2 / 125
第2話 嘲笑と模索
しおりを挟む
夕暮れの茜色に染まった空の下、アルトは一人、とぼとぼと家路を歩いていた。
数時間前まで抱いていた期待と興奮は、冷たい失望感へと変わり果て、足取りは鉛のように重い。
ガレスたちの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
『君の働きは無かったものとして』
『今のままではうちのパーティでは扱いきれない』
『リスクが高い』
事実上の、戦力外通告。
冒険者になるという夢は、初日にして砕け散ったのかもしれない。
家のドアを開けると、心配そうな両親と、少し呆れたような顔をした兄が出迎えた。
「アルト、おかえり。どうだったんだ?成人の儀のあと、冒険者の人たちに誘われて行ったんだろう?」
母が心配そうに尋ねる。
父も兄も、言葉にはしないが、アルトの様子から何かを察しているようだった。
「…うん。スライム討伐に」
アルトは俯いたまま、力なく答えた。
「スライム?ははっ、それで、お前の『ダメージ反射』ってのは役に立ったのか?」
兄のヨハンが、少しからかうような口調で言った。
ヨハンは既に20歳で、数年前に「農具修理」という地味ながらも実用的なギフトを授かり、父と共に畑仕事に励んでいる。
アルトが冒険者になるという夢を語るたび、彼はいつも現実を見ろと諌めていた。
「…全然。スライムの攻撃じゃ、僕が受けるダメージも、反射するダメージも、ほとんど無くて…」
アルトの声は、どんどん小さくなっていく。
「だろうな。そんな都合のいいギフトがあるわけないだろ。攻撃を受けたらダメージを返す?ふん、結局は自分が痛い思いをするだけじゃないか。大人しく畑仕事でも手伝え」
ヨハンの言葉が、ぐさりと胸に突き刺さる。
父は黙ってヨハンを睨んだが、アルトを慰める言葉も出てこないようだった。
母だけが、
「まあまあ、ヨハン。アルトだって、今日初めてだったんだから…ね、アルト、夕飯にしましょう?」
と、無理に明るく振る舞った。
その日の夕食は、気まずい沈黙の中で過ぎていった。
翌日、アルトが村に出ると、昨日とは明らかに違う空気が流れているのを感じた。
すれ違う村人たちの視線が、どこか好奇と、そして憐憫の色を帯びている。
子供たちが、アルトを指差して何か囁き合っているのが聞こえた。
「あ、昨日の『ダメージ反射』の人だ」
「スライムも倒せなかったんだって」
「へーんなのー」
大人たちも、遠巻きにアルトを見ながらひそひそと話している。
「聞いたかい?アルト君のギフト、全然使えないらしいよ」
「あれだけ派手な光だったのにねぇ。見かけ倒しってやつかね」
「ガレスさんたちのパーティも、一日で追い出されたそうだ」
昨日まで、アルトを「期待の新星」だとか「珍しいギフトの持ち主」だとか言って持ち上げていた人々が、手のひらを返したように噂話に興じている。
アルトは顔を上げることができず、逃げるように家へと引き返した。
自室のベッドに倒れ込み、天井を見上げる。
悔しさと、情けなさで涙が溢れてきた。
どうして、僕のギフトはこんなに役に立たないんだろう。
皆をがっかりさせて、笑いものにされて。
冒険者になるなんて、やっぱり夢物語だったんだ。
しばらくして、少し落ち着きを取り戻したアルトは、ふと疑問に思った。
本当に、このギフトは全く使えないのだろうか?
『ダメージ反射』。
敵から受けたダメージの、1割を返す。
確かに、スライムのような弱い相手には効果がない。
でも、もし、もっと強い攻撃を受けたら?
例えば、大男に殴られたら、それなりに痛いダメージを受けるはずだ。
その1割なら、相手にもある程度のダメージを与えられるんじゃないだろうか?
