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長編版
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頭に浮かんだ疑問はとりあえず隅に押しやって、笑顔になるよう努める。
伯爵家の縁戚である主催者のクラスメイトははしゃいだ様子でお茶やお菓子を勧めてくれた。
浮かない顔をしては彼女に心配をかけてしまう。
「このようなお菓子がリシュフィ様のお口に合いますかどうか心配ですけれど、どれもわたくしの気に入りの物を揃えましたの。お気に召していただけたら良いのですが」
「嬉しいわ。とても可愛らしくて目にも楽しいですわね。それにとても美味しい。……あら。このカップはもしかしてリード商会のものではないかしら。わたくしも好んで使っておりますのよ」
「さすがリシュフィ様だわ! 仰る通り、リード商会から本日のために取り寄せましたの。リシュフィ様がお使いだって聞いたものですから」
にっこり微笑んで嬉しさを表しつつ、久しぶりのあからさまなヨイショに少し疲れる。
そうそう。私はレストリドの娘だから、お茶会に参加するとこうなるのよね。
エレシアと……二人でのお茶会がやっぱり気楽でいいなぁ……。
他愛もない話に花を咲かせる中、どうしても視界の端に若草色がちらついてしまう。
ここにいるのはみんな伯爵家や侯爵家と縁続きの方達ばかりで、男爵家の娘であるアンリエッタ嬢は一番身分が低くなる。本来であれば主催者の彼女が呼んだのだから、一番に話の輪に入れてあげなきゃいけないはずなのに、なんだかそこにいないような扱いをされているようだった。
……どうして呼んだんだろう。
疑問はあるが、お茶ばかりを飲んでいる彼女を輪に入れないのは可哀想だった。
「……アンリエッタさんはドレスでいらっしゃったのね。わたくしもドレスに着替えてくれば良かったと思っておりましたのよ」
とても可愛らしいドレス姿だから。
そう続けようとしたとき、他の参加者達がくすくすと笑いを漏らした。
それはなんだか──背筋がぞわりとくるような嫌な笑いで、言葉が止まってしまった。
「申し訳ございません、リシュフィ様。わたくしがお茶会にふさわしい格好でと伝えたものですから、アンリエッタさんは勘違いなさったようなんですのよ」
「勘違い……?」
主催者の令嬢は先ほどから私に向けていた可愛らしい令嬢の仮面を脱ぎ捨てて、嫌らしい嘲笑をアンリエッタ嬢に向ける。
全員から注目された形になったアンリエッタ嬢は顔を真っ赤に染めて、俯いてしまった。
「ええ。学園の制服でもね、生まれ持った高貴さと言いますか、貴族としての気品というものがありますでしょう? ですからわたくし達は制服で参りましたのに、アンリエッタさんはそれでは足りないとでもお思いになられたのかしら。わざわざ着替えてきてくださって、余計なことを言ってしまったと申し訳なく思っておりますのよ」
言葉の裏に隠された皮肉に心臓がバクバクと騒いで痛くなる。
主催者の令嬢から目をアンリエッタ嬢に移動させて、その真っ赤な顔は羞恥と怒りによるものなのだと悟った。
私の友人方も気の強い方達ではあるけど、こんな嫌味混じりな言葉を言うような子達は一人もいない。眉を潜めて陰口くらいは言うだろうけど、嫌味ではなく注意をするという形を取る子達だ。
けど、今ここにいるこの子達の行為は身分を笠にきた、紛れもない虐めだった。
アンリエッタ嬢は、虐められているのだ。
どうして男爵家の娘でしかないアンリエッタ嬢が対象となってしまったんだろうと焦る頭で考えて、すぐに殿下の気に入りの娘だからかと思い至る。だからこれを見せつけることで、彼女達は私に示したのだ。
『わたくし達は正妃となるリシュフィ様の味方ですよ』と。
これが、私のためになると思ってしているのだ。この子達は。
静かに立ち上がり、自然と笑みを作った。
