私の推しは勇者さま!?〜アラサー異世界奮闘記〜

白猫ミント

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突然の異世界

王宮散策

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部屋に戻った私は、今後のことをもう一度考えていた。

もし、あり得ないけど、もしも私がこの国の王族と認められれば恐らくこの王宮に滞在することになる。

そうなれば、ミズキくんと一緒に過ごせるという、とんでもないメリットはあるけど・・

正直、あまり気乗りはしない。

お金の心配もせず、悠々自適にセレブライフ!も魅力的ではあるけど、たぶん私の性分だと1週間で飽きる。

何の役にも立ってないのに、人のお金で生きるのはどうしても抵抗がある。
まして私はただの一般人として30年間過ごしてきたのだ。
そりゃ王族としての仕事もあるんだろうけど、想像もできないしとにかく自信がない。

でも、もしも私が神伝者(オルク)ならこの王宮で何か役に立てることもある気がするけど・・

あれ以来声は聞こえないし、シュタインさんにオクティマと意思を通わしてみるなんて言ったけど実際どうすればいいのやら・・

まあ、私が王族ともオルクとも認められなけば
この王都リマで一から仕事を探してみるのも楽しそうなんだけどね。

 

ようやく今後のことを頭の中で整理できたタイミングで、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。


「アオイ様。ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。
私は、執事長のネロ・セバスチャンと申します。そして、隣の者はメイド長のヨイド・クリステンでございます。
今後、何かお困りごとなどございましたら、私どもに何なりとお申し付けくださいませ」

部屋に入ってきたのは、この王宮の執事長とメイド長だった。
恭しく一礼し、言葉を終えると午後からの予定を確認する。

私は午後から王宮を見てまわりたいと伝えながら、2人の様子を伺っていた。

執事長のネロさんは初老に見えるが、ピシッと美しい姿勢と所作で、それでいて穏やかに優しい言葉遣いで説明をしてくれている。

一方、メイド長のヨイドさんは、言葉数も少なく無愛想でどこかピリピリしている。

メイド長がこんな感じだから、私の側にいるメイドさんたちもあまり話してくれないのだろうか。

この王宮に来てから、食事や着替えなどメイドさん達に手伝ってもらったが、皆んな口数が少なく無表情で働いている。


まあ、そういう仕事スタイルなのかもしれないけど妙な緊張感があるんだよね。。


はあ、一体何なんだか。


昼食後、私は王宮内を見てまわった。

王宮を案内してくれているのは、先ほど挨拶に来てくれた執事長のネロさんだ。

「お忙しいのに、私に付き合ってくださってありがとうございます」

「いいえ、アオイ様をご案内できて光栄でございます。
ちょうど、そろそろ王宮内の傷みをチェックしなければと思っておりましたので、大変良い機会を与えてくださいました」


!! なんて素敵な人なの!
私が気負わないよう配慮してくれている。。


王宮内を見て周ると言っても、広すぎて全ては見きれないので、私の部屋周辺と関係するであろう部屋だけ案内をお願いした。

私が初めに通された応接室や、大きな舞踏会でも開けそうな大ホール、謁見室などを見て周り、今は裏庭が見える外廊下を歩いている。


ふと外を見てみると、裏庭には暖かい陽が差しこみ木の葉がそよそよと揺れ、今まで見てきたどの場所よりも素朴だが穏やかな時間が流れていた。
表の庭園と違って華美すぎず、自然の草花がありのままの美しさで輝いている。

裏庭の奥に目をやると、小高い丘がありそこには一本の大きな木が見えた。

少し立ち止まり、深呼吸しながら風を感じる。
穏やかな風と木の葉の揺れる音、小鳥の歌うような声・・
はあ、落ち着く場所だなあ。。


「この場所は、陛下の姉君エリゼン王女様が大変大切にされていた庭園でございます。
陛下もエリゼン様も幼少のころからよくご家族で
お茶会などをして過ごされていました」

「そうなんですね。
本当に素敵なお庭ですね。

あの、またここに来てもいいですか?」

ネロさんは優しく微笑みながら、
「もちろんでございます。いつでもお好きなときにお過ごしください」


王宮見学もそろそろ終盤を迎えた頃、

「あの・・最後に見たい場所が一つあるんですが、良いでしょうか?」

「はい、どちらでしょう?」

「えっと、騎士団の訓練場はどちらにありますか?」

決してミズキ様のお姿を拝みたいとかじゃなくて!
やっぱりね!この国を守る騎士団の勇姿も見ておかなきゃっていう・・・



嘘です。ミズキ様を見たいです。
別れてからずっと頭から離れません。


自分の隠しきれない下心を隠しつつ、ネロさんに訓練場へ案内してもらう。

「こちらが騎士団の訓練場でございます。
1階は騎士の方々が剣を交えて訓練されていて危険ですので、2階からご見学くださいませ」


最後まで付き合ってくれそうなネロさんだったが、私の我儘にこれ以上付き合わす訳には行かないので、ここで別れてネロさんには仕事に戻って頂いた。


カキン! ダン!

剣の激しくぶつかる音が場内に響いている。

そろり、そろりとなるべく邪魔をしないように忍び足で2階から除く。


「はぁ、はぁ、くっ!まだまだ!!」

見るからに若そうな騎士の1人が、相手の騎士に
ぶつかっていく勢いで駆ける。
その勢いを嘲笑うかのようにひらりとかわし、背後を獲ると剣を首元にかざす。


「くっ!・・くそ!参りました」

膝から崩れ落ち、息を切らしながら相手の騎士を見上げている。


そして、見上げる騎士の前で頬に涼やかな汗を流し美しく立っているのは、“ミズキくん”だった。

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