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第55話 幻惑の鱗粉と精神の戦い
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霧が渦巻く、森の奥深くの開けた場所。
そこに舞うのは、巨大で、色とりどりの羽を持つ異様な蛾たち。
フォギーモス。
その羽ばたきと共に撒き散らされるキラキラとした鱗粉は、美しい光景とは裏腹に、アルトの五感を狂わせ、精神を蝕む幻覚の元凶だった。
数は4匹。
それぞれが異なる軌道を描きながら、アルトの周囲をゆっくりと、しかし確実に包囲するように飛翔している。
(これが……惑わしの霧の原因……!)
アルトはランタンの光を頼りに、敵の姿を捉えようとするが、濃霧と舞い散る鱗粉が視界を遮り、その正確な位置や動きを把握するのは困難だった。
用意していた布で鼻と口をしっかりと覆ってはいるものの、霧と共に漂う甘く不気味な匂いが、意識の奥底にまとわりつくように感じられる。
フォギーモスたちは、アルトという侵入者を認識したのだろう。
一斉に羽ばたきを強め、周囲の鱗粉の濃度がさらに増していく。
途端に、アルトの脳裏に強烈な幻覚が流れ込んできた。
地面が、まるで生きているかのように波打ち始める。
周囲の木々が、おぞましい触手を持つ怪物へと姿を変え、アルトに迫ってくる。
目の前で舞うフォギーモスの数が、10匹、20匹と、際限なく増殖していくように見える。
背後からは、あのホブゴブリンの獰猛な咆哮が聞こえ、目の前には、心配そうに自分を呼ぶリナの姿が、霧の中に儚く現れては消える。
「くっ……!しっかりしろ、俺!」
アルトは歯を食いしばり、奥歯でリナにもらった気付け薬のハーブを強く噛みしめた。
鼻腔を突き抜けるような強い刺激が、かろうじて現実への意識を繋ぎ止めてくれる。
バルガスのアドバイスが脳裏をよぎる。「幻覚は心の隙につけ込む。常に冷静さを保て」。
分かってはいる。
しかし、この絶え間なく襲い来る幻覚の奔流の中で、冷静さを保つのは至難の業だった。
(このままじゃ、幻覚に呑まれる……!何か、この状況を打開する方法は……)
アルトは、最後の希望を託し、ギフトの力に賭けた。
「衝撃波(仮)」!
両腕を前方に突き出し、意識を集中させる。
狙うのは、自分を取り囲む濃霧と鱗粉そのものだ!
「――吹き飛べっ!!」
ブオオォォン!!
これまでとは比較にならないほど強く意識して放たれた衝撃波が、アルトを中心に放射状に広がった!
周囲の濃霧と、キラキラと舞っていた鱗粉が、一瞬、しかし広範囲にわたって吹き飛ばされる!
わずかな時間ではあったが、アルトの周囲にクリアな空間が生まれ、敵の位置と数が明確になった。
そして、何よりも、まとわりついていた幻覚が、一瞬だけ嘘のように薄らいだのだ。
「いける!」
アルトはこの瞬間を逃さなかった。
最も近くにいたフォギーモスに狙いを定め、一気に距離を詰める!
驚いたフォギーモスは、その巨大な羽をばたつかせ、体当たりに近い形でアルトにぶつかってきた。
それは、アルトにとって待ち望んだ物理的な接触だった。
(チャンス!)
バックラーでその衝撃をしっかりと受け止め、即座にカウンター反射を発動!
「ギィィィッ!?」
フォギーモスは、甲高い、虫の鳴き声とも違う奇妙な悲鳴(?)を上げた。
反射ダメージを受けた美しい羽が、まるで焼け焦げたかのように黒く変色し、その飛行がわずかに乱れる。
ダメージは、確実に通っている!
