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長編版
28 エレシア視点
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帰ります、と。逃げの言葉を口にした。
これ以上ここにいてはいけない。
「わかった。……今日は送らせてくれる?」
頷いてくださったことに安堵して、ここがどこなのかがわからないことに気が付いた。送っていただかなければ、車がどこにあるのかすらわたくしにはわからない。
素晴らしい女性だと讃してくださったこの方に、自らの情けない姿を知られることがどうしても恥ずかしい。一人では、帰ることも出来ない娘であると知られたくなかった。
しかしここで断れば帰ることはできない。発した了承の声は小さすぎて唇の先から出て行かないほどだったが、アシュレイ様はとても嬉しそうに頬を染めて微笑みを返してくださって、居た堪れなくなった。
帰りの車に乗り込もうとして手を差し出された。これは男性の当然のマナーだ。手を重ねることに深い意味はない。そう、自分に言い聞かせた。
自分とは違う骨張った硬い手は頼もしく、無意識にその手をほんの少し握りしめてしまって、頬が熱を持った。
──離したくない、などと。なんてはしたないことを。
少し急ぎ足で乗り込み、腰を下ろす。その、横に。アシュレイ様も腰を下ろした。
どうして? いつもわたくしの隣はリシュフィで、アシュレイ様と殿下は向かいに座られるのに。……今日もそうだとばかり、思っていたのに。
わたくしが奥へと詰めて座ったからだ。いつもの癖でそうしてしまった。だから、言わなければならない。
向かいに座ってください、と。
「…………」
言えば、この方はそうしてしまうだろうか。……それとも、いつものようにのらりくらりと躱して、隣に居座り続けるか。
わたくしは、どちらの予想が当たればいいと思っているのだろう。
……向かいに移動してほしい。心臓の鼓動が騒がしくて、こんなに近いところにいられたら、聞こえてしまいそうだ。
学園に帰り着き、アシュレイ様は女性寮の前まで送ってくださった。婚約者であれば、私室の前まで行くことが出来るが、わたくし達には許されていない。
「今日は街に出て疲れたでしょう。ゆっくり休んで」
何事もなかったような優しい声をかけられて、ただ、「はい」とだけ返す。
認めてはいけない感情を悟られないよう、あの子が用意した、履きなれない靴だけを一点に見つめて。
そんな、俯くわたくしの額に熱が近付いた。音を立てて離れていく感触は、いつもなら手の甲で受けるものだ。
それを自覚して、思わず手で額を押さえた。
「なっ、なに、を……!?」
顔だけじゃない、全身が燃えているようになったわたくしに、熱の主は可笑しそうに目を細めた。
「俯いてばかりだと、またするよ」
また、とは。
「こ、こんなこと……っ何度もすることでは……」
混乱して脈絡のない言葉ばかりを口にするわたくしに、アシュレイ様はどうしようもなく熱の篭った目を向けてくる。
恥ずかしくて、恥ずかしすぎて涙が出そうだ。泣いてしまったら、この方はきっと泣き止むまで立ち去れなくなってしまう。
涙を堪えていることに気付かれたらしく、アシュレイ様は「今日はとても楽しかった。次は二人で出かけたいな。誘ってもいい?」と明るく尋ねてくださった。
しかしその問いかけで、涙は一瞬で引っ込んでいった。
この方はどうしてわたくしに選択を迫るのだろう。誘っていいかと問われれば、答えは否だ。それはわかっているはずなのに。
「……わたくしは、あなた様といると……苦しい。辛いのです。二人でのお出かけなど耐えられません。お願いですから、誘うようなことはもう仰らないでください」
掛け値なしの本音は、すらすらと口から溢れ出た。
アシュレイ様の笑顔が陰り、いっそ痛ましいと思えるほど顔を歪めてしまった。
