落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第113話 魂の残響、制御への道標

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魂の祭祀場。
あの霧と静寂に包まれた古代の遺跡で得たものは、計り知れないほど大きかった。

ギフト【ダメージ反射】の根源に触れたかのような感覚、そして脳裏に焼き付いた断片的な情報の奔流。

しかし、その代償もまた大きかった。
アルトは、これまでに経験したことのないほどの深い精神的疲労を抱えながら、ふらつく足取りで、数日間の旅を経て、ようやく王都アステリアへと帰り着いた。

遺跡を離れるにつれて、あのまとわりつくような奇妙な気配は徐々に薄れ、森の空気も心なしか清浄さを取り戻しているように感じられた。
祭祀場の守護者を打ち破り、何らかの変化が起きたのかもしれない。

王都の下宿屋に戻ったアルトは、心配する女将さんに無事を告げると、そのままベッドへと倒れ込み、数日間、ただひたすらに眠り続けた。

夢の中では、祭祀場の光景や、流れ込んできた情報の断片が、繰り返し現れては消えた。
体力の回復もさることながら、消耗しきった精神力を回復させるためには、時間が必要だった。

十分な休息を経て、ようやく人心地がついたアルトは、真っ先にエリアーヌの研究室を訪ねた。
彼を待っていたエリアーヌは、アルトが無事に戻ってきたことに安堵の表情を浮かべたが、すぐに研究者としての好奇心が勝ったようだ。

「アルトさん!お待ちしておりましたわ!それで、魂の祭祀場は…何か発見はありましたの!?」

アルトは、深呼吸を一つして、祭祀場での出来事を順に語り始めた。
遺跡の異様な雰囲気、精神に干渉してくる気配、物理攻撃の効かない霊的な守護者との遭遇、そして、ギフトが精神的な攻撃に対しても反応し、それを打ち破ったこと。
最後に、祭壇にあった黒い石版に触れた際に、脳内に直接流れ込んできた、ギフトに関する断片的な情報について、必死に記憶を辿りながら説明した。

『エネルギー変換』『意志の力による指向性制御』『守護の想いと魂の共鳴』『精神への干渉、束縛』……。

アルトの話を聞き終えたエリアーヌは、興奮のあまり、丸眼鏡を何度も押し上げながら、研究室の中を歩き回っていた。

「やはり!やはりそうでしたのね!素晴らしい!アルトさん、あなたのギフトは、わたくしの仮説を遥かに超える、とんでもない代物ですわ!」

彼女は、羊皮紙に素早く数式や図形を書き込みながら、熱っぽく語り始める。

「あなたのギフトは、単なる物理法則に基づく『反射』ではない!それは、受けたあらゆるエネルギー…物理的な衝撃だけでなく、おそらくは精神的なエネルギーさえも、あなた自身の魂を触媒として『変換』し、そしてあなたの『意志』の力で指向性を与え、任意の形で放出する力!極めて高度で、そして根源的なエネルギー操作技術ですわ!」

エリアーヌの目は、知的な探求心の炎で爛々と輝いている。

「そして、リフレクト・ショック!あの麻痺効果は、やはり精神的な要因…特に、他者を守りたいという強い『守護の意志』が、相手の魂と強制的に共鳴し、精神レベルで動きを『束縛』する現象!これは、古代に失われたとされる『魂操術』や、高位の精神魔法の断片である可能性が非常に高いですわ!」

エリアーヌの分析は、アルトが石版から得た感覚的な情報と、驚くほど一致していた。
自分のギフトの正体が、少しずつ、しかし確実に明らかになっていく。
その事実に、アルトは興奮と、同時にわずかな畏怖を感じていた。

「ですが…」エリアーヌは、そこで少し表情を引き締めた。「問題は、その制御ですわね。特にリフレクト・ショックは、強い意志と極限状態がトリガーとなる可能性が高い。意図的に、そして安全に発動させるには、相当な訓練が必要となるでしょう。技術的な訓練だけでなく、アルトさん自身の精神力、意志の強さ、そしてギフトとの対話…そういったものが、より深く求められることになるはずですわ」

エリアーヌは、アルトのために新たな研究計画と、精神力を鍛えるための訓練メニュー案をすぐに作成し始めた。
瞑想による集中力の向上、精神的な負荷をかける特殊な訓練、そして「守る」という意志を具体的な力の指向性へと変換するためのイメージトレーニングなど。
それは、これまでの物理的な訓練とは全く異なる、内面へと深く向き合うような訓練だった。

アルトは、エリアーヌの提案に迷わず同意した。
ギフトの力を正しく理解し、制御すること。
それが、今の自分にとって最も重要な課題であり、目標だと確信したからだ。

ギルドマスターにも、今回の調査結果――遺跡の場所、その危険性(特に精神的な干渉)、そして霊的な守護者の存在――を簡単に報告した。
マスターはアルトの無事を喜び、「君がまた何かとんでもないものを発見してきたようだな…」と苦笑いを浮かべながらも、「その情報はギルドとしても貴重だ。詳細については、エリアーヌ君から後日、正式な報告書を提出してもらおう。とにかく、無事で何よりだった」と、アルトの功績を改めて認めた。

ギルドで、偶然ゴルドーとノエルにも再会した。
アルトが祭祀場での発見と、ギフトに関する新たな知見について話すと、ゴルドーは「魂だの意志だの…ますます訳の分からん力になってきおったな、お前さんのギフトは。だが、面白そうだ」と唸り、ノエルは「…アルト、すごい力。…制御、難しい。…でも、アルトなら、できる」と、短い言葉の中に、確かな信頼を込めて励ましてくれた。

夜、下宿屋の部屋で、アルトはリナにもらった銀のロケットを、そっと手に取った。
祭祀場で得た気づき。
「守る」という意志が、ギフトの力、特にリフレクト・ショックと深く結びついている。
リナを守りたい。
ゴルドーやノエル、アッシュフォード村の家族や友人、そしてこの王都で出会った人々を守りたい。
その想いが強ければ強いほど、ギフトは応えてくれるのかもしれない。
そして、その強大な力だからこそ、正しく理解し、制御しなければならない。
使い方を間違えれば、それは他者を傷つけるだけの、危険な力にもなりうるのだから。

アルトは、ロケットの中のリナの優しい笑顔を見つめながら、決意を新たにした。
この力を、必ず自分のものにする。
そして、大切な人たちを守るための力として、正しく使うのだ、と。

魂の祭祀場での探索は、アルトにギフトの謎を解き明かすための、決定的な手がかりをもたらした。
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