これだ、とアルトは確信した。
この敵に対する有効な戦術は、衝撃波で鱗粉と霧を払い、視界を確保しつつ敵の位置を特定。
そして、相手が物理攻撃を仕掛けてきた瞬間を捉え、反射で確実にダメージを与えていくことだ。
アルトはこの戦術を繰り返した。
衝撃波を放ち、クリアになった視界で敵を探し、接近する。
フォギーモスは、ひらひらと不規則に飛び回りながらも、時折、体当たりや、意外にも硬い羽での打撃を繰り出してくる。
アルトはそれらを冷静に見極め、バックラーと剣で防御し、そして確実に反射ダメージを蓄積させていった。
ショートソードでの攻撃も試みる。
鱗粉を撒き散らす巨大な羽は、狙いを定めにくい上に、斬ってもあまり手応えがない。
しかし、胴体部分は比較的柔らかく、剣による攻撃も有効なようだ。
反射で怯ませ、動きが鈍った隙を突き、アルトはショートソードで胴体を的確に斬りつける。
何度か浅い傷を与えることに成功した。
戦いは、困難を極めた。
常に幻覚の囁きと戦いながら、視界の悪い中で敵の動きを見極め、鱗粉を吸わないように呼吸にも注意しなければならない。
精神的な消耗が、肉体的な疲労以上にアルトを苦しめた。
それでも、アルトは決して諦めなかった。
衝撃波で視界を開き、幻覚を振り払い、物理攻撃を誘って反射を決め、隙を見て剣で追撃する。
その一連の動作を、アルトは一心不乱に繰り返した。
そして、ついに――
一体目のフォギーモスが、度重なるダメージに耐えきれず、キラキラとした鱗粉を最後の輝きのように撒き散らしながら、力なく地面に墜ちていった。
その美しい羽は黒く焼け焦げ、もう動くことはない。
「よし……まず、一体……!」
アルトは肩で息をしながら、勝利を確信する。
一体倒したことで、周囲に漂う鱗粉の濃度が、ほんの少しだけ薄くなったような気がした。
そして、あれほど激しかった幻覚も、わずかに弱まったかもしれない。
「あと……三匹!」
アルトはバックラーを構え直し、残りのフォギーモスに向き直る。
精神を蝕む幻覚との戦いは、まだ終わってはいない。
しかし、アルトは確実に敵の数を減らし、勝利への光明を見出しつつあった。
ギフト【ダメージ反射】の応用、そして何よりも、極限状況下でも揺るがない強い精神力。
それらを武器に、アルトはこの「惑わしの森」の悪夢を、必ず打ち破ってみせる。
そこに舞うのは、巨大で、色とりどりの羽を持つ異様な蛾たち。
フォギーモス。
その羽ばたきと共に撒き散らされるキラキラとした鱗粉は、美しい光景とは裏腹に、アルトの五感を狂わせ、精神を蝕む幻覚の元凶だった。
数は4匹。
それぞれが異なる軌道を描きながら、アルトの周囲をゆっくりと、しかし確実に包囲するように飛翔している。
(これが……惑わしの霧の原因……!)
アルトはランタンの光を頼りに、敵の姿を捉えようとするが、濃霧と舞い散る鱗粉が視界を遮り、その正確な位置や動きを把握するのは困難だった。
用意していた布で鼻と口をしっかりと覆ってはいるものの、霧と共に漂う甘く不気味な匂いが、意識の奥底にまとわりつくように感じられる。
フォギーモスたちは、アルトという侵入者を認識したのだろう。
一斉に羽ばたきを強め、周囲の鱗粉の濃度がさらに増していく。
途端に、アルトの脳裏に強烈な幻覚が流れ込んできた。
地面が、まるで生きているかのように波打ち始める。
周囲の木々が、おぞましい触手を持つ怪物へと姿を変え、アルトに迫ってくる。
目の前で舞うフォギーモスの数が、10匹、20匹と、際限なく増殖していくように見える。
背後からは、あのホブゴブリンの獰猛な咆哮が聞こえ、目の前には、心配そうに自分を呼ぶリナの姿が、霧の中に儚く現れては消える。
「くっ……!しっかりしろ、俺!」
アルトは歯を食いしばり、奥歯でリナにもらった気付け薬のハーブを強く噛みしめた。
鼻腔を突き抜けるような強い刺激が、かろうじて現実への意識を繋ぎ止めてくれる。
バルガスのアドバイスが脳裏をよぎる。「幻覚は心の隙につけ込む。常に冷静さを保て」。
分かってはいる。
しかし、この絶え間なく襲い来る幻覚の奔流の中で、冷静さを保つのは至難の業だった。
(このままじゃ、幻覚に呑まれる……!何か、この状況を打開する方法は……)
アルトは、最後の希望を託し、ギフトの力に賭けた。
「衝撃波(仮)」!
