鈍色の空と四十肩

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76 ーグンデルレストランー

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「ん...ねえ...譲治くん、もういいよ...」
 依子が困ったような顔で喘ぎながら言う。
 2人は今、お風呂場にいた。

 シャワーを緩く出しながら、譲治は依子の足元に跪いて、依子の片足を上げさせ、2本の指で依子の蜜壺から白濁を掻き出していた。
 依子は最初かなり抵抗したのだが、結局、譲治の子犬のような目でねだられて許してしまったのだ。
「いいえ。僕が出したものだから、僕が責任もってきれいにします。」
 異様な熱心さで、依子の襞を開いて指を差し入れ、中を優しくくまなく探っている。

「...んん...はあ...もう...また気持ち良くなっちゃうから...」
「いいよ。気持ちよくなって。それを狙ってるんですから。」
 譲治は平然と言う。
「もう...譲治くんのばか」
 依子は足の間にいる譲治の肩に爪を立てる。
「ふむ。いいね。」
 譲治の口の端には笑みが浮かんでいる。
「えっ? なにが?」
 依子が訝しがる。
「もっとなじって。興奮する。」
「いやだ...変態...」
「おや、今頃気づきました?」
 譲治は顔を上げて依子を見るとニヤリとした。
 譲治は立ち上がり、2人はクスクスと笑いながら、額を擦り合わせた。

ーーー

 お風呂から出て、気づいてみれば夜も更けてけっこういい時間である。
 明日からはまた日常が戻ってくる。
 2人は簡単に夕飯を用意して済ませ、幸せな気だるさに身を任せてゆっくり過ごしていた。

「依子さん、結婚の手続きを進めるのに、とにかくまずご両親の了解を得ないといけないと思うんですけど、僕、日本にお会いしに行った方がいいですよね?」
 譲治が聞く。
「うん...そうね...海外にいるのにすごく心苦しいんだけれど、そうしてもらえるとうれしいな。
 古い人々だから、そういう手続き踏まないと前に進めないと思うの。
 ごめんね。自分のご両親に会いに行くのだって滅多にできないのに。」

「謝らないで。必要なことなんだから。
 依子さんを法的にも完全に僕の伴侶にするためならなんだってします。
 僕が実家に帰らないのは、帰れないわけじゃなくて、単に面倒だったりお金もったいない、とか言ってケチってるだけですから。」
「お仕事もあるんだから、おいおいでいいわよ。」
「いや、もう、すぐやりましょう。一刻も早くあなたと一緒になりたい。」
「じゃ、ちょっと実家に連絡してみるわ。
 譲治くんが帰国できそうな日、分かり次第教えてもらえる? 私も譲治くんのご家族にご挨拶したいわ。」

 実家への挨拶、入籍手続き、公的書類の書き換え、氏名変更届など、日本に帰国した折にはまとめてやらねばならないことが細かく山積みで、かなり鬱陶しくはあるのだが、新しい門出のためとあらば、それもまた楽しい苦労なのであった。
「僕は名前変わらないし、会社に世帯を持ちます、って言うくらいですけど、本当にいいんですか? 僕が婿に入ってもいいんですよ? 
 苗字が変わるのってかなり面倒ですよね。」
 譲治は気遣ってくれる。

「うん、いいのよ。
 譲治くんは会社員だから、諸手続きの面倒はできるだけ少ない方がいいでしょ。私は苗字変わっても、個人事業主だから自分で始末つければいいんだし。  
 まあ、私も一回変わって、元に戻して、また今度変わるから、慣れたもんよ。 
 めんどくさいっちゃめんどくさいけど。」
 依子は譲治の座っているところへ行って、後ろから抱きしめる。
「心配してくれてありがと。 譲治くんは優しくて、私ほんと幸せものだわ。」
 譲治は、胸にまわされた依子の手を握って、その指にキスをする。

「僕ね、一つお願いがあります。」
「なあに?」
 依子は譲治の横顔にキスをする。
「依子さんの花嫁姿が見たい。僕のために白いドレスを着てほしいな。
 僕だけの、僕のためだけ、っていう証でしょ? ウェディングドレスって。」
「譲治くんはけっこうロマンチストなのね。 
 でもうれしい。
 私ね、前の結婚では自分の希望がほとんど通らなくて。
 白いドレス着れなかったから、私も譲治くんのためにドレス着たいな。 
 年がいきすぎてて似合わないかもしれないけど。」

「依子さんはどんな服でもきれいですよ。
 それに僕のためっていうところが大事なんです。」
「そういうの考えるのも、楽しいね。」
 そう言うと依子は、譲治の唇にキスをした。

