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第七十話:影狼との舞、試される聖浄の光
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星見の塔、最上階。
月明かりだけが差し込む、円形の広間。
床に浮かび上がった、青白い魔法陣から、影でできた狼たちが、次々と姿を現し、私を取り囲むように、唸り声を上げていた。
その数は、三体……いや、四体。
実体があるのかないのか、その体は、闇のように揺らめき、赤い瞳だけが、不気味に光っている。
そして、その影狼たちを操る、フードを目深にかぶった、謎の人物。
彼は、杖を構えたまま、私を、試すように、じっと見つめている。
(……やるしかない!)
もう、逃げ道はない。
私は、短剣を握りしめ、胸の奥の『聖なる力』を、一気に高めた。
カッ!
短剣が、まばゆいほどの、金色の光を放つ。
「……ほう。
やはり、ただの小娘では、ないようだのぅ」
フードの人物が、感心したような、あるいは、嘲るような声を漏らした。
それと同時に、影狼たちが、一斉に、私に襲いかかってきた!
速い!
それは、以前戦った、崖駆け(がけかげ)や、野犬たちとは、比べ物にならないほどの、俊敏な動きだった。
一体が、私の死角に回り込み、鋭い、影の牙を剥いて、飛びかかってくる!
「シールド!」
咄嗟に、光壁を展開!
ガキンッ!
影の牙が、光壁に当たり、激しい衝撃と共に、シールドに亀裂が走る。
(……重い……!)
この影狼の一撃は、見た目以上に、強力だ。
シールドだけでは、長くはもたない。
別の影狼が、私の背後から、音もなく忍び寄り、その爪を振り上げていた。
私は、咄嗟に、幻惑魔法で、自分の位置を、数歩、横にずらしたような残像を作り出す。
影狼の爪は、空を切り、その隙に、私は、体勢を立て直す!
「衝撃・光よ!!」
一番近くにいた影狼に、聖なる力を乗せた、浄化の波動を叩き込む!
ドォンッ!
影狼は、甲高い悲鳴のようなものを上げ、その体が、まるで、霧散するように、一瞬だけ、薄らいだ。
でも、すぐに、元の、濃い影の姿に戻ってしまう。
(……ダメだ、威力が足りない……!)
この影狼は、物理的な攻撃だけでは、倒せないのかもしれない。
もっと、この『聖なる力』そのものを、直接、ぶつけなければ……!
私は、光り輝く短剣を、両手で、しっかりと握り直した。
そして、向かってくる影狼の群れの中に、あえて、飛び込んでいく!
一対多数。
無謀なのは、わかっている。
でも、この状況を打破するには、これしかない!
一体の影狼が、私の肩口めがけて、噛みついてきた。
私は、それを、紙一重でかわし、カウンターのように、聖なる光を纏った短剣を、その影の胴体へと、深々と突き刺した!
「ギャウウウウンッ!」
影狼は、今までとは違う、断末魔のような悲鳴を上げた。
そして、その体は、金色の光に包まれ、まるで、浄化されるように、跡形もなく、消滅したのだ!
(……やった!)
やはり、この力は、こういう、闇の存在に対して、絶大な効果がある!
残るは、三体。
でも、一体を倒したことで、他の影狼たちの動きが、わずかに、鈍ったような気がした。
あるいは、彼らも、私の力を、警戒し始めたのかもしれない。
私は、その隙を逃さなかった。
アレンさんの本にあった、光の魔法の、基本的な戦い方。
『光は、闇を退ける。
ならば、自らが、光の源となれ。
そして、その輝きで、闇を焼き尽くせ』
私は、短剣を、天に掲げた。
そして、胸の奥の『聖なる力』の全てを、その一点に、集中させる!
「――集え、聖浄の光よ!!」
私の叫びと共に、短剣の先端から、まるで、小さな太陽が生まれたかのような、強烈な、金色の光が、放たれた!
塔の最上階全体が、昼間のように、明るく照らし出される。
影狼たちは、その、あまりにも強すぎる聖なる光に、苦悶の声を上げ、後ずさりした。
その体は、光に照らされて、端から、じりじりと、消滅しかけている。
「なっ……この力は……!?」
フードの人物が、初めて、狼狽(ろうばい)したような声を上げた。
「……まさか……お前……『星の巫女』の、生き残りか……!?」
星の巫女……?
その言葉が、私の頭の中で、奇妙な残響を残す。
でも、今は、考える暇はない!
「これで、終わりです!」
私は、光り輝く短剣を、残りの影狼たちに向かって、振り下ろした!
閃光が、奔る。
影狼たちは、断末魔の悲鳴を上げる間もなく、聖なる光の中に、完全に、消滅していった。
……静寂が、再び、塔の最上階を支配する。
残っているのは、私と、そして、呆然と立ち尽くす、フードの人物だけ。
私は、荒い息をつきながら、彼を、睨みつけた。
短剣の光は、まだ、消えていない。
「……あなたの目的は、何ですか?
なぜ、私を、試すような真似を……?」
フードの人物は、しばらく、何も言わなかった。
ただ、そのフードの奥から、私を、じっと、見つめている気配だけが伝わってくる。
やがて、彼は、ゆっくりと、そのフードを、取り払った。
月明かりの下に、現れたその顔を見て、私は、息を呑んだ。
それは……。
月明かりだけが差し込む、円形の広間。
床に浮かび上がった、青白い魔法陣から、影でできた狼たちが、次々と姿を現し、私を取り囲むように、唸り声を上げていた。
その数は、三体……いや、四体。
実体があるのかないのか、その体は、闇のように揺らめき、赤い瞳だけが、不気味に光っている。
そして、その影狼たちを操る、フードを目深にかぶった、謎の人物。
彼は、杖を構えたまま、私を、試すように、じっと見つめている。
(……やるしかない!)
もう、逃げ道はない。
私は、短剣を握りしめ、胸の奥の『聖なる力』を、一気に高めた。
カッ!
短剣が、まばゆいほどの、金色の光を放つ。
「……ほう。
やはり、ただの小娘では、ないようだのぅ」
フードの人物が、感心したような、あるいは、嘲るような声を漏らした。
それと同時に、影狼たちが、一斉に、私に襲いかかってきた!
速い!
それは、以前戦った、崖駆け(がけかげ)や、野犬たちとは、比べ物にならないほどの、俊敏な動きだった。
一体が、私の死角に回り込み、鋭い、影の牙を剥いて、飛びかかってくる!
「シールド!」
咄嗟に、光壁を展開!
ガキンッ!
影の牙が、光壁に当たり、激しい衝撃と共に、シールドに亀裂が走る。
(……重い……!)
この影狼の一撃は、見た目以上に、強力だ。
シールドだけでは、長くはもたない。
別の影狼が、私の背後から、音もなく忍び寄り、その爪を振り上げていた。
私は、咄嗟に、幻惑魔法で、自分の位置を、数歩、横にずらしたような残像を作り出す。
影狼の爪は、空を切り、その隙に、私は、体勢を立て直す!
「衝撃・光よ!!」
一番近くにいた影狼に、聖なる力を乗せた、浄化の波動を叩き込む!
ドォンッ!
影狼は、甲高い悲鳴のようなものを上げ、その体が、まるで、霧散するように、一瞬だけ、薄らいだ。
でも、すぐに、元の、濃い影の姿に戻ってしまう。
(……ダメだ、威力が足りない……!)
この影狼は、物理的な攻撃だけでは、倒せないのかもしれない。
もっと、この『聖なる力』そのものを、直接、ぶつけなければ……!
私は、光り輝く短剣を、両手で、しっかりと握り直した。
そして、向かってくる影狼の群れの中に、あえて、飛び込んでいく!
一対多数。
無謀なのは、わかっている。
でも、この状況を打破するには、これしかない!
一体の影狼が、私の肩口めがけて、噛みついてきた。
私は、それを、紙一重でかわし、カウンターのように、聖なる光を纏った短剣を、その影の胴体へと、深々と突き刺した!
「ギャウウウウンッ!」
影狼は、今までとは違う、断末魔のような悲鳴を上げた。
そして、その体は、金色の光に包まれ、まるで、浄化されるように、跡形もなく、消滅したのだ!
(……やった!)
やはり、この力は、こういう、闇の存在に対して、絶大な効果がある!
残るは、三体。
でも、一体を倒したことで、他の影狼たちの動きが、わずかに、鈍ったような気がした。
あるいは、彼らも、私の力を、警戒し始めたのかもしれない。
私は、その隙を逃さなかった。
アレンさんの本にあった、光の魔法の、基本的な戦い方。
『光は、闇を退ける。
ならば、自らが、光の源となれ。
そして、その輝きで、闇を焼き尽くせ』
私は、短剣を、天に掲げた。
そして、胸の奥の『聖なる力』の全てを、その一点に、集中させる!
「――集え、聖浄の光よ!!」
私の叫びと共に、短剣の先端から、まるで、小さな太陽が生まれたかのような、強烈な、金色の光が、放たれた!
塔の最上階全体が、昼間のように、明るく照らし出される。
影狼たちは、その、あまりにも強すぎる聖なる光に、苦悶の声を上げ、後ずさりした。
その体は、光に照らされて、端から、じりじりと、消滅しかけている。
「なっ……この力は……!?」
フードの人物が、初めて、狼狽(ろうばい)したような声を上げた。
「……まさか……お前……『星の巫女』の、生き残りか……!?」
星の巫女……?
その言葉が、私の頭の中で、奇妙な残響を残す。
でも、今は、考える暇はない!
「これで、終わりです!」
私は、光り輝く短剣を、残りの影狼たちに向かって、振り下ろした!
閃光が、奔る。
影狼たちは、断末魔の悲鳴を上げる間もなく、聖なる光の中に、完全に、消滅していった。
……静寂が、再び、塔の最上階を支配する。
残っているのは、私と、そして、呆然と立ち尽くす、フードの人物だけ。
私は、荒い息をつきながら、彼を、睨みつけた。
短剣の光は、まだ、消えていない。
「……あなたの目的は、何ですか?
なぜ、私を、試すような真似を……?」
フードの人物は、しばらく、何も言わなかった。
ただ、そのフードの奥から、私を、じっと、見つめている気配だけが伝わってくる。
やがて、彼は、ゆっくりと、そのフードを、取り払った。
月明かりの下に、現れたその顔を見て、私は、息を呑んだ。
それは……。
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