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第21話 まずは文字から始めよ
しおりを挟む私たちも食堂を後にし、第3練兵所と書庫の分岐点でガウェインと別れる。
そして、私とアドル、アリシア、ワタアメの3人と1匹は書庫へと向かうのだった。
「ねえアドル、書庫もやっぱり広いのかしら?」
魔王軍が誇る書庫についてウキウキ顔で質問する私。
それに対してアドルは「他の施設と比べると狭いですよ」と答える。
どうやら、血気盛んで脳筋気味な魔物たちに書庫はあまり人気が無いらしい。
しかし、中には本や勉強が好きな魔物もいるということである。
「蔵書が少ないということは恐らくないですよ」
書庫が狭いという情報に少し落ち込む私に対して、アドルは慰めるように言った。
隣を歩くアリシアも「魔物が書いた本というのも興味深いですね」とコメントしている。
彼女が何気なく零した一言で私はあることに気づく。
「というか、魔物が書いた本って「人間」にも読めるのかしら?」
それは、彼らが私たち人間と同じ種類の文字を使っているのかという疑問であった。
よくよく考えると当然の疑問である。
そもそも、魔物たちとすんなり会話できるのは言語が「世界共通」であるためだ。
しかし、「文字」に関しては怪しい。
人間達ですら、各国で使われている文字が違うのだ。
この事実は私的に、転生して困惑したことランキングの中でも結構上位に食い込む。
「いえ、おそらく読めません」
私の疑問に対して冷静に答えるアドル。
なんとなくそんな気はしていたが、実際に断言されてしまうと悲しい気分になる。
同じく残念にしているアリシアも「では、どうやってお勉強するのでしょう?」と新たな疑問を口にした。
もしかして、アドルが付きっ切りで教えてくれるのかしら?
魔王やアドルが忙しいから手伝ってあげたいのに、そのためにアドルが私のために時間を割くのは本末転倒である。
そのことについて、アリシアと同じく疑問に思う私であった。
「メルヴィナ様には「魔族文字」を学んでもらいます」
広い廊下を歩きながらアドルが言う。
どうやら、魔族社会で広く使われている「魔族文字」とやらを私に教えてくれるらしい。
まさか、本を読むための「文字」から勉強することになるとは……。
これは骨が折れそうだと思う私であった。
----
公爵家の書庫並には広い「魔王軍書庫」の閲覧テーブルについた私たち。
いくつかの本と、勉強用の紙と筆を卓上に用意するアドル。
用意された紙の材質はそこまで悪くなく、実用上は特に問題なさそうであった。
「先ほども話したのですが、魔王軍には「優秀な文官」が全然足りていません」
勉強の用意を終えて席に着いたアドルが言う。
がっくりと肩を落として話す彼からは、そのことについて切実に悩んでいる様子が見て取れた。
アドルが言うには、魔王軍は戦闘能力などはとても強いのだが、内政キャラがほとんどいないとのことである。
「日常や、経済的な秩序を守る役目は「政治経済部」の魔物たちがいるので助かっているのですが……」
普段の雑事は家臣の魔物たちが頑張ってくれているという。
しかし、外交や軍事、貿易といった諸々の活動は魔王とアドルがほぼこなしているとのことだった。
そのため、少し魔族達の世界情勢が変わると「魔王」と「アドル」に負担がかかるとのことである。
そんなわけで魔王が忙しそうにしていたのだ。
「それじゃあ、一刻も早く戦力になる必要がありそうね」
アドルから魔王軍を取り巻く環境について話を聞いた私は、少しでも彼らを手伝えるようになりたいと思った。
私を子供の様に思っているアドルは「ゆっくり時間をかけて学んでいただければ大丈夫ですよ」と答える。
だが、私をただの「お嬢様」だと思ってもらったら困るのだ。
公爵家の書庫で無限に勉強していた私の「学習能力」は、もはや凄まじい域に達している。
これに関しては、一国の宰相であるリルシュタイン公爵も密かに評価していたのだ。
「私もお嬢様のお手伝いができるように勉強を教えてください」
私の横に並んで座るアリシアも、アドルに教えを乞うていた。
その様子に「さすが、メルヴィナ様の筆頭メイドですね」とアリシアの心掛けを褒める。
こうして、私たちのお勉強が始まった。
「もきゅ!」
どうやら、広いテーブルの上で丸くなっているワタアメも一緒にお勉強したいらしい。
可愛い奴め。
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