金の精霊術師から逃げたいモグラ令嬢と、逃がしたくない金の精霊術師のすれ違い

おかき

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✿すれ違う2人✿

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金の精霊術師。

そう言われるこの方は、ミシェル・オランド大公ご子息。

私を抱き込み、頭に頰を寄せスリスリしている。

大公ご子息は長身の為、小柄な私はご子息に埋め尽くされている。

埋め尽くされている私は、リアナ・ブルーム子爵令嬢です。


はぁ~⋯⋯⋯。

逃げたのにッ!!

本気で、本気で逃げたのにッ。

逃げて数秒で捕獲された⋯⋯。


金の精霊術師は
「逃げるなんて酷いことをする。2年ぶりに会えたのに。」



私は貴方に会いたくありませんでしたが!?



逃げる私に金の精霊術をかけてくる。

金の精霊力で、宙に浮かされご子息の目の前に降ろされる。

ご子息は私を抱きしめた。
優しく微笑まれるが、私の心は1ミリも動かない。
この笑みに世の女性は魅入られるらしい。

が、私の心の中は(⋯⋯⋯無⋯⋯です。)



今更何の用だろうね?

2年も音信不通だったし、婚約解消の旨は大公家に伝えた筈だし⋯⋯。

考え込んだが答は出ないので、自分の為に答えを出した。

私は助けを呼んだ。
私が大切な『モウちゃん』を。



私の胸元にモウちゃんが現れた。

めちゃ可愛い!!

私は満面の笑みで

「モウちゃん。今日も可愛いいね!」と、なでなでしようとしたが、抱きしめられていた。
モウちゃんが私を転移させ、腕の中から抜け出いた。

「モウちゃん、ありがとう!」

モウちゃんを抱きしめ、好き好き~と頬ずりや、なでなでをする。



私は小柄で茶髪のふんわりな髪に薄い黄色目。

小さく可愛いので、「子リス嬢」のあだ名で1部の人から可愛がられているの。



モウちゃんは逆に人気がない⋯⋯。

モウちゃんはモグラの精霊獣。

周りはモグラと馬鹿にする。

私はモウちゃんが大好き。ぬいぐるみの様な可愛らしい容姿。



この国は精霊と精霊獣との結びつきを重視している。
精霊と精霊獣が国の中心にいるのだ。

人は精霊獣や精霊と契約して初めて精霊術が使える。



ミシェル様は水と風、2人の大精霊と契約している。
金の精霊術を使うとは、大精霊と契約している証なのだ。

この国、いや⋯⋯この大陸で唯一として世界から崇められている。



なぜそんな御方が子リス如きを構い倒してくるのか⋯⋯。

それは、婚約者(元?)だからなのだ。



15歳のデビュタントで私は一目惚れされたらしい⋯⋯。意味が解らない。
なぜなら、デビュタントの時にミシェル様は沢山のお姉様を侍らせていたのだ。

私の様なチンチクリンに一目惚れ等ありえないのだから。



確かに私は小さく可愛い。らしい⋯⋯。
私は自分の容姿に興味がない。

あるのは、領地の改革のみだ!