「そうだ…強い攻撃なら…」
アルトはベッドから跳ね起きた。
完全に役に立たないわけじゃないのかもしれない。
問題は、どうやって「強い攻撃」を受けるかだ。
わざわざ危険な魔物に殴られに行くわけにもいかない。
それに、1割返すだけでは、依然として自分が受けるダメージの方が圧倒的に大きい。
例えば、100のダメージを受けたら、相手には10しか返せない。
自分が瀕死になるような攻撃を受けたとしても、相手は少し痛い程度かもしれない。
これでは、やはり戦闘では使い物にならないのではないか。
「うーん…」
アルトは再び頭を抱えた。
何か、もっと別の使い方はないだろうか。
ギフトは戦闘だけじゃない。
生活に役立つものだってたくさんある。
もしかしたら、「ダメージ反射」にも、戦闘以外の使い道があるのかもしれない。
…いや、ダメージを反射する、なんて能力が、日常生活の役に立つとは思えない。
考えれば考えるほど、袋小路に迷い込んだような気分になる。
もしかしたら、ギフトにはレベルのようなものがあって、使っているうちに反射率が上がったりするのだろうか?
エルリック神父は、ギフトについて詳しいかもしれない。
聞いてみようか。
いや、でも、また「使えないギフトだ」と再確認させられるだけかもしれない。
アルトは意を決して、村の広場にある冒険者ギルドへ向かった。
昨日、あれだけ多くのパーティから勧誘されたのだ。
ガレスたちのパーティはダメだったとしても、他のパーティなら、あるいは…。
ギルドの扉を開けると、昼間から酒を飲んでいる冒険者たちの喧騒が耳に飛び込んできた。
アルトの姿を認めると、数人がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「よう、『反射』のアルト君じゃないか。もう次のパーティは見つかったのかい?」
「スライム相手に無傷で勝てる、無敵のギフトなんだってな?」
嘲笑が混じった言葉に、アルトは顔を赤らめながらも、カウンターに向かった。
カウンターには、恰幅の良いギルドマスターが座っている。
「あの、すみません。パーティに入れてくれるところを探しているんですが…」
アルトがおずおずと尋ねると、ギルドマスターは大きなため息をついた。
「ああ、君か。ダメージ反射の。悪いがね、坊主。君のギフトの噂はもう広まってる。正直、今の君を欲しがるパーティは、ここには無いだろうな」
「で、でも、強い攻撃なら、ちゃんと反射できるはずです!盾役としてなら…」
「盾役?冗談じゃない。ダメージを1割しか返せない盾なんて、ただの的だ。それに、君自身が攻撃する手段を持っていないんだろう?パーティのお荷物になるだけだ。悪いことは言わん、冒険者は諦めて、別の道を探しな」
ギルドマスターの言葉は、冷たく、そして現実的だった。
アルトは、もはや反論する気力も失い、すごすごとギルドを後にした。
完全に打ちのめされ、村の外れにある小川のほとりに座り込んでいると、後ろから優しい声がかけられた。
「アルト?こんなところでどうしたの?」
振り返ると、幼馴染のリナが心配そうな顔で立っていた。
彼女は、小さな籠いっぱいに薬草を摘んでいた。
「リナ…」
アルトは、リナの顔を見ると、堪えていた涙がまた溢れそうになった。
「昨日、ガレスさんたちのパーティ、ダメだったって聞いたよ…」
リナはアルトの隣にそっと座った。
「うん…全然、役に立てなくて…追い出されちゃった。僕のギフト、やっぱりダメみたいだ」
「そんなことないよ!」
リナは、きっぱりとした口調で言った。
