間、とりあえずオクティマともう一度意思を通わせてみます」

どうやれば、もう一度意思を通われられるのかは分からないが、、やるしかない。



そうして、一旦話しはまとまり、解散となった。
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