「……苦しいのは、どうしてかな。一緒にいるのが辛いのは、なぜだろう」
答えられるはずがない。ただ首を横に振り、口を引き結ぶ。
頬に手が添えられて、何の抵抗もせずに仰向けさせられた。
「どうして苦しいのか、僕にはわかるよ」
必死で、縋りつくようなこの方のお顔を見るのは、初めてだった。
「エレシアは、僕が好きだから苦しいんだ。好きだから、一緒にいると辛くなるんだね」
──こんな言葉を言わせてしまう女なんて、早々に放り出してしまわれれば良かったのに。
「そうです。アシュレイ様をお慕いしているから、苦しいのです。あなた様の手を取らない自分が辛いのです」
「手を取って。君に二度と怖い思いはさせないし、さっきも言っただろう。必ず守ってみせるから」
「いいえ。取りません。わたくしだけが、お慕いする方の手を取るなど許されませんから」
アシュレイ様の秀麗な眉が険しく寄った。
「わたくしだけって……もしかして、リシュフィ嬢のことを言っているの? まさかあの方には殿下以外に好意を寄せる男がいるの?」
「いるわけがありません。聞いたこともありませんし、あの子はそのような不義をする子ではありません」
「それなら、誰のことを言っているの?」
頬に触れられた手はそのままに、もう片方の手がわたくしの手を掴んだ。答えるまで逃がさないと言うように。
これを言ってしまったらもう、この方はわたくしを軽蔑して、今までのように微笑んでくださらないだろう。けれどここまで心の内を知られてしまっては、言わずに逃げることなど出来ない。
「──わたくしの母が病気の療養の名目で別荘へと移ったのはご存じでしょう。それはただの口実に過ぎません。父は母を愛していませんでしたから」
そしてそれは、母も。
「きっと屋敷から追い出したのでしょう。婚姻前に父が妻にと望んでいたのは、当代国王陛下の妹姫殿下──あなた様のお母様でしたから」
父は身分で人を判断するような人で、若い時分から美しく聡明な姫殿下との婚姻を望んでいたそうだ。
しかし姫殿下が伴侶に選んだのは当時のスコット公爵家嫡男──アシュレイ様の父だった。
それが内定すると、父は予てから祖父が嫁にと望んでいた伯爵令嬢──わたくしの母との婚姻を命じられたのだという。
しかし母の父親である伯爵は婚姻前に他界しており、兄弟のいなかった伯爵家の家督は父の弟が継いでいて、お世辞にもいい縁ではなかった。
そして当時、母にも愛する方がいたらしい。
「アシュレイ様に嫌われるのは苦しい。でも手を取ることも出来ないのです。父が王太子殿下との婚姻を望んだからというのはもちろんですが、本当は違う。わたくしは自分を好きにならない方と結婚しなければならないのです」
今日初めて、自分からアシュレイ様と目を合わせた。
これで最後だ。もう二度と、この方の視界にわたくしは入ることが出来なくなるから。
「母が屋敷を去るとき、父に捨てられた病気の母にわたくしは──お母様みたいに立場で苦しむのは絶対に嫌。わたくしは王太子殿下と結婚して幸せになる。と吐き捨てました。それ以来母とは会えておりません」
鳶色の瞳が見開かれる。この方は、本当に瞳の色まで柔らかくて、優しい。
「最低な人間と軽蔑してください。その方がどれだけ楽か。あなた様に好意を向けられるだけで、吐き気がするほど苦しくなるのです。幸せになりたくなってしまう。わたくしの望みは一つだけ。わたくし以外の方と幸せになって、この苦しみを消してください」
悄然と寮の廊下を歩く。最後にアシュレイ様が何を言われたのか、覚えていない。罵倒や軽蔑の言葉ではなかったような気がするが、期待はできない。きっと明日から話すこともないだろう。
今更になってひどい不快感が襲い、吐き気がした。口に手を当てて、ひたすら自室を目指す。
「エレシア様」
やっと辿り着いて、扉のノブにもたれかかりそうになった。その背から、名を呼ばれた。
しゃんとして背筋を伸ばし、振り返る。
