出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ

文字の大きさ
142 / 167

第百四十二話:幽霊の襲撃

しおりを挟む
僕の宣戦布告とも言える反撃作戦、その最初の舞台となるのは帝国領の奥深く。
捕虜から得た情報を元に、僕は敵の最も重要な補給路の一つでありそして最も警備が手薄な中継基地を特定していた。

作戦決行は月明かりすらない新月の夜。
僕の地下にある巨大な転移魔法陣の広間に、ボリンが率いるノーランド防衛隊の精鋭五十名が集結していた。

彼らの身に纏うのは僕が特別に作らせた黒鉄の鎧。
それは『星屑鉄』を僅かに混ぜ込むことで魔法的な隠密効果を高めた特殊な装備だ。
彼らはもはやただの鉱夫ではない。
僕という異常な領主の下で、伝説の装備と戦術を与えられた全く新しい軍隊だった。

「良いか」

僕は出撃前の彼らに最後の指示を与える。
「我々は幽霊だ。音もなく現れ任務を遂行し、そして痕跡一つ残さず消え去る。目的は敵の物資の破壊。無用な殺生は避けろ。だが我々に牙を剥く者には一切の容赦はするな」

僕のそのあまりに常識外れの戦術に、しかし男たちの顔に不安の色はなかった。
彼らの僕を見る目には絶対的な信頼と、そしてこれから始まる歴史上誰も成し遂げたことのない戦いへの高揚感だけがあった。

「——門を開け、ニール」

僕の静かな命令にニールが頷き、転移魔法陣の起動ルーンへと魔力を注ぎ込む。
ブゥンという低い共鳴音と共に僕たちの目の前の空間が歪み、青白い光の渦が現れた。

「——行け。そして帝国に我々の牙の鋭さを教えてやれ」

「「「御意!」」」

ボリンを先頭に黒鉄の兵士たちが次々と光の中へとその身を投じていく。
僕はその光景をただ静かに見送っていた。

その頃ガルブレイス帝国のとある補給基地では、兵士たちが緩みきった時間を過ごしていた。
ここは最前線から遥か後方に位置する安全地帯。
彼らの誰も想像すらしていなかった。
自分たちのすぐそばの闇の中から、無数の死神が現れることなど。

突如として基地のすぐ外の森の中に青白い光の門が開かれた。
そしてその中から音もなく現れる五十の黒い影。
ボリンが静かに手を振るのを合図に、ノーランド防衛隊はまるで一体の獣のように動き出した。
彼らはあっという間に油断しきっていた見張りの兵を無力化すると基地の内部へと侵入する。

彼らの目的はただ一つ、物資の破壊。
兵士たちが寝泊まりする兵舎には目もくれず、彼らは山と積まれた食料、矢弾、そして攻城兵器の部品の山へと向かった。
そして僕が作らせた特殊な発火魔道具をその中心へと投げ込んでいく。

「——何だ、あの光は!?」

ようやく異変に気づいた帝国兵が叫んだその時、基地の数カ所で同時に巨大な火柱が上がった。
燃え広がる炎、鳴り響く警鐘、混乱に陥る兵士たち。
だがその時にはすでに黒鉄の幽霊たちの姿はどこにもなかった。

彼らは任務を終え再び光の門の中へと姿を消していたのだ。
近くの砦から駆けつけた帝国の救援部隊が目にしたのは、燃え盛る炎と、そして「光の門から幽霊が現れた」と意味不明な言葉を繰り返す、数名の生存者だけであった。

その頃、帝国の国境地帯を統括するグスタフ辺境伯は、その報告に激怒していた。

「馬鹿な! 後方の補給基地が襲われただと!? 敵は、どうやってここまで……!」

彼の戦術理論の全てを覆す、その不可解な事件。
彼は初めて、ノーランドの新しい領主ルキウス・フォン・アークライトという存在の、本当の恐ろしさを、その肌で感じていた。

そして、その数分後。
僕はノーランドの執務室でボリンからの凱旋報告を受けていた。

「任務完了いたしました、若様。敵部隊の物資その全てを焼き払ってまいりました。我が方の損害ゼロであります」

「……ご苦労だった、ボリン。兵たちを十分に休ませてやれ」

僕は静かにそう言うと、作戦指令室の巨大な地図を見つめた。
そして帝国の補給基地があったその場所に、一つ赤いバツ印を書き加える。
僕の反撃は始まったばかり。
彼らが僕の王国に手を出したことを後悔するまで、僕はこの幽霊の襲撃をやめるつもりはない。
ノーランドの本当の恐ろしさを、彼らが骨の髄まで理解するその日まで。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一
ファンタジー
​「命を捨てて勝つな。生きて勝て」 50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する! ​海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。 再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は―― 「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」 ​途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。 子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。 規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。 ​「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」 ​坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。 呼び出すのは、自衛隊の補給物資。 高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。 ​魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。 これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...