「神様がアルトにくれたギフトなんだよ?きっと、何か意味があるはずだよ。ただ、まだアルトがその使い方を見つけられていないだけかもしれないじゃない」
「でも、スライムにすら効かないんだよ?どう考えたって、使い道なんて…」
「諦めちゃだめだよ、アルト。アルトは、昔からそうじゃない。一度決めたことは、なかなか諦めないでしょ?冒険者になりたいって夢も、ずっと言ってたじゃない」
リナの言葉は、不思議とアルトの心に染み込んできた。
そうだ。
僕は、冒険者になりたかったんだ。
こんなところで、諦めていいはずがない。
「それにね、私も『治癒(小)』だけど、まだ、うまく使えないんだよ。ちょっとした切り傷を治すのにも、すごく時間がかかったりして。でも、薬師のおばあさんに教えてもらいながら練習したら、少しずつだけど、早く、きれいに治せるようになってきたの」
リナは、自分の手のひらを見つめながら言った。
「ギフトだって、訓練次第で少しは使えるようになるって、神父様も言ってたでしょ?アルトのギフトも、何か訓練する方法があるかもしれないよ。例えば、わざと何かにぶつかってみて、反射する感覚を掴むとか?」
「わざとぶつかる…?」
アルトは、リナの言葉に少しだけ希望の光を見た気がした。
確かに、ギフトの感覚を掴む、という発想はなかった。
ただ攻撃を受けるだけではなく、もっと能動的にギフトと向き合ってみる必要があるのかもしれない。
「ありがとう、リナ。なんだか、少し元気が出てきたよ」
アルトは、涙を拭って、リナに微笑みかけた。
「よかった。アルトは、笑ってる方がアルトらしいよ」
リナも嬉しそうに笑った。
「私、これからも薬草集めとか、治癒の練習とかでこの辺りにいるから、何かあったら、いつでも話聞くからね」
「うん、ありがとう」
リナと別れた後も、アルトはしばらく小川のほとりに座って考えていた。
状況が好転したわけではない。
相変わらず、ギフトは使い物にならず、パーティに入れてくれる仲間もいない。
村人たちの視線も、明日になればまた冷たいだろう。
でも、完全に希望が潰えたわけではない。
リナが言ってくれたように、まだ諦めるのは早い。
この「ダメージ反射」というギフトと、もっと向き合ってみよう。
どうすれば、この力を活かせるのか。
どうすれば、成長させることができるのか。
答えはすぐには見つからないかもしれない。
それでも、何かできることがあるはずだ。
アルトは、固く拳を握りしめ、ゆっくりと立ち上がった。
嘲笑や侮蔑に立ち向かう覚悟は、まだできていないかもしれない。
けれど、自分のギフトから逃げることだけは、もうやめよう。
そう、心に誓った。
数時間前まで抱いていた期待と興奮は、冷たい失望感へと変わり果て、足取りは鉛のように重い。
ガレスたちの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
『君の働きは無かったものとして』
『今のままではうちのパーティでは扱いきれない』
『リスクが高い』
事実上の、戦力外通告。
冒険者になるという夢は、初日にして砕け散ったのかもしれない。
家のドアを開けると、心配そうな両親と、少し呆れたような顔をした兄が出迎えた。
「アルト、おかえり。どうだったんだ?成人の儀のあと、冒険者の人たちに誘われて行ったんだろう?」
母が心配そうに尋ねる。
父も兄も、言葉にはしないが、アルトの様子から何かを察しているようだった。
「…うん。スライム討伐に」
アルトは俯いたまま、力なく答えた。
「スライム?ははっ、それで、お前の『ダメージ反射』ってのは役に立ったのか?」
兄のヨハンが、少しからかうような口調で言った。
