幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

文字の大きさ
11 / 91

第10話 暗雲立ち込める

しおりを挟む


 寝起きの私の髪を解し、なにやらオイルのようなものをつけて整えたのちパジャマを脱がされて用意された服を着せられる。
 お肌もアリシアの慣れた手つきでメイクアップされていく。
 この一連の動きは毎日の「着せ替えごっこ」で慣れたものであった。
 二人と同様にラビアンローズによって用意された服は、昨日まで来ていた黒を基調としたドレスによく似ている。

「それじゃあ、いきましょうかしら」

 準備も完了した私たちは「朝食」の待つバトルフィールドへと向かうのであった。
 扉の前では、主人である私を待つ猫耳のちっこい獣人執事が「それでは魔王様の食堂へとご案内いたしますニャ」と可愛らしく体をワキワキさせている。
 私よりも少し小さい茶色い毛並みの彼は、なんとも愛くるしい姿であった。
 アリシアも「あらあら、可愛らしい猫ちゃんね」と頭をなでなでしている。
 それに対して猫執事は「子ども扱いするニャ!」と少し怒っていた。

 私のために小さい動物系の侍従を用意してくれたのかなあなんて思いながら、食堂へ向かうために階段を下りていく。
 まあ、ゴリラみたいにムキムキで超強そうな怪物系の魔物ばかり配属されてたらちょっと疲れていたかもしれないのでありがたい限りである。

「ちなみに、今日のご飯は「元気な野菜の塩スープ」と「ふかふかパン」、そして「エビルシードとボア肉の煮物」だニャ!」

 メルヴィナ様のために魔王城が誇る一流コックたちが、腕によりをかけて作ったニャ!と胸を張る猫ちゃん。
 「あら、そうなのかしら?楽しみだわ」と口では答えつつも、彼が告げたメニューの名前には少し不安が残る。
 もしかして、魔王城は「メシマズ」なのではないかという予感がしてならない。
 猫から告げられたメニューを共に聞いていたアリシアとガウェインもなにやら二人でざわついていた。
 その様子を見た猫ちゃんは「ふふふ、二人も楽しみなのかニャ?」と得意になっている。

 それから一度屋敷の外に出て、庭園を抜けて魔王城へと入る私たち。
 魔王城に入ったところで新たに増えたお付きの者たちを伴って、猫による先導のもと食堂へと向かう。
 昨日も歩いた広大な廊下を歩き、食堂へとたどり着いた私たち。

「ここが食堂でございますニャ!」

 バン!と勢いよく扉を開けたそうな様子の猫であったが、大きな魔物も通れるように用意されている巨大な扉は既に開け放たれていた。
 前世でいうところの「ビュッフェ」のように、とてつもなく広い会場に無数に食事をするための席がある食堂。
 そのそこかしこに朝食をとる魔物たちが鎮座していた。

「猫の執事さん?もしかして、こちらでお嬢様も朝食をとるのですか?」

 口角を横に広げて苦笑いするアリシアが「まさか」といった様子で猫に問うと、「そうだニャ!魔王様もここで食事をするんだニャ!」と元気よく答える。
 その返答に絶句するアリシアとガウェイン。
 二人からすると、この食堂は「平民の酒場」といった認識であった。
 いや、平民の中でも比較的貧しい人等が使う飯屋といった感じだろう。

「アリシア、私なら平気よ」

 私は顔面蒼白なアリシアににこやかに話す。
 やはり、先ほど猫ちゃんが言っていたメニューに嘘偽りはなさそうであることが分かった。
 しかし、この子達がおいしい絶品だというからには味は確かなのであろう。
 それならば、公爵令嬢たるものが取り乱すわけにもいかない。
 それに、前世ではさほど裕福ではなかったので、これくらいの食堂程度慣れっこである。

「で、ですがお嬢様……」

 これではあまりにも、とその先を濁すアリシア。
 なんだか秀才のアリシアがあたふたしている様は新鮮であり、主人である私的には「おいしい」状況であった。
 美人メイドとイケメン騎士がビクビクしている横で、楽しそうにニコニコしている私。
 共に歩く猫ちゃんも「メルヴィナ様も満足だニャ!」と嬉しそうにしていた。

 食堂の最奥へとたどり着くまでに、多くの魔物たちが食事を中断しては私たちに一礼する。
 そのたびに私は、「ごきげんよう」と軽く挨拶を返していった。
 私が通り過ぎたあとでは「メルヴィナ様は我々にも目を向けてくださる!」となんか喜んでいる。
 まあ、私的には嬉しそうならいいやくらいの感じであった。

 そうこうするうちに私たちはついに「魔王様」が待つテーブルへとたどり着く。

「遅いぞ、何をしていた?」
 
 食堂にある質素な椅子の上で足を組んで待っている男と、隣の席で「メルヴィナ様、おはようございます」とこちらに一礼するアドルがいた。
 慇懃な態度で座る男は、飯が待ちきれんといった様子で苛立ちを私の方へぶつけてくる。
 その場に居合わせるアリシアとガウェインは「また一悶着起きるぞ……」と胃がキリキリしてくるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...