ーーー
 
 数日後。
 アイルランド旅行で数日休んだため、しばらくは通常通りの日常生活に精を出している。
 そろそろ夏の気配も近づいてきた。

 依子は、昨年出店したジャパンエキスポのフライヤーデザインを、今回頼まれていた。
 エキスポが近づいているのを感じると、ああ、夏だな、と思う。
 もちろん、今年も出店予定。
 『さくら』の手伝いができないのは残念だが、大使館の肝煎りで、カルチャーの生徒との合同ブースも出すことになっている。これは受講生の大使館職員金井の手腕によるところが大きい。

 依子は並行して、入籍のための段取りと、実家への連絡をした。
 実家の両親は最初少し驚いたものの、とりあえず一緒に一度来なさい、とのこと。
 譲治の年齢についてはあえて言わなかった。
 言えばあれこれ心配というか邪推されるだろうとわかっていたからだ。
 余計な先入観で判断してほしくなかった。
 が、まあ、すぐに聞かれるだろう。
 こればっかりは避けて通れないから、もうどうしようもない。
 耐えてやり過ごそう。

「わあ。」
 玄関の方でなんだか声が聞こえた。
 依子は自室から顔を出してリビングを見る。
 譲治が、玄関に積まれた段ボールを見て言った。

「これ何ですか?えらい重いけど。」
「あらら、ごめんね。これ来月のジャパンエキスポのチラシ。
 カルチャーの生徒さんに分割して配ってもらう分もあるのよ。重いから気をつけて。」
「依子さん1人で運ぶの? 手伝う?」
 譲治は気遣ってくれる。
「大丈夫よ。カートに積んで引っ張ってくから。小分けにするし。」

 荷物を依子の部屋に運びながら、依子が譲治に言う。
「そうそう、山形の両親に譲治くんのこと報告したわ。
 都合ついたら一度いらっしゃい、って。」
「...なんか心配とかされてませんでした?」
 譲治はやっぱり緊張するようだ。
「まあ、あの人たちは、私のこと基本的にダメ人間だと思ってるから。
 判断力を信用してないのよ。私のやることをとりあえず否定するから。主に母親ね。
 譲治くんを、というより、私のやることまず否定しとくの。」

「そんな。依子さんはいつだって頑張ってるじゃないですか。」
「もう、仕方ないのよ。そういう性格だから。私は諦めてる。
 でも、譲治くんに会ったらすぐ気にいると思うわ。あの人外面いいから。」

「あっ、でもね、悪人てわけじゃないのよ。まっとうな人ではあるから。
 心配しないで。単に悲観的な性格ってだけだから。」
 依子はニコッとして言う。
 譲治は、依子がこんなにも自分自身に否定的な理由が垣間見得た気がした。 
 幼少期から親の厳しい目の下で育てられれば、そうもなるだろう。

「お父さんに、おまえみたいな若造に娘をやれるかー!、とか言われませんかね。」
 譲治は真面目に聞く。
「あはは!まさか。もう一生独り身かと諦めた娘に、パートナーができる、ってんだから、両親ともども最終的には喜ぶと思うよ。
 大丈夫。譲治くんが、どんなにしっかりした人か、って会えばわかるから。」

「あ、そうだ。今日は指輪、直しに行きましょう。
 でも、ちゃんとした婚約指輪、別に買ったらいいじゃないですか。
 これでいいの?」
 譲治は、依子の左手中指にはまっている指輪を指して言う。
「これがいいの。譲治くんが初めてくれたプレゼントだもの。」
「それじゃ、5時まで仕事して、準備して出かけましょう。」
 2人はそう言って、また各々の部屋へ引っ込んだ。

 今晩は、仕事を定時で切り上げて、指輪を直しに行って、その後記念にちょっと良いレストランで食事する予定にしている。
 譲治が、アクセサリーショップも、レストランも予約してくれた。
 改まって出かけるのは、ほとんど初めてなので、2人ともとても楽しみにしていた。

ーーー

「依子さん、支度できました?」
 譲治が洗面所をのぞくと真珠のイヤリングをつけながら依子が出てきた。
 依子はシックな黒のワンピース。
 襟元が詰まった長袖だが、シフォン生地の部分が多く、胸元と袖は薄ら透けている。
 後ろ姿を見ると、スカートにも、首から背中にもスリットが入っていて、なかなかにセクシーなデザインだ。

 極薄い黒のストッキングに黒のハイヒール。
 爪にはワイン色のマニキュア。そして真っ赤な口紅。
「...依子さん...すごく綺麗だ。というか色っぽい。そんな格好してたら...」
 譲治はたどたどしく褒める。
「譲治くんもとっても素敵。すごくかっこいい。」
 依子は譲治の胸に手を置いて、顎にキスをした。
 ちょっとついてしまった口紅を指でこすりながら言う。