ヨハンは既に20歳で、数年前に「農具修理」という地味ながらも実用的なギフトを授かり、父と共に畑仕事に励んでいる。
アルトが冒険者になるという夢を語るたび、彼はいつも現実を見ろと諌めていた。
「…全然。スライムの攻撃じゃ、僕が受けるダメージも、反射するダメージも、ほとんど無くて…」
アルトの声は、どんどん小さくなっていく。
「だろうな。そんな都合のいいギフトがあるわけないだろ。攻撃を受けたらダメージを返す?ふん、結局は自分が痛い思いをするだけじゃないか。大人しく畑仕事でも手伝え」
ヨハンの言葉が、ぐさりと胸に突き刺さる。
父は黙ってヨハンを睨んだが、アルトを慰める言葉も出てこないようだった。
母だけが、
「まあまあ、ヨハン。アルトだって、今日初めてだったんだから…ね、アルト、夕飯にしましょう?」
と、無理に明るく振る舞った。
その日の夕食は、気まずい沈黙の中で過ぎていった。
翌日、アルトが村に出ると、昨日とは明らかに違う空気が流れているのを感じた。
すれ違う村人たちの視線が、どこか好奇と、そして憐憫の色を帯びている。
子供たちが、アルトを指差して何か囁き合っているのが聞こえた。
「あ、昨日の『ダメージ反射』の人だ」
「スライムも倒せなかったんだって」
「へーんなのー」
大人たちも、遠巻きにアルトを見ながらひそひそと話している。
「聞いたかい?アルト君のギフト、全然使えないらしいよ」
「あれだけ派手な光だったのにねぇ。見かけ倒しってやつかね」
「ガレスさんたちのパーティも、一日で追い出されたそうだ」
昨日まで、アルトを「期待の新星」だとか「珍しいギフトの持ち主」だとか言って持ち上げていた人々が、手のひらを返したように噂話に興じている。
アルトは顔を上げることができず、逃げるように家へと引き返した。
自室のベッドに倒れ込み、天井を見上げる。
悔しさと、情けなさで涙が溢れてきた。
どうして、僕のギフトはこんなに役に立たないんだろう。
皆をがっかりさせて、笑いものにされて。
冒険者になるなんて、やっぱり夢物語だったんだ。
しばらくして、少し落ち着きを取り戻したアルトは、ふと疑問に思った。
本当に、このギフトは全く使えないのだろうか?
『ダメージ反射』。
敵から受けたダメージの、1割を返す。
確かに、スライムのような弱い相手には効果がない。
でも、もし、もっと強い攻撃を受けたら?
例えば、大男に殴られたら、それなりに痛いダメージを受けるはずだ。
その1割なら、相手にもある程度のダメージを与えられるんじゃないだろうか?
「そうだ…強い攻撃なら…」
アルトはベッドから跳ね起きた。
完全に役に立たないわけじゃないのかもしれない。
問題は、どうやって「強い攻撃」を受けるかだ。
わざわざ危険な魔物に殴られに行くわけにもいかない。
それに、1割返すだけでは、依然として自分が受けるダメージの方が圧倒的に大きい。
例えば、100のダメージを受けたら、相手には10しか返せない。
自分が瀕死になるような攻撃を受けたとしても、相手は少し痛い程度かもしれない。
これでは、やはり戦闘では使い物にならないのではないか。
「うーん…」
アルトは再び頭を抱えた。
何か、もっと別の使い方はないだろうか。
ギフトは戦闘だけじゃない。
生活に役立つものだってたくさんある。
もしかしたら、「ダメージ反射」にも、戦闘以外の使い道があるのかもしれない。
…いや、ダメージを反射する、なんて能力が、日常生活の役に立つとは思えない。
考えれば考えるほど、袋小路に迷い込んだような気分になる。
もしかしたら、ギフトにはレベルのようなものがあって、使っているうちに反射率が上がったりするのだろうか?