思考を戻し。

「ミシェル大公ご子息、お久しぶりです。先程留学先より帰って参りました。では、失礼します。」

即逃げる。


逃げた先には、いつもの沢山のお姉様方。

「ご機嫌よう。リアナ様。お久しぶりです事。
相変わらず可愛くない精霊獣を抱えてらっしゃいますわね。」

「あら。田舎令嬢にはモグラはお似合いですわよ?」



クスクス笑われる。

が、気にもならない。

「ミシェル様は、あちらにいらっしゃいますわよ?どうぞ持って行って下さいね!」

ニ~ッコリ。



お姉様方が驚いてる間に、さっさと逃げる。ミシェル様が追いかけて来たが、お姉様方に囲まれている。

チラリと見ると、笑顔で話し込むのを見て少しだけ胸がチクリとする。



婚約当初仄かに芽生えていた恋心が小さく疼いた。
「はぁ~。何故大公ご子息は私を未だに構うのかしら。放っといてほしいのに。」


〈リアナは抱きしめられてただろう?好かれてるのではないのか?〉

話しかけて来たのはモウちゃんだ。

普通の精霊獣は話せない。モウちゃんは何故か話せる。



モウちゃんは私が領地の畑の改良をしていた時に出会った。

私は魔力を持っている。

遥か昔は魔法があったが、精霊術が重宝され魔法はこの国からはほぼ消えていた。

魔力持ちは余りいないが故、王家に縛られる場合があった。

精霊術は大切ではあるが、他国は魔法を主に使う。
そのこともあり、数十年前から保護と言う名目で拘束に近い扱いを受ける場合があった。



私の属性は地と水。

隣国の留学先で魔力測定をしてもらい、その時に判明した。魔力量は多い。

小さい頃に両親が魔力に気が付き、秘密厳守となった。
私は領地の為に何かしたくて、コソコソ魔力を使った。独学で色んな事を試した。

すると、土地を豊かにする事が解った。

土いじりをする振りをして魔力を使う。
を、ひたすら繰り返した。



いつものように土に魔力を流していた。
その時にいきなり土から飛び出して来たのがモウちゃんだ。


〈貴女の魔力はとても心地がよいです。私と契約しませんか?〉

契約とは?

〈私と契約すれば、貴女の魔力と私の精霊術とでもっと領地を豊かにできます。〉


「もしかして、精霊獣様なの?初めて見るけど。モグラって⋯⋯。」

〈⋯⋯⋯。モグラは嫌いですか?〉

泣きそうなモグラさん。



「全然嫌いじゃないよ?!物凄く可愛いよ!だから、私と契約して下さい。」


〈では、真名の交換をしましょう。私の名前はファルネーゼ。そなたの名前は?〉

「私の名前は、リアナ・ブルームよ」



〈我ファルネーゼはリアナ・ブルームと契りの誓約を交わす。リアナよ魔力を私に流せるか?〉

モグラさんの頭に手を置き魔力を渡す。すると、温かい何かが私に流れ込んだ。

〈契約は成った。
これから、よろしくな!!〉



手を挙げ挨拶をするモグラさん。

可愛いしかない。

私はモグラさんを抱き寄せ、邸に帰った。
両親は精霊獣と契約した事に驚いていた。


精霊獣の真名は誰にも言えない。


私はモウちゃん。と、名付けた。

〈モウちゃんか!可愛い名前を貰ったぞ!!〉


本人は喜んでくれたが、両親は申し訳なさそうな顔をした。

「可愛いと思ったけど、駄目かな~?」

両親は、

「名前は可愛いが、精霊獣様にちゃん付けはなぁ~⋯⋯。」

そうか。格好良い方が良かったのかな。


「ごめんね。名前考えるね!」

〈なぜ!?私は気に入ったよ!?可愛い名前だからこれが良い。〉

と、短い手を合わせ可愛く首を傾げる。

「モウちゃん、可愛いね。」

と、頭をなでなで。
モウちゃんは気持ち良さそうに私の手の平に擦り寄る。


この光景は領地ならどこでも見られる、可愛い名物となる。



モウちゃんは私が精霊術で領地を豊かにしている体にしてくれたし、私の魔力を隠してくれたの。

モウちゃんはとても凄い精霊獣なのよ。



領地の農作物は豊かに実り、領地は豊かになった。



モウちゃんと出会って5年。

15歳となりデビュタントで私の生活は様変わりした。
不愉快な方向に⋯⋯。


ミシェル様からの婚約申し込みが嬉しくなかった訳ではない。

精霊術の使い手で容姿も頭脳も良く、貴族らしからぬ穏やかな性格でとても優しい。

良い所しかないのだ。

好意を寄せる女性は星の数程。

当然、夜会やお茶会でどれだけ嫌がらせをされたか覚えられないくらいだ。


私が気を許せるのは、同じ地方出身のご令嬢くらい。

都会の令嬢はモグラを嫌い馬鹿にする。


私は1年間、彼の婚約者としてそれなりに頑張ったし我慢した。

だけど、あるお茶会でモウちゃんが紅茶を被ってしまったのだ。

精霊術で綺麗にしたが、私は泣いてしまった。

悔しかった。

私への攻撃は許せたが、モウちゃんに被害が行くのは許せなかった。


その騒ぎに気が付きミシェル様が来た。
事情も何も聞かず令嬢を嗜めるどころか、精霊獣を皆の前に出した事で私を責めたのだ。


「リアナ。精霊獣は人前に簡単に出してはならないよ。しかも、ご令嬢は高位貴族です。場を弁えないと。」

私は何も言えない。言いたくなかった。


モウちゃんは私にかかるはずの紅茶を身を挺して庇ってくれたのに、彼は事情を聞くこと無く私を責めた。


「精霊獣を出してしまい申しわけありません。不作法を致しました故、これにて退席させて頂きます。」

カーテシーをして、モウちゃんを抱きしめ馬車乗り場まで急いだ。

「リアナ!なぜ帰るのです?」

と、腕を掴みミシェル様が引き留めた。


「先程も言いましたが、不作法をした為ですが何か?大公ご子息は私に何をお求めですか?私がこの1年間何を思っていたか解りますか?」


「リアナ。何をそんなに怒っているのですか?あの場にいたご令嬢達も赦すと言っています。戻りましょう?」

駄々っ子をあやすような口調に腹が立つ。

私は悪くない。

この1年、どれだけ耐えたか知りもしない。

悠長に女を侍らせ、私のされた仕打ち等知りもしないくせに!!


「私の質問には答えていただけませんのね。大公ご子息は。」

「その呼び方は止めなさい。」

「この1年、私の考えていた事は大公ご子息との円満な婚約解消ですわっ。」



この言葉にミシェル様は驚いていた。

「何故その様な話しになるのですか。
婚約解消はしませんよ!!絶対に。」



その言葉は嬉しくない。

何故そうなるのかすら考えてくれない。

もう疲れた⋯⋯。



「ミシェル様は、いつも私を責められる。そしてご令嬢達を擁護する。
何がしたいのですか?私がご令嬢や貴方に何かしましたか!?
私を蔑みたいのなら幾らでもすれば宜しい。でも、私の精霊獣を馬鹿にするのだけは許さない。」



モウちゃんが私を実家の邸まで転移してくれた。

両親には事の次第を全て話た。

「済まなかった。リアナ。大公家からの縁談に舞いあがってしまった。」

父と母は謝罪してくれた。

母は女の世界の社交の厳しさを知っているので、リアナを抱きしめ辛さを解って貰えた。



「リアナ。隣国に留学してみない?向こうは魔法が盛んだから、勉強にもなるわよ。」母は隣国の子爵家出身である。

祖父には面識があり、私が魔力持ちだと知っていた。

魔力持ちの少ない国にいては不都合が起きるかもしれない。その時は祖父を頼るように話がついていた。



私は急ぎ準備をして、その日の夕方には馬車で隣国に発った。

モウちゃんが居るから大丈夫なのだ。最強の護衛を連れて私は隣国に逃げた。



残されたミシェルは訳が解らなかった。

突然の婚約解消の言葉に動けなかった。


そこにアリーシャ嬢と仲の良い令嬢が数人声を掛けてきた。最近は一緒にいないな⋯⋯。


「ミシェル様。リアナ様がされてきた仕打ちをご存知ないのですね。」

と⋯⋯⋯。

(仕打ちとは何だ!!)

視線を向けると

「私達は伯爵家です。公爵令嬢であるアリーシャ様にはずっと思う所もありましたが、異を唱える立場にありませでした。」



「何が言いたい!ハッキリ言え!!」



「では、ハッキリ申し上げます。この結末はミシェル様。貴方様の自業自得です。

アリーシャ様を何故側にいつも置いていたのです!?

リアナ様が大切ならば、アリーシャ様に任せるのではなく自ら護らなかったのですか!!」


「なぜアリーシャがでてくるのだ。」


「そこからですか⋯⋯。」呆れられた視線をされた。不敬ではあるが、私に過ちがあるならば知りたかった。

「教えてくれ。リアナに何があったのかを。」



令嬢達曰く

彼女達は元アリーシャの取り巻きだった。

リアナを茶会や夜会で散々罵りドレスを汚したり数え切れない嫌がらせをして来た。

全てアリーシャの指示であり、アリーシャは嬉々として虐げ続けた。と。


アリーシャは私に好意を持っており、いずれ自分が婚約者となると身分等を考えても、そう信じていたらしい。


「⋯⋯⋯。」

私のせいか。私がアリーシャにリアナを任せたばかりに⋯⋯。

身分を気にしていたリアナの後継人として、公爵令嬢であればきっと助けになってくれると信じていたのだ。


許せなかった。アリーシャを。

そして、何も知らずリアナとの婚約に浮かれていた自分を。


自らの手でリアナを地獄に導いていた事実に。


「ですが、リアナ様は嫌がらせをしていた私達に手を差し伸べて下さいました。

ここに居る者は領地を助けて頂いた者です。」


「私達の嫌がらせも、それはそれだと。領民には何ら関係ない事と⋯⋯っ。」

令嬢は泣いていた。

「あの様に優しいリアナ様を虐げていた事を今更ながら後悔しております。」

「大公ご子息が後悔なさり、それでもリアナ様との関係を修復したいのであれば手助けします。

リアナ様が喜ぶかは解りませんが、アリーシャ様の仕打ちの証拠は揃えてありますので。入り用がありましたら、お声掛け下さい。」

令嬢達はそう言うと離れて行った。


私はそのまま邸に戻った。らしい。
気が付くと私室のソファーに居た。


リアナを思い出す。


私は幼い頃、リアナがモウちゃんと呼ぶモグラの精霊獣と契約する姿を偶々見ていた。

隣の領地に避暑に訪れ、風の大精霊があの場に連れてきたのだ。

何をしているのか解らなかったが、モグラと契約を結んでいた。

モグラはとても可愛かった。

モグラを抱きしめる令嬢も小さく可愛い子だった。

満面の笑みで「可愛い。可愛い」と、モグラを撫でていた。

一目惚れしたのは、この時であった。

私と契約している風の大精霊の姿は人型でとても美しいが、関係性も無く契約している。ただ、それだけだ。


ご令嬢の名前も解った。

リアナ・ブルーム子爵令嬢。

1つ歳下であった。


私は父上にリアナ嬢と婚約したい旨を伝えた。だが、子爵家となると爵位の差が邪魔をした。

お互いまだ幼かったのも理由の一つだ。


「大精霊との契約をもう1人増やせ。未だ大精霊2人との契約した者はおらん。
そうすれば、誰からも横槍を入れられる事は無い。」

「解りました。その時は必ずリアナ嬢との婚約をお願いします。」


父上は無理だから諦めるだろうと思っていたらしい。
が、私は精霊術を極めた。

精霊の召喚魔術を使えるまでになり、私は大精霊の召喚に成功した。

風の大精霊と契約していたのが大きかったらしく、契約が整った。

それからも、リアナ嬢とモグラのあの微笑ましい光景を思い出し、精霊術師として高みへ行けるように頑張った。

そして2大精霊との契約を公表し、金の精霊術師として立場を築き上げた。


5年近くかかった。

彼女のデビュタントまでと、父上に期限を切られ焦る中で結果を出した。

父上は呆れながらも、私の想いを認めてくれ早々に婚約を認めてくれた。


デビュタントの日、5年振りに見た彼女はやはりとても可愛らしかった。

周りの令嬢は細身のドレスを選ぶ中、少しだけフンワリとしたドレスを着て可愛いらしさが倍増していた。


リアナ嬢の可愛らしさに気が付いた令息達がソワソワしている。

が、もうブルーム子爵家には我が家からの婚約の話が行っているはず。


リアナ嬢に近付こうとするが、私は沢山の令嬢に囲まれてしまった。

今日はデビュタントの祝の夜会の為、無下にする事も出来ず、対応しながらリアナ嬢に話しかけた。

「デビュタントおめでとう。ドレスもとてもお似合いですよ。」

初めて声をかけた。緊張で声が震えないか心配したが上手く話せた。



「大公ご子息。お言葉ありがとうございます。」と、カーテシーをした。顔をあげれはとても可愛いらしい笑顔を見せた。

(可愛い。可愛らしい。)それしか言葉が無かった。



だがリアナ嬢は挨拶すると、早々に場を離れデビュタントの令嬢達の輪の中に消えた。

この時に、周りの令嬢達のリアナ嬢への鋭い視線に気が付いていれば少し先の未来が変わったかもしれなかった。


「ミシェル様。今の方はどなたですか?」

1人の令嬢が声をかけた。

「リアナ・ブルーム子爵令嬢ですよ。婚約者となる方ですかね。」

見た事がない幸せそうな笑顔でそう話すミシェル様に、顔や態度には出さないがリアナ嬢への悪意が深まった。



その中で1番高位なアリーシャ公爵令嬢が声をかけた。

「リアナ嬢との婚約ですか。おめでとうございます。」

と、祝いの言葉をくれた。

私は「まだ決定ではないが、そうなる事を祈るよ。ありがとう!アリーシャ嬢。」


「では皆様、社交に慣れないリアナ嬢の為に、全力でお力添えを致しましょう。」

令嬢達に声を掛けていた。

そこに悪意があるとは露とも思わずに。



私がこの言葉を少しでも警戒していれば。

幼馴染だからとアリーシャ嬢を信用などせず、自らがリアナ嬢の側にいれば婚約解消との言葉を聞かずに済んだ。



私は自らの行いで、大切なリアナ嬢を辛い仕打ちの待つ社交に向かわせたのだから。

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