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15.夢想
しおりを挟む両親の話が終わるのをボーっと眺めていたアメジストは、継母の鋭い声でビクッと我に返る。改めて背筋を伸ばし、返事をした。
「アメジスト!」
「は、はいっ!」
「今のお父様のお話、聞いていたでしょう? 本日は外出禁止です。屋敷の中から一歩も出ないように。もちろんお庭も許しません」
「あ、えっとお母様。学校は……」
「休みなさい。連絡はこちらでしておきます、良いですね?」
「はい、承知しました」
なぜそういう話になったのか? 理由も分からず継母の言う事を聞くアメジストは今日一日、屋敷から出る事を禁じられたのだった。
◇
――時間は遡り、アメジストがジャニスティの部屋を出てから、約十時間後の出来事。
時刻は朝の五時。外はまだ薄暗く静まり返っていた。その時ジャニスティの部屋に響いた、可愛らしく小さな声。
「キュあッ!!」
「あぁ……目覚めた、のか」
「んあふぅ?」
「……そうか。子供の君はまだ、話せないんだった、な」
ジャニスティはひどく疲れきっていた。空っぽになった無の心から、やっと漏れ出た言葉のように、低く小さな声で力なく話す。立つ事もままならない今の彼は、冷たい床に座り込んだままフッと優しくその子に笑いかけた。
「うぅに?」
その可愛いらしい声の正体は、アメジストが「助けたい」と想い連れて帰った、レヴシャルメ種族の子であった。
「会話は出来る……な。話している意味は……理解……」
その子の元気な姿と美しく広げた羽を見て、復元に成功したのであろうと確信し安堵する。魔力を使い果たしていたジャニスティは、這うようにベッドに上がると仰向けになって倒れ込んだ。
ふわぁ。
「……ん」
気が遠くなっていく彼は何かを感じた。確認する為に少しだけ瞼を開き、視界へ光を戻す。見ると命を助けたその子が横にちょこんと座り、自分の顔をまじまじと覗き込んでいる。
ジャニスティはその何とも言えぬくりくりの瞳と愛らしい表情にフッと笑うと、ほぼ無い力を振り絞りながら微笑みその子に話しかける。
「慰めて、くれているのか?」
――レヴよ、この罪深き私に何を想う? それとも、夢でも見せてくれるのかい?
優しく彼の頬に触れている手のひらはとても小さく、温かく、ふわぁっと柔らかい。
(あぁ……良かった。本当に、良かった)
――お嬢様の想いを、叶えられたのであれば。
ジャニスティは最後の声を出す事も出来ず倒れるように力尽き、眠りに落ちた。
それは深く、深い、『夢想』の眠りだった――。
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