エルリック神父は、ギフトについて詳しいかもしれない。
聞いてみようか。
いや、でも、また「使えないギフトだ」と再確認させられるだけかもしれない。
アルトは意を決して、村の広場にある冒険者ギルドへ向かった。
昨日、あれだけ多くのパーティから勧誘されたのだ。
ガレスたちのパーティはダメだったとしても、他のパーティなら、あるいは…。
ギルドの扉を開けると、昼間から酒を飲んでいる冒険者たちの喧騒が耳に飛び込んできた。
アルトの姿を認めると、数人がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「よう、『反射』のアルト君じゃないか。もう次のパーティは見つかったのかい?」
「スライム相手に無傷で勝てる、無敵のギフトなんだってな?」
嘲笑が混じった言葉に、アルトは顔を赤らめながらも、カウンターに向かった。
カウンターには、恰幅の良いギルドマスターが座っている。
「あの、すみません。パーティに入れてくれるところを探しているんですが…」
アルトがおずおずと尋ねると、ギルドマスターは大きなため息をついた。
「ああ、君か。ダメージ反射の。悪いがね、坊主。君のギフトの噂はもう広まってる。正直、今の君を欲しがるパーティは、ここには無いだろうな」
「で、でも、強い攻撃なら、ちゃんと反射できるはずです!盾役としてなら…」
「盾役?冗談じゃない。ダメージを1割しか返せない盾なんて、ただの的だ。それに、君自身が攻撃する手段を持っていないんだろう?パーティのお荷物になるだけだ。悪いことは言わん、冒険者は諦めて、別の道を探しな」
ギルドマスターの言葉は、冷たく、そして現実的だった。
アルトは、もはや反論する気力も失い、すごすごとギルドを後にした。
完全に打ちのめされ、村の外れにある小川のほとりに座り込んでいると、後ろから優しい声がかけられた。
「アルト?こんなところでどうしたの?」
振り返ると、幼馴染のリナが心配そうな顔で立っていた。
彼女は、小さな籠いっぱいに薬草を摘んでいた。
「リナ…」
アルトは、リナの顔を見ると、堪えていた涙がまた溢れそうになった。
「昨日、ガレスさんたちのパーティ、ダメだったって聞いたよ…」
リナはアルトの隣にそっと座った。
「うん…全然、役に立てなくて…追い出されちゃった。僕のギフト、やっぱりダメみたいだ」
「そんなことないよ!」
リナは、きっぱりとした口調で言った。
「神様がアルトにくれたギフトなんだよ?きっと、何か意味があるはずだよ。ただ、まだアルトがその使い方を見つけられていないだけかもしれないじゃない」
「でも、スライムにすら効かないんだよ?どう考えたって、使い道なんて…」
「諦めちゃだめだよ、アルト。アルトは、昔からそうじゃない。一度決めたことは、なかなか諦めないでしょ?冒険者になりたいって夢も、ずっと言ってたじゃない」
リナの言葉は、不思議とアルトの心に染み込んできた。
そうだ。
僕は、冒険者になりたかったんだ。
こんなところで、諦めていいはずがない。
「それにね、私も『治癒(小)』だけど、まだ、うまく使えないんだよ。ちょっとした切り傷を治すのにも、すごく時間がかかったりして。でも、薬師のおばあさんに教えてもらいながら練習したら、少しずつだけど、早く、きれいに治せるようになってきたの」
リナは、自分の手のひらを見つめながら言った。
「ギフトだって、訓練次第で少しは使えるようになるって、神父様も言ってたでしょ?アルトのギフトも、何か訓練する方法があるかもしれないよ。例えば、わざと何かにぶつかってみて、反射する感覚を掴むとか?」
「わざとぶつかる…?」
アルトは、リナの言葉に少しだけ希望の光を見た気がした。
確かに、ギフトの感覚を掴む、という発想はなかった。
ただ攻撃を受けるだけではなく、もっと能動的にギフトと向き合ってみる必要があるのかもしれない。
「ありがとう、リナ。なんだか、少し元気が出てきたよ」
アルトは、涙を拭って、リナに微笑みかけた。
「よかった。アルトは、笑ってる方がアルトらしいよ」
リナも嬉しそうに笑った。
「私、これからも薬草集めとか、治癒の練習とかでこの辺りにいるから、何かあったら、いつでも話聞くからね」
「うん、ありがとう」
リナと別れた後も、アルトはしばらく小川のほとりに座って考えていた。
状況が好転したわけではない。
相変わらず、ギフトは使い物にならず、パーティに入れてくれる仲間もいない。
村人たちの視線も、明日になればまた冷たいだろう。
でも、完全に希望が潰えたわけではない。
リナが言ってくれたように、まだ諦めるのは早い。
この「ダメージ反射」というギフトと、もっと向き合ってみよう。
どうすれば、この力を活かせるのか。
どうすれば、成長させることができるのか。
答えはすぐには見つからないかもしれない。
それでも、何かできることがあるはずだ。
アルトは、固く拳を握りしめ、ゆっくりと立ち上がった。
嘲笑や侮蔑に立ち向かう覚悟は、まだできていないかもしれない。
けれど、自分のギフトから逃げることだけは、もうやめよう。
そう、心に誓った。
80
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる