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第百四十三話:帝国の悪夢
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僕が放った最初の一撃。
それはガルブレイス帝国の北の国境線を守る将軍グスタフ辺境伯の下に、悪夢のような報告となってからもたらされた。
「——補給基地が炎上! 敵は光の門より現れ、光の門の中へと消えた、と……?」
グスタフは報告に来た兵士の胸ぐらを掴み怒鳴りつけた。
「馬鹿を言え! 貴様は恐怖で気が狂ったか!」
だが彼がどれだけ怒鳴ろうとも事実は変わらない。
彼の完璧な補給網に大きな穴が空いた。
そしてその犯人の正体は誰も知らない。
そしてその悪夢はその日を境に始まったのだ。
三日後、西の見張り塔が一夜にして陥落した。生存者の証言は同じだった。
「光の中から幽霊たちが現れた」と。
一週間後、建設中だった軍事用の橋がその中央部分から綺麗に爆破された。
現場には争った形跡すら残されていなかった。
また一週間後、今度は移動中の小規模な輸送部隊が忽然と姿を消した。
帝国軍の兵士たちの間に急速に恐怖と混乱が広がっていく。
敵はどこから現れるか分からない。
敵はどんな力を持っているのか分からない。
敵はまるで神の視点から全てを見ているかのように、こちらの最も手薄な部分だけを正確に、そして、容赦なく、攻撃してくる。
ノーランドの深い森と吹雪の中には、光の門から現れる無敵の「幽霊部隊」がいる。
その伝説は、もはや帝国北部方面軍の、全ての将兵が知る悪夢となっていた。
グスタフ辺境伯は、この不可解な連続襲撃事件に為す術もなく、ただ日に日に、その神経をすり減らしていくしかなかった。
その頃、僕はノーランドの執務室で腹心たちと次の作戦を練っていた。
「若様。今のところ全て計画通りに進んでおります」
ボリンが興奮した声で報告する。
「帝国軍の連中は完全に混乱しきっている。今や俺たちのことを『北の幽霊』と呼んで、震え上がっているそうですぜ」
僕のゲリラ戦術は、完璧に機能していた。
だが僕は、まだ満足していなかった。
今の僕の攻撃は、捕虜から得た数週間前の古い情報に基づいている。
戦況は刻一刻と変化する。
より正確な勝利を手にするためには、僕にはリアルタイムの情報が必要だった。
僕は一つの新しいスキルの使い方を思いついていた。
僕はニールに命じて転移魔法陣を起動させた。
僕が転移した先はノーランドと帝国の国境を見下ろす、最も高い霊峰グレンデルの山頂。
吹き荒れる吹雪の中、僕は静かに目を閉じ僕の感覚を研ぎ澄ませる。
そして見つけた。
この山の空の王者。
悠然と大空を舞う、一羽の巨大な山鷲(マウンテンイーグル)を。
僕は風に乗り、その山鷲へと急速に接近する。
そして、その鋭い瞳と僕の目が合ったその瞬間。
僕はスキルを発動した。
『【サブスクリプション】発動。
対象 山鷲。
契約項目『視界共有(ランクC)』
——契約、完了』
僕の脳内に新しい感覚が流れ込んできた。
僕の意識が二つに分かれる。
一つは、この吹雪の山頂に立つ僕。
そしてもう一つは——大空を舞う鷲そのもの。
眼下に広がる、どこまでも続く銀世界。
帝国軍の小さな砦や巡回部隊が、まるで玩具のように見える。
僕は、手に入れたのだ。
誰にも、知られることのない、空からの絶対的な「目」を。
僕は満足と共に、再びノーランドの館へと転移した。
そして、作戦指令室の地図の前に立つと、僕は新しい「目」が捉えた最新の情報を書き込んでいく。
三日後に砦を出発する大規模な補給部隊の正確なルート。
その護衛が手薄になる時間と場所。
全てが僕には見えていた。
「ボリン」
僕は忠実な騎士団長を呼んだ。
「次の『狩り』の時間だ。最高の獲物が我々の目の前を通りかかろうとしている」
僕のその言葉に、ボリンは獰猛な笑みを浮かべた。
幽霊は神の視点を手に入れ、次なるステージへと移行する。
帝国が本当の悪夢を見るのはこれからだった。
それはガルブレイス帝国の北の国境線を守る将軍グスタフ辺境伯の下に、悪夢のような報告となってからもたらされた。
「——補給基地が炎上! 敵は光の門より現れ、光の門の中へと消えた、と……?」
グスタフは報告に来た兵士の胸ぐらを掴み怒鳴りつけた。
「馬鹿を言え! 貴様は恐怖で気が狂ったか!」
だが彼がどれだけ怒鳴ろうとも事実は変わらない。
彼の完璧な補給網に大きな穴が空いた。
そしてその犯人の正体は誰も知らない。
そしてその悪夢はその日を境に始まったのだ。
三日後、西の見張り塔が一夜にして陥落した。生存者の証言は同じだった。
「光の中から幽霊たちが現れた」と。
一週間後、建設中だった軍事用の橋がその中央部分から綺麗に爆破された。
現場には争った形跡すら残されていなかった。
また一週間後、今度は移動中の小規模な輸送部隊が忽然と姿を消した。
帝国軍の兵士たちの間に急速に恐怖と混乱が広がっていく。
敵はどこから現れるか分からない。
敵はどんな力を持っているのか分からない。
敵はまるで神の視点から全てを見ているかのように、こちらの最も手薄な部分だけを正確に、そして、容赦なく、攻撃してくる。
ノーランドの深い森と吹雪の中には、光の門から現れる無敵の「幽霊部隊」がいる。
その伝説は、もはや帝国北部方面軍の、全ての将兵が知る悪夢となっていた。
グスタフ辺境伯は、この不可解な連続襲撃事件に為す術もなく、ただ日に日に、その神経をすり減らしていくしかなかった。
その頃、僕はノーランドの執務室で腹心たちと次の作戦を練っていた。
「若様。今のところ全て計画通りに進んでおります」
ボリンが興奮した声で報告する。
「帝国軍の連中は完全に混乱しきっている。今や俺たちのことを『北の幽霊』と呼んで、震え上がっているそうですぜ」
僕のゲリラ戦術は、完璧に機能していた。
だが僕は、まだ満足していなかった。
今の僕の攻撃は、捕虜から得た数週間前の古い情報に基づいている。
戦況は刻一刻と変化する。
より正確な勝利を手にするためには、僕にはリアルタイムの情報が必要だった。
僕は一つの新しいスキルの使い方を思いついていた。
僕はニールに命じて転移魔法陣を起動させた。
僕が転移した先はノーランドと帝国の国境を見下ろす、最も高い霊峰グレンデルの山頂。
吹き荒れる吹雪の中、僕は静かに目を閉じ僕の感覚を研ぎ澄ませる。
そして見つけた。
この山の空の王者。
悠然と大空を舞う、一羽の巨大な山鷲(マウンテンイーグル)を。
僕は風に乗り、その山鷲へと急速に接近する。
そして、その鋭い瞳と僕の目が合ったその瞬間。
僕はスキルを発動した。
『【サブスクリプション】発動。
対象 山鷲。
契約項目『視界共有(ランクC)』
——契約、完了』
僕の脳内に新しい感覚が流れ込んできた。
僕の意識が二つに分かれる。
一つは、この吹雪の山頂に立つ僕。
そしてもう一つは——大空を舞う鷲そのもの。
眼下に広がる、どこまでも続く銀世界。
帝国軍の小さな砦や巡回部隊が、まるで玩具のように見える。
僕は、手に入れたのだ。
誰にも、知られることのない、空からの絶対的な「目」を。
僕は満足と共に、再びノーランドの館へと転移した。
そして、作戦指令室の地図の前に立つと、僕は新しい「目」が捉えた最新の情報を書き込んでいく。
三日後に砦を出発する大規模な補給部隊の正確なルート。
その護衛が手薄になる時間と場所。
全てが僕には見えていた。
「ボリン」
僕は忠実な騎士団長を呼んだ。
「次の『狩り』の時間だ。最高の獲物が我々の目の前を通りかかろうとしている」
僕のその言葉に、ボリンは獰猛な笑みを浮かべた。
幽霊は神の視点を手に入れ、次なるステージへと移行する。
帝国が本当の悪夢を見るのはこれからだった。
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