目に入った亜麻色の姿に、なんと間の悪い娘だろうと忌々しく思ってしまうのを表情に出さなかったことだけは、公爵令嬢として及第点であったといえるだろう。
これ以上ここにいてはいけない。
「わかった。……今日は送らせてくれる?」
頷いてくださったことに安堵して、ここがどこなのかがわからないことに気が付いた。送っていただかなければ、車がどこにあるのかすらわたくしにはわからない。
素晴らしい女性だと讃してくださったこの方に、自らの情けない姿を知られることがどうしても恥ずかしい。一人では、帰ることも出来ない娘であると知られたくなかった。
しかしここで断れば帰ることはできない。発した了承の声は小さすぎて唇の先から出て行かないほどだったが、アシュレイ様はとても嬉しそうに頬を染めて微笑みを返してくださって、居た堪れなくなった。
帰りの車に乗り込もうとして手を差し出された。これは男性の当然のマナーだ。手を重ねることに深い意味はない。そう、自分に言い聞かせた。
自分とは違う骨張った硬い手は頼もしく、無意識にその手をほんの少し握りしめてしまって、頬が熱を持った。
──離したくない、などと。なんてはしたないことを。
少し急ぎ足で乗り込み、腰を下ろす。その、横に。アシュレイ様も腰を下ろした。
どうして? いつもわたくしの隣はリシュフィで、アシュレイ様と殿下は向かいに座られるのに。……今日もそうだとばかり、思っていたのに。
わたくしが奥へと詰めて座ったからだ。いつもの癖でそうしてしまった。だから、言わなければならない。
向かいに座ってください、と。
「…………」
言えば、この方はそうしてしまうだろうか。……それとも、いつものようにのらりくらりと躱して、隣に居座り続けるか。
わたくしは、どちらの予想が当たればいいと思っているのだろう。
……向かいに移動してほしい。心臓の鼓動が騒がしくて、こんなに近いところにいられたら、聞こえてしまいそうだ。
学園に帰り着き、アシュレイ様は女性寮の前まで送ってくださった。婚約者であれば、私室の前まで行くことが出来るが、わたくし達には許されていない。
「今日は街に出て疲れたでしょう。ゆっくり休んで」
何事もなかったような優しい声をかけられて、ただ、「はい」とだけ返す。
認めてはいけない感情を悟られないよう、あの子が用意した、履きなれない靴だけを一点に見つめて。
そんな、俯くわたくしの額に熱が近付いた。音を立てて離れていく感触は、いつもなら手の甲で受けるものだ。
それを自覚して、思わず手で額を押さえた。
「なっ、なに、を……!?」
顔だけじゃない、全身が燃えているようになったわたくしに、熱の主は可笑しそうに目を細めた。
「俯いてばかりだと、またするよ」
また、とは。
「こ、こんなこと……っ何度もすることでは……」
混乱して脈絡のない言葉ばかりを口にするわたくしに、アシュレイ様はどうしようもなく熱の篭った目を向けてくる。
恥ずかしくて、恥ずかしすぎて涙が出そうだ。泣いてしまったら、この方はきっと泣き止むまで立ち去れなくなってしまう。
涙を堪えていることに気付かれたらしく、アシュレイ様は「今日はとても楽しかった。次は二人で出かけたいな。誘ってもいい?」と明るく尋ねてくださった。
しかしその問いかけで、涙は一瞬で引っ込んでいった。
この方はどうしてわたくしに選択を迫るのだろう。誘っていいかと問われれば、答えは否だ。それはわかっているはずなのに。
「……わたくしは、あなた様といると……苦しい。辛いのです。二人でのお出かけなど耐えられません。お願いですから、誘うようなことはもう仰らないでください」
掛け値なしの本音は、すらすらと口から溢れ出た。
アシュレイ様の笑顔が陰り、いっそ痛ましいと思えるほど顔を歪めてしまった。
「……苦しいのは、どうしてかな。一緒にいるのが辛いのは、なぜだろう」
答えられるはずがない。ただ首を横に振り、口を引き結ぶ。