「やっぱりスタイルいいわ、譲治くん。
 筋肉がきれいについていて。スーツがとても似合う。」
 譲治は格子柄の三揃いにネイビーのネクタイをしめていた。
「コルムと愛さんの結婚式の時の明るいドレスも素敵だったけど、今日のは依子さんのきれいさがよくわかる。
 僕としてはもう出かけなくていいから、ベッドに連れて行きたいな。」
 譲治は玄関に向かった依子を捕まえて後ろから抱きしめ、露わになっている背中にキスをした。
「だめ。今日はとっても楽しみにしてたんだから。」

 そうして2人はおめかしして出かけた。
 まず、譲治が指輪を買ったジュエリーショップへ。
 リサイズは2週間ほどかかる、というので預けてきた。
 譲治がどうしても、その間に依子の左薬指を開けておきたくないから、というので安いファッションリングを代わりに買ってくれた。
 糸のように細いシルバーのリングで、リサイズする本来のリングとも相性が良い。
「うれしい。これもとてもかわいい。ありがとう。」
 依子は指輪を撫でながらとてもうれしそうに譲治を見る。
 譲治はそんな輝くばかりの依子の笑顔を見られただけで満足だった。

 その後、レストランへ。
 ブダペスト中心部の市民公園の隣、グンデルである。
 ブダペストで最も有名なレストランの一つだ。
 向かい合う象のかわいらしくアンティークなデザインである。

「私、このグンデルのシンボルマーク、直接見たかったのよ。
 これってやっぱり動物園のエレファントハウスの向かいだからなのかしらね。」
「たまにはこういうのもいいですね。
 いつも割と清貧を旨とする我々ですけれども。」
 席に通されながら、周囲を見渡して、譲治も満足気だ。
「ほんとに。メリハリは大事よね。
 おしゃれしてお出かけするのって気分が上がるわ。」

 グンデル名物のパローツスープに始まって、郷土料理で統一したディナーコースで、デザートのグンデルパラチンタまでたっぷり堪能する。
 ただし、どれも一皿のボリュームがすごいので、予め頼んで2人でシェアして出してもらった。

「ここの食器ってジョルナイなのよね。それも楽しみだったの。
 ヘレンドはけっこう見たけど、ジョルナイがまとめて使われてるのを見るのは初めて。」
「へえ、これがそうですか。
 お料理と食器も一緒に楽しめるなんて、なんだか得した気分です。」

 昨年、2人で食器の調査のためにヘレンド村に出かけたことを思い出す。
「...僕は、あの時もう、けっこう依子さんのこと好きでしたよ。
 自分で意識してなかったけど、今ならよくわかる。」
 譲治は穏やかな微笑みを浮かべながら言う。
「それを言うなら、私最初から譲治くんを意識してたよ。
 それはいけないことだ、と思ってたから深みにはまらないよう、態度に出ないよう、気をつけてたけど。」
 依子は少し寂し気に言った。

「あなたがいつもフランクでサバサバしていたから、僕は、あなたに男として見てもらってないんだと思ってました。」
「そりゃそうでしょ。
 変に意識しちゃったら譲治くんだって迷惑だと思ったから。
 ただの知人として遠慮なく頼ってほしかったのよ。」
「今はもうあなたは僕のものだと思うと、本当に幸せです。」
 そう言うと譲治は依子がテーブルの上に出していた手にそっと触れた。

「どれもおいしかった! 
 でも2人で分けてちょうど良かったわね。コースだし、1人じゃ絶対無理だわ。」
「たっぷり満足できましたね。
 このパラチンタって本当おいしい。僕好きです。」
 譲治は、これもまた名物の、ラム酒を効かせたチョコソースかけの甘いクレープを差して言った。
「譲治くん甘いの好きよね。私もこのラム酒の香り大好き。」
 はあ、おいしかった、2人は満足して店を出た。

ーーー

 レストラン グンデルは市民公園の向かいで、動物園に面している。
 この動物園の象徴はエレファントハウスという、古風な装飾が美しい建物に面していた。
 夜も遅いのでもちろん動物園は閉まっているが、街灯に照らされた園舎と公園は少し幻想的な雰囲気で、夏の宵のそぞろ歩きにもちょうどいい。

 ワインの酔いも程よくまわって、いつもなら出先の人目のある所で接触などしない譲治が、依子の手を硬く握りしめ、2人はのんびり散歩を楽しむのだった。
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