今のこれならきっとお作法の先生が満点を出してくださるだろう、貴族令嬢らしい笑みを作れたと自負できる。
「わたくしもドレスに着替えて出直して参りますわ。お待ちになって」
「えっ……リシュフィ様、なにを……?」
アンリエッタ嬢に向けられた嘲笑う目とは違う、戸惑いと親愛の目が私に向かう。なんと煩わしいことだろう。
私は公爵家の娘だ。
このようなことを黙って見守り、あまつさえ喜ぶと思ったのか。
──侮辱するにも程がある。
「だってアンリエッタさんのドレスがとても素敵なんですもの。わたくしも着たくなってしまいましたのよ。それに、こちらの茶会に参加するには相応しい服装でと貴女も仰られたようですし」
笑顔で主催者の娘に目を向ければ、貴族令嬢としては申し分ないのだろう彼女は表情を青ざめさせた。
私の怒りが通じたらしい。
「あ、あの……わたくしは、リシュフィ様のために……っ」
「わたくしのために、なんですの」
言い訳がましいところは減点対象だ。
主催者の令嬢は口を継ぐんだが、おさまらない苛立ちから畳み掛けた。
「わたくしのために、何をしてくださったのか。早く答えなさいな。──貴女はわたくしを待たせるおつもりなの」
エレシアならもっと相手を思いやって注意することができるだろうに、本当に私はダメな令嬢だ。
怒りに任せて脅してしまった。……八つ当たりだ。
主催者や参加者達は次々に立ち上がり、言葉の裏に言い訳を混ぜて謝罪してくれた。
謝罪する相手が違うだろうと思うが、これ以上言うとお父様に迷惑がかかってしまう。潮時だろうと判断した。
「わたくしも今日は少し気分が良くなくて、お気を悪くさせてしまったならごめんなさい。今日はこれで失礼するわね」
主催者の令嬢は血の気が引いて倒れんばかりに体を震わせてしまっているから、その手を握った。彼女なりに私のことを考えてしてくれたのだから、さすがにこのまま立ち去るのは気が引ける。
「次はわたくしのお茶会に招待させてくださいな。お気に入りのお菓子やお茶を用意させていただくわ」
優しく聞こえるよう気を付けて言い、ただ一人唖然としている令嬢に目を向けた。
「付き添いをお願いできますかしら。アンリエッタさん」
「あ……は、はい……」
立ち上がって手を取ってくれた彼女に礼を言って、優雅に見えるよう気を付けて、その場を後にした。
二人で無言で歩き続け、サロンからかなり離れたところで息を吐いた。
私が立ち止まったからか、アンリエッタさんは訝しげな目を私に向けている。
そうだ。この子にもフォローを入れておかないと。
正妃と側妃は争ってはいけないのだから。
「そのドレス、本当にとても可愛らしくて素敵だと思うわ。──もうここまでで結構よ。先に失礼するわね」
ほとんど捲し立てるように言って、逃げた。あの子を見ていると、一人の男性を共有する間柄になるという現実が襲ってきて、吐き気が酷くなる。
「レストリド公爵令嬢」
正面から名を呼ばれて足を止める。
早く戻りたかったが、仕方ない。
声をかけてきたのは殿下のご友人で、私の友人の婚約者でもある侯爵家の方だった。
「随分と早いお戻りでしたね。早くに来ておいてよかった。殿下から女子寮へと送り届けるよう言い付かっておりますので、お供してもよろしいですか」
笑顔で告げられた言葉に、足元が崩れ落ちたようだった。
「……殿下は……どうなさったのかしら……」
私の問いかけに殿下のご友人は優しく微笑んだ。
「御用事があると仰せでしたよ。殿下ではなくて申し訳ございませんが、ご辛抱ください」
私が殿下に来てもらいたがったのだと思ったらしいご友人は、微笑ましいものを見るような目を向けて照れ臭そうにそう言った。
しかし私の頭の中は絶望に支配されていた。
ここ数日は必ず殿下が送り届けてくださったのに。
いつも殿下は私を最優先してくださっていたのに。
御用事とは、なに。
まさか……アンリエッタさんに関すること……?