頬に手が添えられて、何の抵抗もせずに仰向けさせられた。
「どうして苦しいのか、僕にはわかるよ」
必死で、縋りつくようなこの方のお顔を見るのは、初めてだった。
「エレシアは、僕が好きだから苦しいんだ。好きだから、一緒にいると辛くなるんだね」
──こんな言葉を言わせてしまう女なんて、早々に放り出してしまわれれば良かったのに。
「そうです。アシュレイ様をお慕いしているから、苦しいのです。あなた様の手を取らない自分が辛いのです」
「手を取って。君に二度と怖い思いはさせないし、さっきも言っただろう。必ず守ってみせるから」
「いいえ。取りません。わたくしだけが、お慕いする方の手を取るなど許されませんから」
アシュレイ様の秀麗な眉が険しく寄った。
「わたくしだけって……もしかして、リシュフィ嬢のことを言っているの? まさかあの方には殿下以外に好意を寄せる男がいるの?」
「いるわけがありません。聞いたこともありませんし、あの子はそのような不義をする子ではありません」
「それなら、誰のことを言っているの?」
頬に触れられた手はそのままに、もう片方の手がわたくしの手を掴んだ。答えるまで逃がさないと言うように。
これを言ってしまったらもう、この方はわたくしを軽蔑して、今までのように微笑んでくださらないだろう。けれどここまで心の内を知られてしまっては、言わずに逃げることなど出来ない。
「──わたくしの母が病気の療養の名目で別荘へと移ったのはご存じでしょう。それはただの口実に過ぎません。父は母を愛していませんでしたから」
そしてそれは、母も。
「きっと屋敷から追い出したのでしょう。婚姻前に父が妻にと望んでいたのは、当代国王陛下の妹姫殿下──あなた様のお母様でしたから」
父は身分で人を判断するような人で、若い時分から美しく聡明な姫殿下との婚姻を望んでいたそうだ。
しかし姫殿下が伴侶に選んだのは当時のスコット公爵家嫡男──アシュレイ様の父だった。
それが内定すると、父は予てから祖父が嫁にと望んでいた伯爵令嬢──わたくしの母との婚姻を命じられたのだという。
しかし母の父親である伯爵は婚姻前に他界しており、兄弟のいなかった伯爵家の家督は父の弟が継いでいて、お世辞にもいい縁ではなかった。
そして当時、母にも愛する方がいたらしい。
「アシュレイ様に嫌われるのは苦しい。でも手を取ることも出来ないのです。父が王太子殿下との婚姻を望んだからというのはもちろんですが、本当は違う。わたくしは自分を好きにならない方と結婚しなければならないのです」
今日初めて、自分からアシュレイ様と目を合わせた。
これで最後だ。もう二度と、この方の視界にわたくしは入ることが出来なくなるから。
「母が屋敷を去るとき、父に捨てられた病気の母にわたくしは──お母様みたいに立場で苦しむのは絶対に嫌。わたくしは王太子殿下と結婚して幸せになる。と吐き捨てました。それ以来母とは会えておりません」
鳶色の瞳が見開かれる。この方は、本当に瞳の色まで柔らかくて、優しい。
「最低な人間と軽蔑してください。その方がどれだけ楽か。あなた様に好意を向けられるだけで、吐き気がするほど苦しくなるのです。幸せになりたくなってしまう。わたくしの望みは一つだけ。わたくし以外の方と幸せになって、この苦しみを消してください」
悄然と寮の廊下を歩く。最後にアシュレイ様が何を言われたのか、覚えていない。罵倒や軽蔑の言葉ではなかったような気がするが、期待はできない。きっと明日から話すこともないだろう。
今更になってひどい不快感が襲い、吐き気がした。口に手を当てて、ひたすら自室を目指す。
「エレシア様」
やっと辿り着いて、扉のノブにもたれかかりそうになった。その背から、名を呼ばれた。
しゃんとして背筋を伸ばし、振り返る。
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