幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ

文字の大きさ
26 / 91

第20話 魔王と魔王妃

しおりを挟む

「邪神教?なにそれ?」

 アドルの口から出た物騒な言葉がすごく気になる私。
 だが、質問する私に対して、魔王が横から「お前には関係ない」と言う。
 魔王の突き放すような言い方にイラっと来た私はまたしても怒りをあらわにするのだった。
 いち早く危険を察知したワタアメは私の腕から抜け出し、アリシアの膝の上へと非難する。

「魔王妃ならば、魔王の悩みについて一緒に考えるものなんじゃないのかしら?」

 私を魔王妃にするつもりで連れてきたのではないのかとキレる私。
 ちょっと後ろにのけ反る魔王が、両手をひらひらさせて「お前は魔族について何も知らないからな」と呆れたように言う。
 書庫に入っていいから少しは勉強してから出直せと怒られる私であった。
 たしかに、魔王の言う通り私は魔族についての知識がほとんどない。

「アドラメレク、忙しいところ悪いがこいつにいろいろ教えてやってくれ」

 アドルに向かって、私に対する態度とは打って変わって丁寧に頼む魔王。
 その対応の違いに少し腹が立ちつつも「書庫」でアドルにいろいろ教われるという事実に歓喜した。
 かつて公爵家の書庫に引き籠っていた私にとっては、「書庫」は「厨房」と同様に特別な場所なのである。
 降ってわいた幸運に喜びを隠せない私は「怒ったと思ったらニヤニヤする情緒不安定な王妃」だと噂されるのだった。


----


 魔王から「勉強しろ」と言われて歓喜した私は、周りの魔族に「魔王妃様って個性的だよな」と言われながら食堂を後にしたのだった。
 魔族は基本的に勉強があまり好きではないのである。
 そして、一日の予定がすべて終わった私たちは部屋へと戻った。
 私たちは用意された寝間着に着替え、程なくして就寝する。

 翌朝、まだ日も昇りかけの早朝に目覚める私。
 その傍らには、眠たそうに欠伸をするワタアメが転がっていた。
 彼女も私の魔力は安心するのだろうか、寝るときも布団に入ってきたのである。
 抱き心地もよく、ぬいぐるみのような感覚で接する私は完全に幼子のそれであった。

「おはようございます、お嬢様」

 眠たそうな様子は特にないアリシアが私に挨拶する。
 彼女とガウェインも「オーキンスとの約束」についてきてくれるらしく、私と同様に早起きしたのだった。
 フィジカルエリートであるメイドと騎士は、これくらいの早起きは特に苦でもないらしい。
 彼らの余裕っぷりを見て、もやしっ子幼女の私にも少し体力を分けてほしいと思う限りであった。

 早起きな執事たちに見送られ、私たちは屋敷を後にする。
 城内の廊下はまだ魔物たちも疎らであり、すれ違う者たちに逐一挨拶をしていく。
 魔王妃とはやはり憧れの地位なのか、私に声をかけられたものは皆嬉しそうにしていた。
 やっぱり、家臣とのコミュニケーションは大事だからね。
 できるだけ魔物たちとも接触していこうと思う私であった。

 厨房につくとオーキンス達は既にせわしなく働いていた。
 開いている扉をくぐる私たちに気づくと「魔王妃様、朝早くからわざわざすみません」と謝るオーキンス。
 それに対して「魔王様も起きて働いているみたいだしねえ」と笑いながら言う私。
 普段偉そうにしてるだけあって、魔王は国民のためにきちんと働いているようである。
 これに関しては純粋に感心する私であった。

 私はオーキンスから今日の献立を聞き、それにあった料理法や工夫の余地などについてコック達にレクチャーしていく。
 ガウェインも「俺は基礎体力が足りていない!」と昨日の訓練から反省したらしく、重たい材料などを運んでトレーニングに励んでいた。
 殊勝な心掛けである。
 アリシアも厨房のコック達を手伝いながら世間話をすることで、魔王軍の日常について情報収集していた。
 こちらも、なんとも優秀なメイドである。
 私なんかにはもったいないくらいだ。
 ちなみに、ワタアメは厨房にある椅子の上でスヤスヤと眠っている。


---


「なかなかうまくいかないな」

 出来上がった朝食を食べながら、私は思ったよりも料理のコツを掴めないコック達について悩んでいた。
 というのも、魔物と人間では生まれ持った「繊細さ」が違うらしいということが分かったからだ。
 つまり、感覚のきめ細かさのようなものが異なるということである。
 それゆえ、細かい味付けや火加減が難しいのだという。

「まあ、こればっかりは頑張って覚えてもらうしかないよなあ」

 その分だけ力強かったり、体力がすごかったりするので「魔物」であるからと言って「人間」よりも一概に不利であるとは言えない。
 なので、彼らにもおいおい成長してもらえればそれでいいのだ。
 いずれは「素晴らしいコック」として独り立ちしてくれることだろう。

 私は忙しそうにさっさと食堂を後にする魔王を横目に、これからの教育プランを考えるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

処理中です...