両腕を前方に突き出し、意識を集中させる。
狙うのは、自分を取り囲む濃霧と鱗粉そのものだ!
「――吹き飛べっ!!」
ブオオォォン!!
これまでとは比較にならないほど強く意識して放たれた衝撃波が、アルトを中心に放射状に広がった!
周囲の濃霧と、キラキラと舞っていた鱗粉が、一瞬、しかし広範囲にわたって吹き飛ばされる!
わずかな時間ではあったが、アルトの周囲にクリアな空間が生まれ、敵の位置と数が明確になった。
そして、何よりも、まとわりついていた幻覚が、一瞬だけ嘘のように薄らいだのだ。
「いける!」
アルトはこの瞬間を逃さなかった。
最も近くにいたフォギーモスに狙いを定め、一気に距離を詰める!
驚いたフォギーモスは、その巨大な羽をばたつかせ、体当たりに近い形でアルトにぶつかってきた。
それは、アルトにとって待ち望んだ物理的な接触だった。
(チャンス!)
バックラーでその衝撃をしっかりと受け止め、即座にカウンター反射を発動!
「ギィィィッ!?」
フォギーモスは、甲高い、虫の鳴き声とも違う奇妙な悲鳴(?)を上げた。
反射ダメージを受けた美しい羽が、まるで焼け焦げたかのように黒く変色し、その飛行がわずかに乱れる。
ダメージは、確実に通っている!
これだ、とアルトは確信した。
この敵に対する有効な戦術は、衝撃波で鱗粉と霧を払い、視界を確保しつつ敵の位置を特定。
そして、相手が物理攻撃を仕掛けてきた瞬間を捉え、反射で確実にダメージを与えていくことだ。
アルトはこの戦術を繰り返した。
衝撃波を放ち、クリアになった視界で敵を探し、接近する。
フォギーモスは、ひらひらと不規則に飛び回りながらも、時折、体当たりや、意外にも硬い羽での打撃を繰り出してくる。
アルトはそれらを冷静に見極め、バックラーと剣で防御し、そして確実に反射ダメージを蓄積させていった。
ショートソードでの攻撃も試みる。
鱗粉を撒き散らす巨大な羽は、狙いを定めにくい上に、斬ってもあまり手応えがない。
しかし、胴体部分は比較的柔らかく、剣による攻撃も有効なようだ。
反射で怯ませ、動きが鈍った隙を突き、アルトはショートソードで胴体を的確に斬りつける。
何度か浅い傷を与えることに成功した。
戦いは、困難を極めた。
常に幻覚の囁きと戦いながら、視界の悪い中で敵の動きを見極め、鱗粉を吸わないように呼吸にも注意しなければならない。
精神的な消耗が、肉体的な疲労以上にアルトを苦しめた。
それでも、アルトは決して諦めなかった。
衝撃波で視界を開き、幻覚を振り払い、物理攻撃を誘って反射を決め、隙を見て剣で追撃する。
その一連の動作を、アルトは一心不乱に繰り返した。
そして、ついに――
一体目のフォギーモスが、度重なるダメージに耐えきれず、キラキラとした鱗粉を最後の輝きのように撒き散らしながら、力なく地面に墜ちていった。
その美しい羽は黒く焼け焦げ、もう動くことはない。
「よし……まず、一体……!」
アルトは肩で息をしながら、勝利を確信する。
一体倒したことで、周囲に漂う鱗粉の濃度が、ほんの少しだけ薄くなったような気がした。
そして、あれほど激しかった幻覚も、わずかに弱まったかもしれない。
「あと……三匹!」
アルトはバックラーを構え直し、残りのフォギーモスに向き直る。
精神を蝕む幻覚との戦いは、まだ終わってはいない。
しかし、アルトは確実に敵の数を減らし、勝利への光明を見出しつつあった。
ギフト【ダメージ反射】の応用、そして何よりも、極限状況下でも揺るがない強い精神力。
それらを武器に、アルトはこの「惑わしの森」の悪夢を、必ず打ち破ってみせる。
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