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お札
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なあ、俺、今住んでるアパート、マジでヤバいかもしんないんだ。
先月、家賃の安さに釣られて引っ越してきた、古い木造のアパートなんだけどさ。
一部屋だけ、異様に家賃が安くて、不動産屋も「まあ、色々ありまして…」とか歯切れ悪い感じで。
でも、金なかったし、気にしないことにして契約しちまったんだ。
で、引っ越してきて、部屋の中を掃除してたら、見つけちまったんだよ。
押し入れの、一番奥の、天井に近い壁に、一枚だけ、古びたお札が貼ってあるのを。
黄ばんでて、端っこはもうボロボロで。
墨で何か書いてあるんだけど、達筆すぎて、なんて書いてあるか全然読めない。
ただ、その文字が、なんか、こう…生き物みたいに、蠢いてるように見えるんだよ。
気味悪いな、とは思ったけど、まあ、前の住人が貼ったお守りみたいなもんだろって。
剥がそうとしたんだけど、これが、なぜか全然剥がれない。
壁に、完全に一体化してるみたいに、びくともしないんだ。
爪でカリカリやっても、端っこすらめくれない。
まあ、いいか、って、その時は諦めた。
それが、間違いだった。
その夜からだよ。
部屋で、変なことが起こり始めたのは。
寝てると、押し入れの方から、
——— カサ…カサカサ…
って、何か、乾いたものが擦れるような音が聞こえる。
ネズミか? と思ったけど、それにしては、音が大きすぎるし、妙に規則的なんだ。
ある時は、
——— トン………トン………
って、壁の、お札が貼ってあるあたりを、内側から、誰かが指で軽く叩いてるような音。
目が覚めて、押し入れの方をじっと見てると、
お札が貼ってある壁の、その部分だけ、ほんの僅かに、黒く、滲んでるように見えることがある。
気のせいかと思って、電気つけて見ると、何ともないんだけど。
一番ヤバかったのは、三日前の夜。
金縛りにあったんだ。
体が全く動かせなくて、目だけがかろうじて動かせる。
そしたら、押し入れの襖が、音もなく、スーッ…と、数センチだけ開いた。
そして、その隙間から、
真っ黒な、影みたいなものが、にゅるり、と、部屋の中に、這い出てくるのが見えた。
それは、人型じゃなかった。
もっと、こう…不定形で、煙みたいに揺らめいてて。
でも、明らかに、「意志」を持って、俺の方へ、ゆっくりと、近づいてくる。
声にならない悲鳴を上げようとしても、喉が締め付けられて、音が出ない。
影が、俺のベッドのすぐ横まで来た時、
ふっと、金縛りが解けた。
同時に、影も、襖の隙間も、消えてた。
俺、汗びっしょりで、心臓バクバクで。
もう、この部屋にはいられないって思った。
でも、朝になって、少し冷静になると、
「あれは夢だったんじゃないか」とか、「疲れてるだけだ」とか、
無理やり自分に言い聞かせて、まだ、この部屋にいる。
だって、引っ越す金なんてないし…。
昨日、意を決して、もう一度、あのお札を剥がそうとしたんだ。
カッターナイフ持ってきて、お札の縁に刃を当てて、力を込めた。
そしたら、
——— ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
って、耳をつんざくような、女の人の、甲高い悲鳴が、
部屋中に響き渡ったんだ!
お札からじゃない。
もっと、こう…壁の中から? 天井から? 部屋全体から?
どこから聞こえてくるのか分からない、でも、間違いなく、すぐそこで叫んでる。
俺、カッター放り出して、耳塞いで、その場にうずくまった。
悲鳴は、しばらく続いて、やがて、すすり泣きに変わって、そして、消えた。
お札は、相変わらず、壁に張り付いたまま。
でも、よく見ると、お札の、読めなかったはずの文字が、
ほんの少しだけ、変わってる気がするんだ。
前よりも、もっと、禍々しい形に。
そして、お札の周りの壁のシミが、気のせいじゃなく、確実に、広がってる。
まるで、お札が、壁を「侵食」してるみたいに。
なあ、これ、どうしたらいいんだ?