ほんのわずかに残された貴族令嬢としてのプライドが殿下のご友人に礼を言って膝を折った。
他愛もない話をしながら二人で寮の前へと歩みを進めて、到着してすぐにご友人は帰っていかれた。
ただ足を進めて私室へと向かい、そのままベッドに倒れ込む。
「……こんなことなら、婚約は破棄していただきたかったです。殿下……」
晩の食事を取ることもなく、いつの間にか意識を手放していた。
暗く冷たい景色の中で殿下を探す、ひどい夢を見た。
伯爵家の縁戚である主催者のクラスメイトははしゃいだ様子でお茶やお菓子を勧めてくれた。
浮かない顔をしては彼女に心配をかけてしまう。
「このようなお菓子がリシュフィ様のお口に合いますかどうか心配ですけれど、どれもわたくしの気に入りの物を揃えましたの。お気に召していただけたら良いのですが」
「嬉しいわ。とても可愛らしくて目にも楽しいですわね。それにとても美味しい。……あら。このカップはもしかしてリード商会のものではないかしら。わたくしも好んで使っておりますのよ」
「さすがリシュフィ様だわ! 仰る通り、リード商会から本日のために取り寄せましたの。リシュフィ様がお使いだって聞いたものですから」
にっこり微笑んで嬉しさを表しつつ、久しぶりのあからさまなヨイショに少し疲れる。
そうそう。私はレストリドの娘だから、お茶会に参加するとこうなるのよね。
エレシアと……二人でのお茶会がやっぱり気楽でいいなぁ……。
他愛もない話に花を咲かせる中、どうしても視界の端に若草色がちらついてしまう。
ここにいるのはみんな伯爵家や侯爵家と縁続きの方達ばかりで、男爵家の娘であるアンリエッタ嬢は一番身分が低くなる。本来であれば主催者の彼女が呼んだのだから、一番に話の輪に入れてあげなきゃいけないはずなのに、なんだかそこにいないような扱いをされているようだった。
……どうして呼んだんだろう。
疑問はあるが、お茶ばかりを飲んでいる彼女を輪に入れないのは可哀想だった。
「……アンリエッタさんはドレスでいらっしゃったのね。わたくしもドレスに着替えてくれば良かったと思っておりましたのよ」
とても可愛らしいドレス姿だから。
そう続けようとしたとき、他の参加者達がくすくすと笑いを漏らした。
それはなんだか──背筋がぞわりとくるような嫌な笑いで、言葉が止まってしまった。
「申し訳ございません、リシュフィ様。わたくしがお茶会にふさわしい格好でと伝えたものですから、アンリエッタさんは勘違いなさったようなんですのよ」
「勘違い……?」
主催者の令嬢は先ほどから私に向けていた可愛らしい令嬢の仮面を脱ぎ捨てて、嫌らしい嘲笑をアンリエッタ嬢に向ける。
全員から注目された形になったアンリエッタ嬢は顔を真っ赤に染めて、俯いてしまった。
「ええ。学園の制服でもね、生まれ持った高貴さと言いますか、貴族としての気品というものがありますでしょう? ですからわたくし達は制服で参りましたのに、アンリエッタさんはそれでは足りないとでもお思いになられたのかしら。わざわざ着替えてきてくださって、余計なことを言ってしまったと申し訳なく思っておりますのよ」
言葉の裏に隠された皮肉に心臓がバクバクと騒いで痛くなる。
主催者の令嬢から目をアンリエッタ嬢に移動させて、その真っ赤な顔は羞恥と怒りによるものなのだと悟った。
私の友人方も気の強い方達ではあるけど、こんな嫌味混じりな言葉を言うような子達は一人もいない。眉を潜めて陰口くらいは言うだろうけど、嫌味ではなく注意をするという形を取る子達だ。
けど、今ここにいるこの子達の行為は身分を笠にきた、紛れもない虐めだった。
アンリエッタ嬢は、虐められているのだ。
どうして男爵家の娘でしかないアンリエッタ嬢が対象となってしまったんだろうと焦る頭で考えて、すぐに殿下の気に入りの娘だからかと思い至る。だからこれを見せつけることで、彼女達は私に示したのだ。
『わたくし達は正妃となるリシュフィ様の味方ですよ』と。
これが、私のためになると思ってしているのだ。この子達は。
静かに立ち上がり、自然と笑みを作った。
今のこれならきっとお作法の先生が満点を出してくださるだろう、貴族令嬢らしい笑みを作れたと自負できる。
