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第89話 決着、鉱山の支配者
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ゴブリンロードが振り上げた巨大なウォーハンマー。
その先端には、アルトたち三人の命運を容易く砕いてしまいそうな、圧倒的な破壊の予感が凝縮されていた。
洞窟の広間に、息をのむような、張り詰めた静寂が満ちる。
「来るぞ!」
ゴルドーの野太い声が響く。
彼は巨大な戦斧を、まるで大地に根を張るかのように力強く構え、迫り来る衝撃に備えた。
ノエルは、ロードの足元に最後の抵抗とばかりに、何か黒い液体のようなものを素早く撒いた。それがロードの動きをわずかにでも阻害することを祈って。
そしてアルトは、パーティの盾として、そして逆転の切り札として、バックラーと黒曜の剣を体の前で交差させるように構えた。
ゴルドーのわずかに斜め前。
ロードの狙いは、おそらく最も頑強なゴルドーだろう。
だが、その一撃を受け止め、そしてカウンターの起点とするのは、自分の役目だ!
ウォーハンマーが、唸りを上げて振り下ろされる!
狙いは、やはりゴルドー!
しかし、アルトはその軌道上に飛び込み、剣と盾でその一撃を受け止めた!
ズガアアアアアム!!!
これまで経験したことのない、全身の骨が軋み、内臓が揺さぶられるかのような凄まじい衝撃!
アルトの視界が一瞬、完全に白く染まる。
バックラーを持つ左腕は、もはや感覚がなく、革鎧の胸当てには、バキリ、と致命的な亀裂が入る音が響いた。
黒曜の剣も、その衝撃に耐えきれず、手から弾き飛ばされそうになるのを、必死に握りしめる。
(耐えろ……耐えきれ……そして、返せッ!!)
意識が遠のきかける。
体の至る所から悲鳴が上がっている。
それでも、アルトはここで倒れるわけにはいかなかった。
仲間がいる。
守らなければならない。
そして、ここで負けるわけにはいかないという、冒険者としての、いや、一人の人間としての意地があった。
その強い、強い想いが引き金となったのか。
アルトの奥底で眠っていた力が、再び呼応した。
ギフト【ダメージ反射】が、これまでとは比較にならないほどの、眩い蒼白い閃光を放ったのだ!
閃光は、アルトが受け止めたウォーハンマーの衝撃と共に、凄まじい勢いでゴブリンロードの全身へと逆流していく!
「グ……ギギギ……ッ!?」
ゴブリンロードの巨体が、まるで雷に打たれたかのように、激しく痙攣した。
その赤い瞳には、驚愕と苦痛、そして理解不能な現象への恐怖の色が浮かんでいる。
動きが、完全に止まったわけではない。
しかし、明らかにその動きは硬直し、体が意志に反して震えている。
あの時、ホブゴブリンに見せたものよりも、さらに強力な麻痺効果(あるいはそれに近い行動阻害効果)が、確かに発動したのだ!
この千載一遇の好機を、アルトの仲間たちが見逃すはずはなかった!
「今じゃあああーーっ!!」
ゴルドーが、回復した力で雄叫びを上げ、硬直したゴブリンロードの、防具のない脇腹めがけて、巨大な戦斧を渾身の力で叩き込んだ!
ゴシャアアッ!という鈍い、肉を断ち切るような音が響き渡り、ロードの巨体が大きくくの字に曲がる!
同時に、ノエルが音もなくロードの背後に回り込んでいた。
彼女は、いつの間にか両手に逆手に持っていた短剣を、ロードの首筋、鎧のわずかな隙間へと、深々と突き立てていた!
致命的な一撃。
そして、アルト自身も、最後の力を振り絞った。
硬直から回復しかけ、苦痛に顔を歪めるロードに対し、もはや防御を顧みることなく、黒曜の剣を、がら空きになったその心臓部めがけて、全力で突き出した!
ボルガンが刻んでくれた浄化のルーンが、一際強く、淡い光を放つ!
ズブリ!
確かな、そして重い手応え。
剣先は、ロードの硬い皮膚と骨を貫き、その生命の核を確実に捉えた。
三方向からの、完璧な連携による同時攻撃!
「ゴ…………ア…………ァ…………」
ゴブリンロードは、もはや声にならない呻き声を漏らし、その赤い瞳から急速に光が失われていく。
信じられないといった表情で、自分を貫いた剣や斧を見下ろし、そして、ゆっくりと、しかし確実に、その巨体を大地へと沈ませていった。
ドシンッ、という重い地響きのような音と共に、ゴブリンロードは完全に動きを止めた。
もう、二度と立ち上がることはないだろう。
鉱山の広間に、再び静寂が訪れた。
残ったのは、揺らめく松明の炎と、荒い息遣いを繰り返すアルト、ゴルドー、ノエルの三人だけ。
彼らは、互いの顔を見合わせ、そして、言葉なく頷き合った。
激しい戦いは、終わったのだ。
「……ふん、まあ、こんなもんじゃろう。手間取らせやがって、ただのデカいゴブリンのくせによ」
ゴルドーが、戦斧を肩に担ぎながら、いつものように悪態をついた。
しかし、その表情には、強敵を打ち破った満足感と、仲間への確かな信頼の色が浮かんでいる。
「若造、お前のあの最後の妙な光、あれで奴の動きが一瞬止まったぞ。また何かやったのか?まったく、変なギフトを持ってるな、お前さんは。だがまあ、おかげで助かったわい」
ノエルも、アルトの方を見て、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「……アルト、すごい。…助かった」
その無表情の中に、かすかな称賛と、感謝の色が見えた気がした。
アルトもまた、二人に感謝の気持ちを伝えた。
「二人のおかげだよ。俺一人じゃ、絶対に勝てなかった」
この勝利は、アルト一人の力ではない。
ゴルドーの圧倒的なパワーと壁役、ノエルの的確なサポート、そして三人の揺るぎない連携があったからこそ、掴み取れたものだ。
この死闘を共に乗り越えたことで、彼らの間には、言葉を超えた確かな絆が生まれていた。
しばしの休息の後、三人は討伐の証拠と戦利品の回収に取り掛かった。
ゴブリンロードの頭部を切り離すのは、さすがに骨が折れる作業だったため、代わりに彼が持っていた禍々しいウォーハンマーと、リーダーの証であると思われる、奇妙な模様が描かれた大きな牙を一本、そして身に着けていた粗末ながらも丈夫そうな革の装飾品などを回収した。
他に価値のありそうなものがないか、広間や通路を簡単に探索したが、ゴブリンたちの根城らしく、めぼしいものはほとんど見当たらなかった。
これ以上、この不気味な鉱山跡に長居は無用だ。
三人は、疲労困憊の体を引きずりながら、互いを支え合うようにして、暗い坑道を抜け、地上への帰路についた。
外の空気は、驚くほど清々しく感じられた。
その先端には、アルトたち三人の命運を容易く砕いてしまいそうな、圧倒的な破壊の予感が凝縮されていた。
洞窟の広間に、息をのむような、張り詰めた静寂が満ちる。
「来るぞ!」
ゴルドーの野太い声が響く。
彼は巨大な戦斧を、まるで大地に根を張るかのように力強く構え、迫り来る衝撃に備えた。
ノエルは、ロードの足元に最後の抵抗とばかりに、何か黒い液体のようなものを素早く撒いた。それがロードの動きをわずかにでも阻害することを祈って。
そしてアルトは、パーティの盾として、そして逆転の切り札として、バックラーと黒曜の剣を体の前で交差させるように構えた。
ゴルドーのわずかに斜め前。
ロードの狙いは、おそらく最も頑強なゴルドーだろう。
だが、その一撃を受け止め、そしてカウンターの起点とするのは、自分の役目だ!
ウォーハンマーが、唸りを上げて振り下ろされる!
狙いは、やはりゴルドー!
しかし、アルトはその軌道上に飛び込み、剣と盾でその一撃を受け止めた!
ズガアアアアアム!!!
これまで経験したことのない、全身の骨が軋み、内臓が揺さぶられるかのような凄まじい衝撃!
アルトの視界が一瞬、完全に白く染まる。
バックラーを持つ左腕は、もはや感覚がなく、革鎧の胸当てには、バキリ、と致命的な亀裂が入る音が響いた。
黒曜の剣も、その衝撃に耐えきれず、手から弾き飛ばされそうになるのを、必死に握りしめる。
(耐えろ……耐えきれ……そして、返せッ!!)
意識が遠のきかける。
体の至る所から悲鳴が上がっている。
それでも、アルトはここで倒れるわけにはいかなかった。
仲間がいる。
守らなければならない。
そして、ここで負けるわけにはいかないという、冒険者としての、いや、一人の人間としての意地があった。
その強い、強い想いが引き金となったのか。
アルトの奥底で眠っていた力が、再び呼応した。
ギフト【ダメージ反射】が、これまでとは比較にならないほどの、眩い蒼白い閃光を放ったのだ!
閃光は、アルトが受け止めたウォーハンマーの衝撃と共に、凄まじい勢いでゴブリンロードの全身へと逆流していく!
「グ……ギギギ……ッ!?」
ゴブリンロードの巨体が、まるで雷に打たれたかのように、激しく痙攣した。
その赤い瞳には、驚愕と苦痛、そして理解不能な現象への恐怖の色が浮かんでいる。
動きが、完全に止まったわけではない。
しかし、明らかにその動きは硬直し、体が意志に反して震えている。
あの時、ホブゴブリンに見せたものよりも、さらに強力な麻痺効果(あるいはそれに近い行動阻害効果)が、確かに発動したのだ!
この千載一遇の好機を、アルトの仲間たちが見逃すはずはなかった!
「今じゃあああーーっ!!」
ゴルドーが、回復した力で雄叫びを上げ、硬直したゴブリンロードの、防具のない脇腹めがけて、巨大な戦斧を渾身の力で叩き込んだ!
ゴシャアアッ!という鈍い、肉を断ち切るような音が響き渡り、ロードの巨体が大きくくの字に曲がる!
同時に、ノエルが音もなくロードの背後に回り込んでいた。
彼女は、いつの間にか両手に逆手に持っていた短剣を、ロードの首筋、鎧のわずかな隙間へと、深々と突き立てていた!
致命的な一撃。
そして、アルト自身も、最後の力を振り絞った。
硬直から回復しかけ、苦痛に顔を歪めるロードに対し、もはや防御を顧みることなく、黒曜の剣を、がら空きになったその心臓部めがけて、全力で突き出した!
ボルガンが刻んでくれた浄化のルーンが、一際強く、淡い光を放つ!
ズブリ!
確かな、そして重い手応え。
剣先は、ロードの硬い皮膚と骨を貫き、その生命の核を確実に捉えた。
三方向からの、完璧な連携による同時攻撃!
「ゴ…………ア…………ァ…………」
ゴブリンロードは、もはや声にならない呻き声を漏らし、その赤い瞳から急速に光が失われていく。
信じられないといった表情で、自分を貫いた剣や斧を見下ろし、そして、ゆっくりと、しかし確実に、その巨体を大地へと沈ませていった。
ドシンッ、という重い地響きのような音と共に、ゴブリンロードは完全に動きを止めた。
もう、二度と立ち上がることはないだろう。
鉱山の広間に、再び静寂が訪れた。
残ったのは、揺らめく松明の炎と、荒い息遣いを繰り返すアルト、ゴルドー、ノエルの三人だけ。
彼らは、互いの顔を見合わせ、そして、言葉なく頷き合った。
激しい戦いは、終わったのだ。
「……ふん、まあ、こんなもんじゃろう。手間取らせやがって、ただのデカいゴブリンのくせによ」
ゴルドーが、戦斧を肩に担ぎながら、いつものように悪態をついた。
しかし、その表情には、強敵を打ち破った満足感と、仲間への確かな信頼の色が浮かんでいる。
「若造、お前のあの最後の妙な光、あれで奴の動きが一瞬止まったぞ。また何かやったのか?まったく、変なギフトを持ってるな、お前さんは。だがまあ、おかげで助かったわい」
ノエルも、アルトの方を見て、小さく、しかしはっきりと頷いた。
「……アルト、すごい。…助かった」
その無表情の中に、かすかな称賛と、感謝の色が見えた気がした。
アルトもまた、二人に感謝の気持ちを伝えた。
「二人のおかげだよ。俺一人じゃ、絶対に勝てなかった」
この勝利は、アルト一人の力ではない。
ゴルドーの圧倒的なパワーと壁役、ノエルの的確なサポート、そして三人の揺るぎない連携があったからこそ、掴み取れたものだ。
この死闘を共に乗り越えたことで、彼らの間には、言葉を超えた確かな絆が生まれていた。
しばしの休息の後、三人は討伐の証拠と戦利品の回収に取り掛かった。
ゴブリンロードの頭部を切り離すのは、さすがに骨が折れる作業だったため、代わりに彼が持っていた禍々しいウォーハンマーと、リーダーの証であると思われる、奇妙な模様が描かれた大きな牙を一本、そして身に着けていた粗末ながらも丈夫そうな革の装飾品などを回収した。
他に価値のありそうなものがないか、広間や通路を簡単に探索したが、ゴブリンたちの根城らしく、めぼしいものはほとんど見当たらなかった。
これ以上、この不気味な鉱山跡に長居は無用だ。
三人は、疲労困憊の体を引きずりながら、互いを支え合うようにして、暗い坑道を抜け、地上への帰路についた。
外の空気は、驚くほど清々しく感じられた。
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