このお札、一体、何なんだ?
先月、家賃の安さに釣られて引っ越してきた、古い木造のアパートなんだけどさ。
一部屋だけ、異様に家賃が安くて、不動産屋も「まあ、色々ありまして…」とか歯切れ悪い感じで。
でも、金なかったし、気にしないことにして契約しちまったんだ。
で、引っ越してきて、部屋の中を掃除してたら、見つけちまったんだよ。
押し入れの、一番奥の、天井に近い壁に、一枚だけ、古びたお札が貼ってあるのを。
黄ばんでて、端っこはもうボロボロで。
墨で何か書いてあるんだけど、達筆すぎて、なんて書いてあるか全然読めない。
ただ、その文字が、なんか、こう…生き物みたいに、蠢いてるように見えるんだよ。
気味悪いな、とは思ったけど、まあ、前の住人が貼ったお守りみたいなもんだろって。
剥がそうとしたんだけど、これが、なぜか全然剥がれない。
壁に、完全に一体化してるみたいに、びくともしないんだ。
爪でカリカリやっても、端っこすらめくれない。
まあ、いいか、って、その時は諦めた。
それが、間違いだった。
その夜からだよ。
部屋で、変なことが起こり始めたのは。
寝てると、押し入れの方から、
——— カサ…カサカサ…
って、何か、乾いたものが擦れるような音が聞こえる。
ネズミか? と思ったけど、それにしては、音が大きすぎるし、妙に規則的なんだ。
ある時は、
——— トン………トン………
って、壁の、お札が貼ってあるあたりを、内側から、誰かが指で軽く叩いてるような音。
目が覚めて、押し入れの方をじっと見てると、
お札が貼ってある壁の、その部分だけ、ほんの僅かに、黒く、滲んでるように見えることがある。
気のせいかと思って、電気つけて見ると、何ともないんだけど。
一番ヤバかったのは、三日前の夜。
金縛りにあったんだ。
体が全く動かせなくて、目だけがかろうじて動かせる。
そしたら、押し入れの襖が、音もなく、スーッ…と、数センチだけ開いた。
そして、その隙間から、
真っ黒な、影みたいなものが、にゅるり、と、部屋の中に、這い出てくるのが見えた。
それは、人型じゃなかった。
もっと、こう…不定形で、煙みたいに揺らめいてて。
でも、明らかに、「意志」を持って、俺の方へ、ゆっくりと、近づいてくる。
声にならない悲鳴を上げようとしても、喉が締め付けられて、音が出ない。
影が、俺のベッドのすぐ横まで来た時、
ふっと、金縛りが解けた。
同時に、影も、襖の隙間も、消えてた。
俺、汗びっしょりで、心臓バクバクで。
もう、この部屋にはいられないって思った。
でも、朝になって、少し冷静になると、
「あれは夢だったんじゃないか」とか、「疲れてるだけだ」とか、
無理やり自分に言い聞かせて、まだ、この部屋にいる。
だって、引っ越す金なんてないし…。
昨日、意を決して、もう一度、あのお札を剥がそうとしたんだ。
カッターナイフ持ってきて、お札の縁に刃を当てて、力を込めた。
そしたら、
——— ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
って、耳をつんざくような、女の人の、甲高い悲鳴が、
部屋中に響き渡ったんだ!
お札からじゃない。
もっと、こう…壁の中から? 天井から? 部屋全体から?
どこから聞こえてくるのか分からない、でも、間違いなく、すぐそこで叫んでる。
俺、カッター放り出して、耳塞いで、その場にうずくまった。
悲鳴は、しばらく続いて、やがて、すすり泣きに変わって、そして、消えた。
お札は、相変わらず、壁に張り付いたまま。
でも、よく見ると、お札の、読めなかったはずの文字が、
ほんの少しだけ、変わってる気がするんだ。
前よりも、もっと、禍々しい形に。
そして、お札の周りの壁のシミが、気のせいじゃなく、確実に、広がってる。
まるで、お札が、壁を「侵食」してるみたいに。
なあ、これ、どうしたらいいんだ?
このお札、一体、何なんだ?
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