「わたくしもドレスに着替えて出直して参りますわ。お待ちになって」
「えっ……リシュフィ様、なにを……?」
アンリエッタ嬢に向けられた嘲笑う目とは違う、戸惑いと親愛の目が私に向かう。なんと煩わしいことだろう。
私は公爵家の娘だ。
このようなことを黙って見守り、あまつさえ喜ぶと思ったのか。
──侮辱するにも程がある。
「だってアンリエッタさんのドレスがとても素敵なんですもの。わたくしも着たくなってしまいましたのよ。それに、こちらの茶会に参加するには相応しい服装でと貴女も仰られたようですし」
笑顔で主催者の娘に目を向ければ、貴族令嬢としては申し分ないのだろう彼女は表情を青ざめさせた。
私の怒りが通じたらしい。
「あ、あの……わたくしは、リシュフィ様のために……っ」
「わたくしのために、なんですの」
言い訳がましいところは減点対象だ。
主催者の令嬢は口を継ぐんだが、おさまらない苛立ちから畳み掛けた。
「わたくしのために、何をしてくださったのか。早く答えなさいな。──貴女はわたくしを待たせるおつもりなの」
エレシアならもっと相手を思いやって注意することができるだろうに、本当に私はダメな令嬢だ。
怒りに任せて脅してしまった。……八つ当たりだ。
主催者や参加者達は次々に立ち上がり、言葉の裏に言い訳を混ぜて謝罪してくれた。
謝罪する相手が違うだろうと思うが、これ以上言うとお父様に迷惑がかかってしまう。潮時だろうと判断した。
「わたくしも今日は少し気分が良くなくて、お気を悪くさせてしまったならごめんなさい。今日はこれで失礼するわね」
主催者の令嬢は血の気が引いて倒れんばかりに体を震わせてしまっているから、その手を握った。彼女なりに私のことを考えてしてくれたのだから、さすがにこのまま立ち去るのは気が引ける。
「次はわたくしのお茶会に招待させてくださいな。お気に入りのお菓子やお茶を用意させていただくわ」
優しく聞こえるよう気を付けて言い、ただ一人唖然としている令嬢に目を向けた。
「付き添いをお願いできますかしら。アンリエッタさん」
「あ……は、はい……」
立ち上がって手を取ってくれた彼女に礼を言って、優雅に見えるよう気を付けて、その場を後にした。
二人で無言で歩き続け、サロンからかなり離れたところで息を吐いた。
私が立ち止まったからか、アンリエッタさんは訝しげな目を私に向けている。
そうだ。この子にもフォローを入れておかないと。
正妃と側妃は争ってはいけないのだから。
「そのドレス、本当にとても可愛らしくて素敵だと思うわ。──もうここまでで結構よ。先に失礼するわね」
ほとんど捲し立てるように言って、逃げた。あの子を見ていると、一人の男性を共有する間柄になるという現実が襲ってきて、吐き気が酷くなる。
「レストリド公爵令嬢」
正面から名を呼ばれて足を止める。
早く戻りたかったが、仕方ない。
声をかけてきたのは殿下のご友人で、私の友人の婚約者でもある侯爵家の方だった。
「随分と早いお戻りでしたね。早くに来ておいてよかった。殿下から女子寮へと送り届けるよう言い付かっておりますので、お供してもよろしいですか」
笑顔で告げられた言葉に、足元が崩れ落ちたようだった。
「……殿下は……どうなさったのかしら……」
私の問いかけに殿下のご友人は優しく微笑んだ。
「御用事があると仰せでしたよ。殿下ではなくて申し訳ございませんが、ご辛抱ください」
私が殿下に来てもらいたがったのだと思ったらしいご友人は、微笑ましいものを見るような目を向けて照れ臭そうにそう言った。
しかし私の頭の中は絶望に支配されていた。
ここ数日は必ず殿下が送り届けてくださったのに。
いつも殿下は私を最優先してくださっていたのに。
御用事とは、なに。
まさか……アンリエッタさんに関すること……?
ほんのわずかに残された貴族令嬢としてのプライドが殿下のご友人に礼を言って膝を折った。
他愛もない話をしながら二人で寮の前へと歩みを進めて、到着してすぐにご友人は帰っていかれた。
ただ足を進めて私室へと向かい、そのままベッドに倒れ込む。
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